日本の供託金は世界一高額!!
これ、本当。
イギリスの33倍、オーストラリアの60倍、インドの120倍の供託金が日本の選挙で立候補するためには必要です。
日本の供託金は小選挙区で300万円、比例代表で600万円かかります。
最初から高額に設定されていたわけではなく、徐々に高額化していきました。
世界一高い日本の供託金問題についてわかりやすく解説します。
日本に世襲議員が多いのも、供託金の高さが一因かもしれません。
わかりやすい!供託金とは何か
日本の選挙に立候補すると供託金がかかります。供託金とは法律で定められた金額を、立候補者が一時的に法務局に預ける制度です。
供託金は「当選の意思のない人」「売名行為」などを防ぐことを意図しています。
売名行為や候補者の乱立を防ぎ、有権者が選びやすい環境を整えることが供託金制度の目的です。
選挙ごとに供託金の金額は決まっており、一定の得票数を満たすことで返却されます。
たとえば、衆院選の小選挙区では供託金が300万円、没収点は有効得票数の10分の1です。
これが町議会選挙になると供託金は15万円に下がります。
比例代表をのぞけば、供託金の没収点は有効投票数の10分の1に設定されています。参院選のみ8分の1とやや高くなっています。
立て看板の設置、選挙公報、投票用紙、投票所の設置、職員への手当などにかかる費用の一部が、没収された供託金でまかなわれます。
没収された供託金は税金と同じように扱われます。
日本の供託金を海外と比較
日本は選挙で立候補すると、小選挙区で300万円、比例代表で600万円の供託金がかかります。
海外でもこのような費用がかかるのでしょうか?
じつは、日本の供託金は世界一高いと言われています。
国名/制度 | 供託金 |
日本/小選挙区 | 300万円 |
日本/比例代表 | 600万円 |
アメリカ | 無料 |
フランス | 無料 |
イタリア | 無料 |
ドイツ | 無料 |
韓国 | 150万円 |
マレーシア | 90万円 |
台湾 | 67万円 |
香港 | 32万円 |
イギリス | 9万円 |
オーストラリア(下院) | 5万円 |
インド | 2万5000円 |
日本に次いで高い韓国は日本の半分。その他の国は言わずもがな。供託金制度がなく、選挙への立候補が無料の国も珍しくありません。
選挙の供託金はイギリスが発祥です。
日本では1925年、普通選挙法制定とともに立候補届け出制が採用され、2000円の供託金が義務づけられました。
供託金の目的は売名行為での立候補防止の他、社会主義政党の国政進出を防ぐ目的もあったと言われています。
1950年に公職選挙法が制定され、供託金制度も引き継がれました。
供託金制度は何度か改正され、ますます高額化した歴史があります。
以下は、供託金の変遷です。
- 1950年 3万円
- 1952年 10万円
- 1962年 15万円
- 1969年 30万円
- 1975年 100万円
- 1982年 200万円
- 1992年 300万円
この供託金の変遷は明らかに、物価の上昇速度を追い抜いています。
日銀によれば昭和40年(1965年)の1万円の価値は、現在の4.2万円に相当するとのことです。
1962年当時の15万円は、現在の価値で4.2倍の63万円相当です。
このように供託金が高額化したことに対し、国の説明は紋切り型で「候補者の乱立を防ぐ」「売名行為を抑止する」です。
供託金は憲法44条違反では?
憲法44条では以下のように定めています。
両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。 但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。
供託金が高額なことは、財産や収入で差別していることになるのではないか? という疑義が生じます。
くわえて、憲法15条1項には以下のようにあります。
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
高額な供託金により、選定する権利が侵害されている可能性があります。
しかし、1999年に最高裁で判決が下っています。
その判決によれば、現在の供託金は国会の裁量の範囲内で憲法に違反していないとのことです。
政治家の世襲が問題になり、日本の国会では4割が世襲政治家です。
G7で世襲政治家は1割程度だそうです。
世界的に見ても、日本は特に世襲政治家が多い国柄です。
その理由の1つが、非常に高い供託金制度にあるのではないかと思います。
まとめ
供託金は選挙に立候補するときに必要な費用で、多くの場合は得票の10分の1以上を獲得することで返却してもらえます。逆に、10分の1未満なら没収されるのが供託金です。
供託金は「売名行為を抑制する」「候補者の乱立を防ぐ」という目的で作られた制度です。
しかし、日本の供託金の金額は世界一高いです。
アメリカやフランス、ドイツなどは供託金が無料で、供託金発祥の地であるイギリスですら9万円です。
一方、日本は300万円。
戦後、供託金は次第に値上がりしていきました。
1960年代は、現在の価値で60万円の供託金を支払えば立候補できたのです。
供託金の高さは世襲議員が多い一因かもしれません。
供託金が世界一高いという「事実」を日本人はもっと知るべきです。