『このまま行けば日本の財政破綻は避けられない~「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い』(小幡績/慶應義塾大学大学院准教授)
「今回は「財政破綻は日本では起きない」という主張は、完全に誤りであることを説明しよう。10月16日配信のコラム「『このままでは国家財政破綻』論は1%だけ間違いだ」では、「日銀が国債を買えば大丈夫だ」「国全体のバランスシートは問題ない」」「MMT(現代貨幣理論)は有効だ」「インフレが起きてないから大丈夫」などと完全に誤った主張をする、エコノミスト、有識者たち、いや有害な言説を撒き散らす人々を論破することが、唯一の日本を救う道だと書いた。今回は、その仕事に取りかかりたい。(略)」
上記コラムを書いたのは増税緊縮派の論客としておなじみの小幡氏、そしてコラムのタイトルを読めば、内容を精査せずともおおよそ何が書かれているのか、容易に察しがつきますよね。
無論、小幡氏の主張は皆様ご想像のとおりですが、一応、彼の主張をざっと列記しておきましょう。
1.【「国全体では貯蓄があるから大丈夫」は大間違い】
・国全体でお金があっても政府は倒産する。
・借金を積み上げ、一度も借金を減らしたことのない政府、そして、毎年の赤字額は年々増えていく。毎年新しく借り入れる額が増えていく政府。貸しても返ってこない、と考えるのが普通で、銀行も投資家も誰も政府にお金を貸さなくなる
2.【日銀が国債を買い続けることは難しい】
・「自国通貨建ての国は、理論的に絶対財政破綻しない」という議論は机上の理屈であり、現実には実現不可能なシナリオだ。
・財政破綻回避のために日銀が買う必要があるのは既存の国債ではなく新発債、つまり、日本政府が借金をするために新たに発行する国債だ。そして、これを日本銀行が直接買うこと、直接引き受けは、法律で禁止されている。
・これを回避するためには、現行の量的緩和政策(日銀による市場からの国債買取)か、日銀による直受けしかないが、後者には法改正が必要だ。
3.【直接引き受けの話が出れば「日本は秒殺」される】
・「中央銀行に国債を直接引き受けさせる」という法律を成立させれば、いや国会に提出されたら、いや、それを政府が自ら検討している、と報じられた時点で、政府財政よりも先に日本が破綻するからである。
・日銀、国債直接引き受けへ、という報道が出た瞬間、世界中のトレーダーが日本売りを仕掛け、世界中の投資家もそれに追随して投げ売りをするからだ。
・そして、円が大暴落し、その結果、円建ての国債も投げ売りされ、円建ての日本株も投げ売られ、為替主導の、円安(1ドル=200円を突破)、債券安、株安のトリプル安になるだろう。
4.【日本政府の破綻は突然起こる】
・借金の額が大きすぎると、「こいつ返せるのか、返す気あるのか」という疑念を持たれ、新たに貸してもらえなくなる。
・日本がこれまで破綻しなかったのは、政府に金を貸してくれる人がいたからで、いまやそれが日銀しかいなくなりつつある。
まぁ、いつもどおりの小幡節炸裂!というか、これまで増税緊縮脳な論者から何度も聞かされてきた“寝言や妄想”の類いでしかありませんね。
彼の寝言で、これまでと若干違う点があるかと言えば、
「日本銀行が国債を引き受け続けるとインフレになるからではない。その場合は、インフレまで時間稼ぎができるが、インフレになる前に、即時に財政破綻してしまうから」
というセリフの部分でしょうか。
これまで彼は、積極財政策や日銀による過度な国債引き受けをやると、即ハイパーインフレになる!と叫んでいましたが、今回はこうした寝言を自己否定し、「すぐにインフレになるわけじゃないけど、日銀による直受け容認の動きが出た途端、マーケットによる日本売りが殺到して日本は即詰みになる」と、やや論調を変化させています。
要は、(いつまで経っても僅かな兆候すら起きない)ハイパーインフレ論をコソコソ引っ込めて、新たに“マーケットの日本売りによる秒殺説”を持ち出してきたというわけです。
