2020年の大きなニュースの1つが「民主主義国家が非民主主義国家より少数になった」です。しかし、日本ではあまり取り沙汰されず扱いも大きくありません。
筆者はこのニュースに戦慄と衝撃を覚えました。パクスなき国際社会の到来を予感させるからです。
日本人にはあまりピンとこない「非民主主義国家の逆転」「民主主義国家が少数派に転落」の構造と、先の見通しを解説します。
非民主主義国家が民主主義国家を逆転
日本ではあまり意識されませんが、世界の国家は増え続けています。
独立や民族自決などで増え続け、現在では196カ国です。このうち、民主主義を採用する国家の人口は46%で少数派になりました。
民主主義的な原則である多数決に則れば――非民主主義が採決されます。
閑話休題。
どうして民主主義国家の人口は少数派に転落したのでしょうか?
民主主義国家が減少した理由
民主主義国家が退潮し、少数派に転落した理由は主に3つ考えられます。「豊かになれなかった」「格差の拡大」「自由主義のパラドックス」です。
民主化しても豊かになれなかった
政治体制を変えるのは崇高な理念があるからでも、理想を信じるからでもありません。明日の生活がより豊かになると信じたいからです。
民主主義を採用すると豊かになると信じられました。資本主義は豊かさの象徴です。その資本主義を導入するためには自由な市場が必要で、自由を保障するためには民主主義が必要だとされました。
ところが、民主化しても多くの国は豊かになれませんでした。考えてみれば当たり前です。民主化して採用したのは新自由主義的な資本主義でした。
新自由主義がむしろ世界経済に低成長をもたらしたことは、さまざまな研究者のデータや論文から明らかです。
民主主義を採用し、新自由主義を導入しても豊かにらなかった。したがって、民主主義を捨て去るというわけです。
民主主義を捨て去っても新自由主義が残り、豊かになれないかもって? 強権的な政治なら新自由主義を追い出すことも可能です。
格差の拡大
上述したように多くの国は、民主主義+新自由主義を導入しました。必然的な帰結として格差も拡大します。富める者がますます富み、持たざるものは持たざるままです。
民主主義は国民すべてが平等という概念で結ばれます。しかし、現実にはむしろ格差が広がり平等は失われました。
非民主主義で「平等でなかったとき」より、なお悪い状況が現出したとすら言えます。
平等ではないと諦めているときより、平等のはずなのに格差がある方がより人間は不満を抱きます。
自由主義のパラドックス
自由主義のパラドックスとは「自由主義でない場合は最適解が出せるのに、自由主義を導入すると最適解にたどり着けない」というパラドックスです。
詳しくは「この世界が「不自由」であるたった一つの理由 | いま世界の哲学者が考えていること | ダイヤモンド・オンライン」を参照してください。
自由主義のパラドックスは1つの事実を示唆しています。
民主主義は手続き的な正当性や公正さを担保し、結果の最適化ができない政治形態であるということです。
公正な手続きによっていつでも結果を間違えるなら――本当に民主主義はいいものなのか? という疑問が浮かびます。
民主主義は「自分たちで選択できる」としつつ、そのメニューには「最適な選択肢以外」しか乗っていないのかもしれません。
アメリカの民主主義はロシアに批判された
民主主義が少数派になった翌年、アメリカの民主主義がロシアによって批判されました。
「ロシア、米民主主義を批判 「もう他国に押し付けるな」:時事ドットコム」によれば、議会乱入などアメリカの民主主義の混乱にロシアは「もはやアメリカは他国に民主主義の規範を押し付けられない」と批判。
全くその通り。筆者も全面的に同意します。
アメリカのトランプによる混乱は、民主主義の混乱そのものです。民主主義という政治体制は、命脈が尽きようとしているのかもしれません。
少なくとも――これから民主主義に転向する国家より、非民主主義に転向する国家の方が多いに違いないのです。
パクス・アメリカーナの本格的な終焉
ロシアが指摘したようにアメリカは、他国に民主主義を押し付けてきました。戦争をしては民主主義を押し売りし、我こそは平和の使者という顔をしていました。
なぜそれができたかって? 世界一の軍事力と政治力を持っていたからです。
しかし、民主主義国家の人口が少数派になり逆転されたこの事態は、アメリカがもはや他国に民主主義を押し付けるパワーがないことを示します。
パワーとは軍事力のみならず規範としての力、道徳の力、政治力、経済力などのすべてを含みます。
民主主義国家が少数派になり、パクス・アメリカーナは本格的に終焉を迎えました。
なお、パクスとはローマ神話における秩序の女神「Pax」が語源です。パクス・アメリカーナは「アメリカによる秩序」という意味。
パクスなき国際社会が訪れる
パクス・アメリカーナが終わり、他の国がパクスを司ることも不可能です。パクス・チャイナだって当然、世界的には訪れません。
とすれば、パクスなき国際社会が到来します。
さらに悪いことにコロナ禍が重なっています。コロナ禍は世界中の富を収縮させ、先進国を含む多くの国家の国民を貧困化させています。
国民は政府に対して不満を持ち、政府はその不満をそらすために対外膨張政策や近隣窮乏化政策を採らないとも限りません。
まとめ
日本で民主主義国家が少数になったニュースは、あまり大きく扱われませんでした。しかし、考察していくと、暴落とも言えるアメリカの凋落と世界的な動乱の兆しが見えます。
なお、パクス・チャイナは世界的には不可能ですが東アジアだけなら可能でしょう。民主主義国家が少数になった今、非民主主義国家代表の中国が幅をきかせることは不思議でも何でもありません。
