雇用の流動化、株主企業と労働者、不況との関係性について

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雇用の流動化とは、労働者が一つの職場だけでなく、就職・退職を繰り返して複数の職場で働くような社会にしていくことです。
 そして、そのような社会を雇用の流動性が高いと言います。
 雇用の流動性が高い社会では、労働者側にとっての安定雇用という状況は望めません。
就職退職を繰り返さねばならないので、一つの職場で働き始めても常に退職の可能性があるからです。
 しかし、雇用の流動性という問題には二つの全く真逆ともいえる視点が存在します。

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雇用の流動性を巡る二つの視点

マクロな視点、つまり企業や政府の視点に立てば、退職してもすぐに次の職が見つかる状況は安定雇用と言うことになりますが、
 逆にミクロな視点、つまり労働者側、庶民の視点に立てば、就職しても常に退職の可能性があるような状況を安定雇用とは言えません。
 この視点の相違というのは、極めて大きな隔たりになっているはずですが、マスコミや政治家の発言では基本的に前者、つまり失業と転職を繰り返す労働者にとっては雇用の不安定な状況のことを安定雇用と言うことが多いのです。
 彼らは、失業時にすぐ次の就職先が見つかるというメリットを強調し、職に就いたとしてもその職を離れなければならなくなる可能性については全く言及することはありません。
 この雇用の流動化、流動性という問題を考える場合、この視点の所在(企業側か労働者側か)、状況による相違(失業中か就職中か)によって、感じるメリット・デメリットに大きく隔たりがあるということは、労働者、あるいは雇用問題を真剣に考える研究者や政治家は常に認識しておかなければなりません。
 そして経済が不況な状態では、雇用の流動性は高くなります。

コストカットと雇用の流動化

不況下では、雇用の流動性、すなわち失業離職・転職再就職が増加します。
これは、企業がコストを抑制するために、人員整理を行うのが当然という風潮になり、従業員に退職を勧めるようになるからです。
 逆に言えば、経済不況を長期間持続させることができれば雇用の流動性の高い社会構造を構築することが可能ということです。
 この状況は、労働者にとっては不幸なことです。
 失業が増えて所得を獲得する手段が喪われ、低賃金雇用が増えて仕事についていたとしても所得が少ないワーキングプア増加の温床となるからです。
 まるで、どっかの日本みたいな話ですね。

不況期の雇用動態は流動化する

経済の自然の流れとして、

〇不況(だと)
→売上低迷(するので)
→コスト抑制(目的で企業が人員整理をするようになり)
→雇用の流動化(が進む)

 ということになります。
 
つまり論理的に考えると、雇用の流動化を促すメリットは、

1.(労働者視点で)労働者が不況という環境に対応するため
2.(企業・雇用側視点で)企業がコストを抑制するため

 という二つのパターンが考えられます。

 要するに、企業側・雇用側が雇用の流動性を促すような発言をする場合、コスト抑制というメリットのために言っている可能性が極めて高いということです。

 企業、特に大企業にとって、不況というのは(性質にもよりますが)多少の売上低迷によってダメージを負いますが、潰れるとかそういった致命的なダメージになるとは限りません。
 株主の飼い犬に成り果てた企業経営者、彼らの発言を真に受けた、あるいは逆らえない政治家らは、まるで労働者側のメリットでもあるかのように雇用の流動化を促します。
 しかし、そもそも雇用の流動化における労働者側のメリットを考える場合、労働者側にとっての安定雇用が実現されている社会においては、不況という逆境に対応するというものでしかなく、不況でなければそもそも必要ありません。
 当然、好況でも会社の倒産はありますし、失業することもあるでしょうが、次の職場で退職の心配もなく働けるのであればやはり雇用の流動化は必要ないのです。
 しかし雇用側、株主側にとって、雇用の流動化は常に大きなメリットがあります。
 コストカットして企業利益を増やし、配当を増やすことができるからです。
 「失業したときも、雇用の流動性が高い社会なら安心!」とか、さも労働者側にとって都合が良いような言い方をしてますが、そもそも失業が常態化するような社会自体が間違っている
のです。
労働者国民はこの認識を持ち、政治を動かさなければ、今後も未来永劫、株主企業に食い物にされ続けることでしょう。

雇用の流動化とパソナ太郎

「パソナ太郎」失業者向け履歴書見本が物議 大阪市「適切でない部分はあった」、内容見直しへ J-CASTニュース

かつて大阪市の失業者向け履歴書見本として有名になったパソナ太郎さん。

・最初に勤めた企業を13年で転職
・ 転職先の企業に11年勤めるも業績不振で倒産、この時42歳。
・以後派遣や短期バイトで食い繋ぐ
・現在齢48歳で長期安定雇用目指して就職活動中


 という彼ですが、少なくとも流動性の高い雇用形態を体験してきた彼が望んでいる社会は、失業・転職が常態化する雇用が流動化した社会などではなく、長期に安定した雇用が望める社会だ、ということを、私たちは忘れてはならないでしょう。

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