しかし、ハイパーインフレにしろ、日本売りにしろ、具現化するのは増税緊縮派の脳内というファンタジーの世界だけで、現実世界では起き得ません。
それどころか、超積極財政により小幡氏が白目を剥てひっくり返るほど巨額の財出を実行し、国民所得を倍増させ、老朽化したインフラ設備を更新し、防衛費を倍増させ、家計や企業の社保負担を全廃し、科学技術費に数十兆円をぶち込み、学生を奨学金という借金漬けから解放してやれば、国内経済は空前の需要過熱と設備・情報・流通投資の爆増と人材の引っ張り合いが起きて経済は活況を呈するでしょうから、利に敏いマーケットの連中は日本売りどころか、こぞって日本買いに奔走し、海外からの投資も間違いなく増えるでしょうし、年々向上する生産性が需要とのバランサーの役目を果たすはずですから、大したインフレにもならないでしょう。
小幡氏は、銀行や投資家を始め、日本にカネを貸す人(=国債を買ってくれる人)がいなくなる、もしくは、いなくなりつつある、なんてアホなことを言っていますが、いまや利回りがたったの0.7%でしかない30年物国債ですら、その競争倍率は常時3倍程度をキープする人気ぶりですよ?
財政破綻必然論を叫ぶ彼らからすれば、日銀が500兆円(48.6%/2021年6月末)もの国債を保有する現状は“異常事態”であるはずで、マーケットの誰もが国債買取の持続性や国債の償還能力に強い疑義を抱き、国債に手を出す者など誰もいなくなって然るべきレベルだと思いますが、現実はまったくの真逆で、マーケットの連中は今日も粛々と市場の国債漁りに精を出しているではありませんか!
また彼は、「日銀の国債直受けを政府が検討していると報じられた途端、世界中のトレーダーが一斉に日本売りに走り、日本は秒殺される」と明言していますが、そんなことは起き得ませんし、多少の混乱はあれども、2‐3日もすれば速攻で日本買いに反転すると思いますよ。
なにせ、積極財政により国内需要は活況を呈し、それを狙う設備投資や不動産投資が爆増するのは明白なんですから…
マーケットは単純かつ正直なもので、何よりも先ず“カネが動く場所に反応する”ものです。
彼らにとって財源の出自や清濁など考慮の範囲外で、その興味は「投資したカネが増えるかどうか」にしかありません。
そもそも、現行の量的緩和政策だって、マーケットでは“事実上の直受け扱い”されていますから、いまさら日銀法改正のニュースを聞いたところで腰を抜かすようなトレーダーは一人もいないと思いますよ。
それどころか、「政府もいよいよ平成・令和不況脱却に本腰を入れ始めたか…」と期待値を上げ、ライバルに後れを取ってはならぬと買いのタイミングを計ることになるでしょう。
私としては、くだらぬ財源問題に大きな風穴を開け、これまでの“財源の税収中心主義”からの脱却を図るためにも、日銀法改正による国債の直受け解禁をぜひ果たしてもらいたいと願いますが、それと並行して、「財源創出における政府紙幣の活用」をもっと大々的に検討して欲しいと思います。
政府紙幣と国債は、歳入の二本柱を為す国家財政の巨柱ですが、これまでの国債に関する国民の幼稚な知識や慣習もあり、「国債=借金=返済への懸念=国民の負担=将来の増税のタネ」という負の印象を拭い切れず、小幡氏のような如何わしい扇動屋の大嘘に乗せられる国民が後を絶たないのも事実です。
こうした借金恐怖症の悪癖を少しでも緩和できる財源として、誰の負債にもならない貨幣の発行をもっと大胆かつ積極的に活用すべきフェーズに入っていると私は考えています。
小幡がこれだけ見事に論破されてゐるのに財政破綻を頑として主張し続ける理由は何か、多分、財務省から財政破綻論拡散の委託を受けてゐるのでせう。つまり、主義主張ではなく「商売」としてやつてゐるのだと思ひます。
ここまでくると、もはや宗教ですよね。
「反成長教」とでも呼ぶべきでしょうか。