悪い円安とは?定義から影響や対策、原因についてわかりやすく解説

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 最近、有識者やエコノミスト、メディアがしきりに悪い円安論を吹聴しています。

 いわく、最近の円安は歴史的であり、2022年にはアメリカの利上げがあるのでさらに円安になる可能性があるとのこと。
 しかも、世界的なインフレの昂進によって、日本でもコストプッシュインフレが引き起こされるかもしれないそうです。

 本当に悪い円安は起きているのでしょうか?
 結論から言えば、現在の円安水準は2018年と変わりません。
 悪い円安論は集団ヒステリーに似ています。

 なぜ、悪い円安論が集団ヒステリーなのかわかりやすく解説します。

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悪い円安(通貨安)の定義とは?

 マスメディアは「悪い円安」と騒いでいます。
 しかし、悪い円安の定義はどのメディアもはっきりとしません。

 悪い円安議論で指摘される点は以下です。

  1. 円安になれば輸入物が高くなり、実質所得が低下する
  2. 昔と異なり、今は円安でも輸出が伸びない
  3. 円安によってゾンビ輸出企業が残り、日本の産業全体の生産性が低下

 このことから整理すると、悪い円安論とは「円安が日本に悪影響を与えるとする論」の総称であり、特に「悪い円安」と「よい円安」があるわけではなさそうです。
 たとえば、円安によってコストプッシュインフレが起きるから悪いという論調も見られます。

 しかし、本来の意味の「悪い通貨安」とは、信用不安に伴うハイパーインフレや過剰なインフレに伴う通貨安との指摘があります。
 こういった本来の意味とは異なる論調で、現在の悪い円安論は囁かれています。

現在の悪い円安と呼ばれている現象はドル高

 現在は本当に円安なのでしょうか?

 確かにドル円では1ドル114円と円安傾向です。
 ですが、2017年の方がもっと円安です。
 同様に、ユーロ円やポンド円では必ずしも円安とは言えません。

 上記は同じ時期のユーロ円ですが、2018年の水準より円高です。
 ポンド円についても同様に、2018年水準と同じくらいです。

 有り体に言えば、話題にするほど円安が進んでいるわけではありません。

 ただし、アメリカの利上げに伴い、来年は円安が進むのではないかとの観測もあります。
 現時点では、注視する必要がある程度の話でしょう。

 では、なぜこんなにも悪い円安論が流行っているのか?
 世界的なコロナ禍からの経済再開、需要増加、サプライチェーンの寸断が理由だと思われます。
 世界的な需要増加や原油価格の高騰に伴い、輸入物によるコストプッシュインフレが進行しています。

 デフレに慣れ親しんだ日本では、インフレ恐怖症が見られます。
 コストプッシュインフレは悪いインフレですが、それを緩和できない円安に対し批判が集まり、悪い円安論へ展開しているのでしょう。

 客観的に見れば、円安は2017年、2018年水準であり行き過ぎていません。
 悪い円安論は一種の集団ヒステリーと解釈可能です。

悪い円安(?)への対策は必要か?

 円安への対策は必要でしょうか?
 確かに円高であれば、世界的な需要増加に伴う原油価格、輸入物の高騰が緩和できるでしょう。
 国内の物価が上がらず、実質所得も下がらないはずです。

 しかし、円安を解消して円高にするためには、日本も利上げする必要があります。

 為替の簡単なモデルとして、長期金利の引き上げが為替に影響するとされています。
 長期金利を引き上げると、円を買う資金が流れ込み円高になります。
 逆にドルの長期金利が上がり、円の長期金利が低いままだと資金はドルに流れて円安になります。

 ですが、長期金利の引き上げは、日本国内に需要縮小をもたらします。

 金利が低ければ、資金需要は最大化します。
 逆に金利が高ければ、資金需要は最小化します。

 金利を上げると、資金需要は減少します。
 つまり、資金需要が小さくなり、国内需要を押し下げる働きがあります。

 金利引き上げは金融引き締めであり、デフレ圧力を発生させます。

 アメリカが金利を引き上げるのはインフレだからです。
 ところが、デフレである日本までもが金利を引き上げれば、デフレ圧力が発生してさらなるデフレになります。

 円高のためにデフレを黙認するなどあり得ません。

円安は本当に悪いことか

 円安は本当に悪いことでしょうか?

 エコノミストによれば、円安の輸出増の効果はあまりないそうです。
 理由としては、日本が対外金融資産で稼ぐ構造になっており、もはや輸出は主役ではないからとのことです。

 それ以外にも、世界的な長期停滞による需要縮小なども影響しているのでしょう。

 しかし、もともと日本の輸出依存度は2割以下です。
 高度成長期ですら15%ほどでした。

 一方、イエール大学の浜田宏一によれば、円安が国内雇用を生み出す効果があるそうです。
 円安だと国内投資が進むという議論もあります。

 このように、円安のよい影響、悪い影響は議論百出でまとまりません。

 円安がよいか悪いかより、日本経済の根元を立て直すことの方が重要でしょう。

まとめ

 悪い円安論が流行していますが、客観的にチャートを見れば2018年水準と変わりません。
 変わったことは、世界的に原油価格の高騰などでコストプッシュインフレが昂進していることです。

 したがって、悪い円安論はインフレ懸念に対し、悪者探しをしている状態です。
 一種の集団ヒステリーが悪い円安論です。

 アメリカのバイデン大統領は、インフレがピークに達した可能性について指摘しています。
参照 米インフレ率、ピークに達した可能性=バイデン大統領 | ロイター

 2022年後半には、悪い円安論は跡形もなく消えているかもしれません。

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