アメリカの保守系団体、「プラウドボーイズ」。大手メディアでは、トランプ大統領支持の白人至上主義、排外主義の極右などと批判的な文脈でばかり扱われています。しかし実のところ、彼らの思想は反・人種差別の愛国保守で、西洋文明の世界席捲について謝罪を拒否するというもの。そこには、グローバリズムの弊害、リベラリズムの行き過ぎを是正し得るものがあります。
我那覇真子さんによる「プラウドボーイズ」インタビュー
アメリカの保守系団体「プラウドボーイズ」のインタビュー動画を見ました。インタビュアーは我那覇真子さんで、「プラウドボーイズ」ポートランド地区リーダー、マテオ・ダグラディさんの話を聞いています。
この「プラウドボーイズ」、日本ではあまり著名でありません。
主要メディアではトランプ大統領支持の「白人至上主義者」扱い、批判的な文脈でばかり語られるようです。Wikiでも、「女性蔑視や暴力賛美の歴史がある」「ヘイトグループ」などと散々な書かれっぷり。
さらにアンティファやブラックライブズマターと敵対関係にあると言われることから、端的に言って「ヤバい差別主義者の極右」のイメージです。
ところが上記動画を見ると、そんなイメージは霧消します。
(「ボーイズ」と言うにはちょっと年齢が……という気がしないでもないですが、「ボーイズ」には「(男だけの)仲間、連中」という意味もあるらしく。訳すなら「誇り高き野郎ども」といったところ。)
マテオ・ダグラディさんの話
マテオさんは実直で、落ち着いた中にも情熱とアメリカ人らしい自信を感じさせる人物です。彼の話の要点を挙げます。まずは彼の住むポートランド市について。
オレゴン州ポートランドで起こっていること
- アメリカ西海岸のオレゴン州ポートランドは極めてリベラルな土地柄で、”MAKE AMERICA GREAT AGAIN”(「アメリカを取り戻す」、トランプ大統領の標語)の帽子を職場でかぶるとクビになる。
- ポートランドではアンティファが破壊活動を行い、警察の弱体化を画策している。その一方で市長や議会、検事も極めてリベラルであることから、警察はアンティファを取り締まれず、プラウドボーイズ(以下PB)に厳しくする。
- 警察は、PBのデモ行進(ラリー)をアンティファの真ん前に誘導し、衝突させた。暴動事件に発展させ、PBのデモ許可を取り消す意図と考えられる。アンティファが尿入り瓶を投げてきたため、身を守るために反撃したPBメンバーが逮捕された。
大統領選挙における大手メディアの偏向報道を見るまでもなく、アメリカの左傾化はつとに問題視されているところですが……
正直、恐ろしい状況ですね。行政官庁が公権力・影響力を行使して、一方の言論・思想の自由を封じようとしている。
日本でもヘイトスピーチ規制法や条例で、正当な外国人批判までもがはばかられる空気ができていますが……アメリカの場合はそれどころではないですね。
もっとも、PBがガチの白人至上主義の極右なら、その言論や表現を封じてしかるべきと思う人もいるかもしれません。
マテオさんの主張はどうでしょうか。
マテオさんの主張/穏健な愛国保守
- PBは白人至上主義ではない。自由の国アメリカを愛している。銃の権利と共に、言論の自由を特に重視している。言論の自由が抑圧されている現状は極めて問題だ。
- 家族を持てたら十分幸せだと思っている。自分たちは毎日普通に働くブルーカラー労働者だ。アンティファであろうとも、傷つき血を流す姿は見たくない。南北戦争のような状態は望まない。
- 専業主婦は価値ある存在で、そうなりたいと望む女性も多いと考える。そういった女性は地域においても役立つ。「専業主婦に価値がない」とすることは、「カネを稼がない者には価値がない」とするのと同じだ。
穏健な愛国保守ですね、これは。
国民分断どころか、連帯を志向するものと言えますし、専業主婦の尊重には大いに共感します。
プラウドボーイズ公式サイトの主張/過去への謝罪拒否
興味が湧いたので、PBの公式サイトも確認してみました。
その主張は、
「最小限の政府、最大限の自由」
「反・ポリコレ」「反・薬物戦争」
「国境管理は厳格に」「反・人種的罪悪感」
「反・人種差別」「言論の自由と銃の権利の支持」
「起業家の称揚」「専業主婦の尊重」
「西洋的愛国主義精神の復活」で、人種や性的指向/嗜好による差別をしない。
(ここでの愛国主義は”Chauvinism”、「排他主義」とも訳される語が使われています。「反・人種差別」と矛盾する、マイナスイメージのこの言葉をなぜ使うのか、少々疑問ではありますが……)
そして、世界最高の友愛組織として次のように宣言しています。
「謝罪の時は過ぎ去った。
俺は西洋愛国主義者、今の世界を造ったことで謝罪などしない。
西洋こそ最良なのだ!」
私としては「否々、最良なのは我が天皇国日本ですよ」と言いたいところですが、それはともかく、なかなか頼もしい。
過ちや罪がなかったと主張するわけではない。
完璧ではなかったかもしれないが、最良だ。
だから謝らない。
「謝罪をするな。弱さの象徴だ」
名作映画『黄色いリボン』の中で、ジョン・ウェイン演じるブリトルス大尉は
「謝罪をするな。弱さの象徴だ」
というセリフを繰り返しますが、これと同じ心意気だと思います。
欧米人にとっては、謝罪は相手/敵に弱みを見せること、つけいるスキを与えることです。
それよりも自らの失敗/罪は胸の内で反省し、前進の糧にすべき、ということでしょう。
また、謝るのは許されたい、善良だと相手に認めてもらいたいという心からです。
キリスト教の神はすべてを見通し、許してくれるはずなのに、誰かの許しを欲しがるのは信念の足りなさ、心の弱さとも言えます。(もちろん、日本人の感覚とはだいぶ違いますが。)
