積極財政(財政出動/政府支出増)で、働く庶民は豊かになるか?

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積極財政(財政出動/政府支出増)で国民は本当に豊かになるのか?
一般国民、働く庶民の賃金所得は増えるのか? 今回はこの疑問について考えてみたいと思います。

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企業は人件費と設備投資をカットして株主への配当を増やした

積極財政(財政出動/政府支出増)で国民は本当に豊かになるのか?
一般国民、働く庶民の賃金所得は増えるのか? そういう疑問が出されることがあります。

これまで、企業は人件費と設備投資をカットして株主への配当を増やしてきました

第二次安倍政権下、70か月超と言われる景気拡大期にあっても、その果実は配当金や内部留保に回っただけ。株主優先主義で、そういう構造ができ上がっている。そのため、政府支出増で民間企業の仕事が増えても、庶民の賃金所得は増えない、国民は豊かにならないのではないか。そういう疑問です。

資本金十億円以上の企業(金融・保険除く)の売上高・配当金等(1997年=1)

経済成長/GDP増は雀の涙

ただし、ここで押さえておくべきは、「景気拡大」と言われている時期であっても、経済成長/GDP増は雀の涙ということです。

平成25年(2013)⇒令和元年(2019)で日本の名目GDPは年平均1%の低い成長率。ちなみに、米国はその間、年平均4.6%成長しています。

各国名目GDP推移_GLOBAL NOTE

GDPが増えていないということは、国内での生産、所得、支出(需要)が増えていないということ。

1世帯当たり年間の家計消費支出額で見ると、
平成25年(2013)\301,8910⇒令和元年(2019)\2,996,452 と増えるどころか、1%減。

おカネの巡りが悪いわけで、何とも景気の悪い話です。
羽振りの良かった業界もあったのでしょうが、それはほんの一部。
日本全体としては「幻の景気」だったわけです。さらに現在はコロナ禍による不況が続いています。

このような状況ですから当然、企業の売上は増えません。
企業は設備投資を抑え、人件費を切り下げる一方、海外事業投資やM&Aを行う。
それによって経常利益を増やし、株主への配当金を激増させてきたわけです。
コーポレートガバナンス改革等を背景に、企業は株主還元を積極化しています。

積極財政(財政出動/政府支出増)するとどうなるか

ここで積極財政(財政出動/政府支出増)するとどうなるでしょうか。

GDP=民間支出+政府支出+輸出-輸入

ですから、単純に考えれば確実に経済成長(GDP増)します。国民の豊かさにもつながりそうです。

なお、財源は国債発行です。財務省も言うごとく、我が国に財政破綻はあり得ませんので、インフレ率急騰にのみ気をつければ十分。

公共事業・公共投資の拡大

「政府支出拡大」でまず思い浮かぶのは、公共事業・公共投資でしょう。

橋や堤防、道路といったインフラの修繕・整備の促進。
電線の地中化や公共交通機関の充実などもあります。
また、学校の設備を整えたり、児童生徒用のパソコンやタブレットなど購入配付を進めたり。
新しい技術のための研究開発投資や防衛装備・施設の増強なども挙げられます。

こういったことは、政府が国債発行によりおカネを発行して、民間企業の仕事や製品を買うものです。
すなわち、民間企業の「売上」になります。
公共事業が拡大すれば当然、民間の「売上」が増えるのです。

その効果は、政府から直接仕事を請け負った企業だけでなく、そこと取引のある関連企業に広がり、さらにモノやサービスの購入、設備投資等を経て全産業へ波及します。

売上増は企業が潤うことですが、働く庶民はどうでしょう。
給料の元となる「人件費」は増えるでしょうか。

まず、「売上-外部購入価値=付加価値」です。
※外部購入価値とは、読んで字のごとく、よそから買った材料や部品、運送サービスなどの費用のこと。

そして「人件費=付加価値×労働分配率」です。

労働分配率は平均で70%前後ですから、付加価値が増えれば当然、人件費も増えます。
とはいえ、主に大企業のことと思われますが、売上が増えるほど労働分配率が下がるという予測があります。

では公共事業・公共投資拡大は株主・経営者を潤すだけかと言えば、そうではありません。

交通インフラや教育環境、国防等の充実は、国民生活を豊かで安全なものにします。
また、投資拡大による国内経済の活性化は国力を高めます。
米中の狭間で自立していくためにも、国力の増強は必須。
天皇陛下の祈り「国民の安寧と世の平和・発展」のための基礎です。
過剰インフレに気をつけつつ、継続的に拡大すべきでしょう。