ことここに至って「日本はどうする?」「どうなる! 日本?」などの間抜けな問いをするつもりはありません。どうなるもクソも、どうにもならないに決まっています。
今後、非民主主義を選択する国家はますます増えるでしょう。民主主義国家はさらに少数派になるはずです。
中にはファシズムを採用する国家だってあるかもしれません。
どうにもならなくても国際社会で「どう振る舞うのか?」くらいは、日本も考えておいた方がいいと思います。
新自由主義的政策の失敗で民主主義を否定するのはいかがかと思いますよ。
そもそもいわゆる共産圏と親和性が高いのは専制君主制度を取らざるを得ない国(中露と陸路で近くに繋がる周辺の東南アジア、北欧、東欧)であり、それら専制国家から地理的に遠く、また海洋の恩恵を受けやすい西欧と日本で発展した封建制の国家運営とはまるで違います。
封建制に親和性が高いのはやはり自由資本形成主義です。封建制度にはかなりの階層があり、領民の領主への隷属が発生したりしますが、少なくとも領主は君主から自由です。君主がすべてを統べる専制的な国家運営にはかなり遠いものがあります。
実は新自由主義は最終的に市場独占的企業による絶対的な帝制に繋がるマルクス資本論と「本質的に」かなり親和性が高いです。
封建制をベースにした日米欧とは本質的には合わないはずなのですが、自由を標榜する市場自体、「自由は尊い」のような信仰的思想で最終的に独占的になることが覆い隠されて、「表層的に」近しいように偽装されるためそれを採用しやすい性質があります。
……? 本稿で民主主義は否定してませんよ。
あと私が頭が悪いせいか、何をおっしゃりたいのかサッパリわかりません。かみ砕いて書いていただけるとありがたいですよっと。
>民主主義は国民すべてが平等という概念で結ばれます。しかし、現実にはむしろ格差が広がり平等は失われました。
>非民主主義で「平等でなかったとき」より、なお悪い状況が現出したとすら言えます。
>平等ではないと諦めているときより、平等のはずなのに格差がある方がより人間は不満を抱きます。
最近、どうして北朝鮮の国体は住民の反乱等で崩壊しないのかなあと、常々疑問に思っていたのですが、とある偉人の言葉を見て、もしかしてこういう理由かなあっていうやつが少し出てきました。
《不正義はあっても秩序ある国家と、正義はあっても無秩序な国家のどちらかを選べと言われたら、わたしは前者を選ぶであろう。》
『マキャヴェッリ』
北朝鮮は、不正義だらけでも、体制安定のために生活の隅々まで統治(支配)されていることから、当地の国民は反乱よりもガチガチの統治を、それをある意味では安定したものの一種として受けとめているのかしれません。(んなこと書いた次の瞬間にクーデターとかあるかもしれませんがw)
東欧やロシアなんかでは、共産主義時代は昔はみんな貧乏だったけど、いちおうみんな職につけたという意味では平等社会だったのかもしれません。しかし、今では一部の裕福な人間が幅を利かせて、さらには貧乏人がへるかと思われたが逆に失業率が高くなったのです。
つまり、民主主義(+新自由主義)はある意味では共産主義時代よりも不平等を拡大させた(貧乏人がちょっと少なくなり、そのかわりに失業者が増えさらには一部の大金持ちが増えた)わけです。
現地の人も、そんな不平等社会じゃ不満を感じるのかもしれません。
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>「ロシア、米民主主義を批判 「もう他国に押し付けるな」:時事ドットコム」
そら、自分の国(ロシア)は選挙を実施してると言っても政敵は逮捕したり暗殺したり、もしくは穏便な方でも被選挙権をはく奪したりとかで、実質的にはプーチンによる強権的独裁国家ですもんね。
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>国民は政府に対して不満を持ち、政府はその不満をそらすために対外膨張政策や近隣窮乏化政策を採らないとも限りません。
このへんはホントに近場で言えば韓国だなって思います。
あの国も、だいぶん全体主義的な国家になってきたなと思います。
将来の日本の訪れるかもしれない未来の選択肢の一つとしては、十二分にありそうな国家です。
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>「どうなる! 日本?」
経世済民的政策をせずに、不健全にこのまま進めば・・、韓国やフィリピンのような、貧乏で、尚且つ強権的な国家になるかもしれませんね・・。
それをするためには、自民党総裁任期を4年くらいにして、あとは、今の韓国のように検察と裁判所を抑えることですね。
こうすれば、内閣と国会と司法という3権を自民党が一手に手にし、幕藩体制のような自民党による集団指導体制を作れますね。
そうすれば、歴史上でも数多存在した、よくある強権的でそれでいて貧乏な国家が生まれ、軍事的にはかなり中国に圧迫されるでしょうけど、集団指導体制的独裁国家として、国民を抑え込みながら中国に頭を下げ、日本の独立を認めさせるような、そんな程度の国家に成り下がるかもしれませんね・・・・。
マキャベリはやはり冷徹かつ的確ですね。君主論、また読み直したくなりました。
>経世済民的政策をせずに、不健全にこのまま進めば・・、韓国やフィリピンのような、貧乏で、尚且つ強権的な国家になるかもしれませんね・・。
どうなるんでしょうね、本当。
あまりよろしくない結果になりそうなことだけは確かです。