「謝罪拒否」はリベラリズム・ポリコレ問題への回答
実はこの「謝罪拒否」、現代の欧米の(あるいは日本も)抱える問題への見事な回答です。
自国を「邪悪の帝国」と考えてしまい、「罪悪感のドラムの連打」で愛国心が消し去られるという問題、『アメリカ 未完のプロジェクト』(リチャード・ローティ著)や『西洋の自死』(ダグラス・マレー著)が指摘したところへの正しい反応なのです。
行き過ぎたリベラリズム、ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)を押し返すものと言えましょう。
「日本~未完のプロジェクト」
麻薬はダメ! ゼッタイ! ~西洋の道徳的麻薬と化した罪悪感――『西洋の自死』より~
人種差別や植民地支配など、欧米列強は世界において悪をなしたが、同時に科学技術の進展、自由や平等の概念の流布、医療の普及、インフラ整備など多くの善も行った。弱き者、被支配者のために尽くした者たちも多かった。
さらに言うなら、植民地支配ですら家族や子供によい生活をさせたいという動機によるところもあった。
罪ではなく、善に着目して先人に感謝する。
悪に苦しみつつも、善をなそうと尽くした国家を敬愛する。
そして、そのような国家に生きるのだから、これからも善をなせると自信と誇りを持って行動する。
それこそが健全なる愛国心(ナショナリズム)であり、グローバリズムの弊害を克服できるものでしょう。
何があっても言い続ける、主張し続けること
「過去への謝罪拒否」このような信条を持つ勢力が、不当な非難や抑圧に負けず活動を続けているというのには、大いに勇気づけられます。
もっとも、PBは「小さな政府」志向であるため、彼らだけではアメリカの分断解決、共同体強化を成し遂げるのは困難でしょう。経済や福祉を重視する者たちとの協力が必要です。彼らの支持するトランプ大統領が財政拡大で支持を広げたことを鑑み、この点を考え直してくれるといいなとも思いますが……
ともあれ、アメリカはアメリカ、日本は日本。
私たちは財政破綻論の打破、伝統や共同体の価値の称揚などによって、日本の復活・民の安寧と世の平和を目指していくべきしょう。歴代天皇の大御心に適うように。
マテオさんのインタビューにもありましたが、何があっても言い続ける、主張し続けることが大切です。
さて、今年の私の投稿は今回で最後です。投稿の場を与えていただいた「進撃の庶民」の皆様、読者の皆様に心より感謝いたします。新年も元気に、心強く進撃しましょう。
>「専業主婦に価値がない」とすることは、「カネを稼がない者には価値がない」とするのと同じだ。
この発言、興味深いですね・・。
なるほどと思っちゃいました・・。
ただ、このPBの方達は、原爆投下などは何も悪くないって言いそうですね・・・。
(良いか悪いかで言えば、非戦闘員の民間人を大量虐殺する時点で、もしアメリカが敗戦国なら十二分に戦争犯罪として裁かれるほどの案件でしょうけど・・・、しかしまあ、アメリカは戦勝国ですからねえ・・・。)
(まあ、現代としては、強力すぎる兵器として、2度と実戦では使わないようにしようという努力は限りなく必要な案件かとは思いますが・・・・。やばすぎる兵器として・・。)
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トランプのなにが悪かったって言えば、4年の任期間に、彼等の貧困問題を少しでも解決できなかった所でしょうね・・・。
彼等の《聞きたかった言葉》は、耳触り良くトランプは言いましたけど、彼等の本当に必要だったものは、言うほどトランプは彼らに与えれらなかったのではないか、と思います・・。(いやでも、コロナ不況が無ければトランプは再選していましたかね・・?どうでしょう・・?)
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1619年と1776年、1919年と1948年
https://sincereleeblog.com/2020/12/28/1619177619191948/
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ネットを見てましたら、上記の記事に、アメリカの左派のほうによる歴史修正主義の記事がありましたので、興味深いかと思いましたので、こちらも少し紹介させていただきたく存じます。m(__)m
コメントありがとうございます。
コロナ禍がなければ、トランプは再選していたでしょう。また、コロナ禍でも大手メディアの偏向報道がなければ、やはり再選していたと考えられます。(中共との疑惑などバイデンに不利な情報、雇用や景気の回復、ワクチンのための投資などトランプの実績をあまり報道しなかった)
選挙不正疑惑についても、大手メディアの姿勢には疑問を禁じ得ません。多数の証人が宣誓供述書付きで不正を訴えているのですから、「確たる証拠がない」「陰謀論」のレッテル芸に終始せず、きっちり検証した記事報道をしてもらいたいものです。
ご紹介いただいた記事、読ませていただきましたが、
もう「どうかしている!」としか言いようがないですね。
バイデン/ハリス政権が成立するとなると、この「修正主義」がさらに加速しそうでもありますし、ますます国家秩序は混乱、「頼れるものはカネだけ」「カネを稼がない者には価値がない」の世になりそう。まったく、試練の時代が続きますね。
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