消費税ゼロ・給付金

政府支出拡大には、減税や給付という方法もあります。
こちらは直接、国民一般の懐を豊かにするものです。

例えば消費税ゼロなら、使えるおカネが単純に1割増えます。
1年に300万円使う世帯なら、30万円。月に2万5千円です。うれしいですね。

一律給付金、毎月5万円を1年継続なら年間60万円。10万円なら年間120万円! 
もっとうれしい。豊かになること絶対確実。額を調整して、恒久的に給付するとさらに良いでしょう。

いずれにしても、国民のお買い物がはかどります。
その買い物、誰から買うか? 大抵は、民間企業から買いますね。
やっぱり、民間企業の「売上」が増えることになります。
配当金や設備投資増ほどではないかもしれませんが、庶民の給料も増えるでしょう。

ちなみに、国民にカネをばらまいても貯金に回るだけ! という批判があります。
しかし、全額貯金に回るわけもなく、購入/消費が増えることは確実。
それに、老後資金2000万!とか言われてるわけですから、国民が預貯金を増やすのはいいことです。

また、一律給付金なんてやったら、インフレがひどくなる!という心配もありますが、これまた杞憂。
毎月10万円を1年間でも、物価上昇率は問題になるほどではないようです。
その一方で、雇用者報酬の伸びも物価を少々上回る程度と予測されています。

公定価格や公務員給与の引き上げ、公務員数の増

政府支出拡大には、公定価格や公務員給与の引き上げ、公務員数の増も考えられます。

例えば、介護職の方々の給料。その元となる介護報酬価格は政府が決めています。
これを引き上げ、同時に必要な金額を政府が負担するなら、介護職給与は上昇するでしょう。

また、公務員給与の基準も法律に基づき、政府が決定しています。これを引き上げるのです。
さらに災害やコロナ下で露呈した公務員の人手不足を解消すべく、正規公務員の人数も増やすようにする。

するとどうなるか? 
多くの企業で正社員給与は、公務員給与を参考にしています。
魅力ある人材を公務員に取られては困りますから、当然、企業側に「正社員給与を上げよう、待遇を良くしよう、正社員を増やそう」という機運が生まれます。

「最低賃金増・同一労働同一賃金」が注目される昨今ですが、これは企業にとって、「非正規雇用の待遇を少し良くする。正社員を減らして、非正規雇用を増やす」動機となります。

それよりも「最低賃金増・公務員や介護職の給与増」の方が働く庶民にとって有益です。
正社員になりやすく、待遇もよくなる一方、非正規雇用を望む人にも賃金増が見込まれます。

積極財政を補助する政策

ここまで、積極財政/政府支出増によって庶民を豊かにする方法を考えてみました。
ここからは、その効果をさらに強くする方法です。「株主優先主義・グローバル化・新自由主義」の転換策とも言えますが、以下のようなものが考えられます。

企業業績の四半期開示の見直し

金融商品取引法で、上場企業に義務付けられている四半期決算の開示義務。

これがために、企業は株主の「配当金を上げろ!」の圧力に常に直面させられることになっています。

おかげで株主優先主義がはびこります。庶民の給料の元、人件費が抑えられて配当金に回される一因です。

これを廃止し、企業が長期的視点で経営を考えられるようにすべきでしょう。
そうすれば、配当金よりも人件費や設備投資を重視する機運が高まります。
実際、企業経営の現場においても、四半期開示はかなりの負担のようです。
政治の決断が待たれます。

参考:企業経営の現場からみたコーポレートガバナンスの具体的な課題

法人税増税

法人税は企業の利益に課税されるものです。
売上から人件費や設備投資費、材料費といった経費等を差し引いた分が課税対象。

よって、法人税を増税する一方、人件費や設備投資を増やす、あるいは正規雇用を増やした企業は減税する。

そうするとこれまた、企業において配当金よりも、人件費や設備投資を重視する機運が高まります。

移民(外国人労働者)制限

政府支出拡大で企業にとって仕事が増える場合でも、外国人など安い働き手が多ければ、それを雇えばすんでしまいます。

社員の給料を上げて自社につなぎ留めたり、設備投資で需要増に対応しようとしなくてすむわけです。

企業にとって「仕事が増えた! でも人手不足だ!」な状態でこそ、働く庶民の待遇が良くなります。外国人労働者/移民は大幅に制限、特に単純労働者は禁止すべきです。

衆院選のテーマとなる積極財政/財政出動/政府支出増

自民党総裁選では財政出動(積極財政/政府支出増)が大きなテーマとなり、
「新自由主義の転換」「公定価格の見直し」「四半期開示の見直し」を掲げた岸田文雄氏が選ばれました。

一方で、立憲民主党、国民民主党、れいわ新選組、日本第一党も国債発行による積極財政を唱えています。

次期衆院選では、
「財政破綻はあり得ない日本で」
「どこがより良く積極財政をやり」
「株主優先主義を転換し」
「日本を力強く成長させ」
「庶民の懐を豊かにするか」競争
を大いにやってほしいところです。

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