朝まで生テレビで、竹中平蔵氏が財政均衡論の間違いを認めたそうです。記事を読んでとてもびっくりしました。
またMMTを認めるような発言も。
原因は「コロナ禍による各国の財政出動」と「長期金利がピクリとも動かない現実」にありました。日本の経済学者たちも現実を踏まえて、経済学の誤解を認めるべきでしょう。
経済学は今まで何を誤解していたのか、簡単に解説していきます。
竹中平蔵氏のMMTへの発言
11月27日の朝まで生テレビに出演していた竹中平蔵氏が、MMTを認める発言をしていたようです。
「財政均衡論は間違いだったことが判った」
全世界が認めつつある「MMT(現代貨幣理論)」より竹中平蔵氏発言を抜粋
「戦争でも起こらない限り供給能力は維持されているのでインフレにはならない」
「現状なら100兆円の赤字国債を発行しても問題は起こらない」
衝撃的な記事だったので、思わずTwitterでつぶやきました。
竹中平蔵氏はこれまでMMTへどのような態度だったか? 検索しても発言が出てきませんでした。
デフレに対しては「デフレは貨幣現象」「マネーの不足」と表現していました。
MMTでもデフレはマネー不足とも言います。しかし経済学者たちとMMTの考えには隔たりがあります。
一体どう違うのか? 本稿で明らかにします。
MMTとはそもそも何か
MMTとは「貨幣=負債」と定義する貨幣論で、現代貨幣理論とも呼ばれます。主流派経済学は「貨幣=負債」とは定義しませんので、この点がもっとも異なる部分です。
例えばMMTでは、主流派経済学が想定するクラウディングアウトは起こりません。
クラウディングアウトとは「100の貨幣のうち、90を借りて国債発行に使うと10しか残らない。よって民間の資金需要が逼迫して長期金利が上昇する」という仮説上の現象です。
クラウディングアウトはお金のプールからお金を抜くと、残りのお金が少なくなるという発想に基づいています。
しかしMMTでは「貨幣=負債」であり、借金すると貨幣が増えます。したがって「借りたから減って、貴重になって長期金利が上昇する」といった現象は起こりえません。
この点が主流派経済学とMMTの一番の違いです。
竹中発言から経済学者たちの誤解を明示する
竹中平蔵氏が認めたように「国債を発行してもインフレにならない=長期金利が上がらない」ことが現実です。
コロナ禍で多くの国が国債を増加させていますが、金利は低いままピクリとも動きません。
経済学者たちは何を誤解したのでしょうか。
彼らが現実を捉え損なった理由は3つあります。
理由①セイの法則
セイの法則とは「実体経済の供給と需要は常に一致する」という理論です。要するに「供給したらいくらでも需要される」というわけ。
もちろんセイの法則は現実ではあり得ません。需要不足によってデフレが起きているのですから。
しかし経済学者たちにとって理論上、需要不足など起こるはずがありません。したがってデフレは、他のことがボトルネックになって起きていると考えられました。
すなわち「貨幣現象」であり「マネー不足」です。
経済学者たちが言うマネー不足とは、マネタリーベースの不足です。不足しているマネタリーベースを増やせばインフレになると、経済学者たちは考えました。
それが異次元の金融緩和です。
実際にはインフレにならず、壮大な社会実験は失敗に終わりました。
MMTではマネー不足=需要不足と捉えます。同じ表現である「デフレはマネー不足」の内容は、MMTと経済学者たちでは大きく違います。
理由②物々交換幻想
ダドリー・ディラードは主流派経済学を「物々交換幻想」と激しく批判しました。主流派経済学の主要理論である一般均衡理論には、貨幣の介在する余地がないからです。
どういうことか? 主流派経済学は物々交換経済を前提条件とした理論なのです。
主流派経済学にとって貨幣とは「交換手段」にしか過ぎません。よって貨幣とは何か? など考えもしなかったのかもしれません。
理由③貨幣をよく理解していなかった
主流派経済学は貨幣をよく理解していません。貨幣とは何かを知らずに経済学を論じています。
大げさではありません。
その端的な証拠が信用創造理論です。どのように貨幣が発生するのかと言えば、主流派経済学は又貸しから発生すると考えます。
つまり又貸しの最初の金額であるマネタリーベースを増やせば、貨幣量全体が増えてインフレになるはずでした。
しかし現実はそうならず、今では又貸し信用創造理論は間違いだったと判明しています。世界最初の中央銀行であるイングランド銀行が、又貸し信用創造理論を否定しているのです。
主流派経済学は「どうやって貨幣が発生するのか」という経済の基礎すら理解していませんでした。
経済学のパラダイムシフトの可能性
竹中平蔵氏のように間違いを認めることは、現在の経済学に必要でしょう。コロナ禍における現実と経済学の理論に深刻な齟齬が生じているからです。
経済学は間違いを認めて、パラダイムシフトできるのでしょうか?
センメルヴェイス反射
センメルヴェイス反射とは「通説や定説と異なる新事実を受け入れられない様」を言います。
昔、センメルヴェイスという医者が産褥熱は感染症だと発見しました。センメルヴェイスはカルキでの消毒を提唱しましたが、多くの産科医は受け入れませんでした。
産褥熱で妊婦たちが命を失った原因が、自分たちにあると認められなかったのです。
同様に経済学も財政均衡論を唱えてきました。緊縮財政により多くの人が命を失った原因が、自分たちの学説にあると認めるのは困難を極めます。
経路依存性
経路依存性とは「過去の決定によって合理的な選択が制約・制限されること」です。例えばTwitterで「Aが正しい」と発言してしまうと、そのスタンスを崩せなくなることと一緒です。
途中で「あれ? 本当はBの方が正しいのでは?」と思っても、スタンスの変更をしにくいですよね。
これと同じ現象が経済学に起きるでしょう。
ゾンビ経済学
新自由主義やそれに伴う経済学はしばしば「ゾンビ経済学」と揶揄されます。理論的に死んでいるはずなのに、動き続けるからです。
物々交換経済学が現代で動き続けるとは、なんて不思議な現象でしょう!
コロナ禍で竹中平蔵氏ですら、財政均衡論は間違いだったと認めざるを得ませんでした。MMTと現実は、主流派経済学にとどめを刺しました。
しかしとどめを刺したからと、動かなくなるとは限らないのがゾンビ。本当に財政均衡論が葬り去られるかどうかは、まだわかりません。
イデオロギーとしての経済学
主流派経済学は現実の観察に基づいておらず、根底には新自由主義のイデオロギーが流れています。
イデオロギーとしての経済学にこだわり続けるのか、それとも実践的な学問として生まれ変わるのか? という選択に経済学者たちは頭を悩ませることでしょう。
まとめ
竹中平蔵氏にいい印象はありませんが、間違いを認めたことはいいことです。今年、とても印象に残るニュースの一つになりました。
経済学者たちが間違いを認めるかどうか、パラダイムシフトが起こるかどうかはまだわかりません。
個人的にはパラダイムシフトが起こり、日本が積極財政に舵を切れることを祈念しています。
>竹中平蔵氏にいい印象はありませんが、間違いを認めたことはいいことです。
彼の本心がどうなのかはわかりませんが、とりあえず「積極財政重視、MMT容認」の姿勢を見せたことは良い兆しであり、政権与党の議員達にも影響が及んでくれることを期待します。
但し!竹中が、ひたすら国民の貧困化と格差拡大を進めた新自由主義&グローバリズム路線と決別し、国民を豊かにする経済ナショナリズム路線(積極財政・規制強化・保護貿易)に転換するとは到底思えません!相変わらず、「国富を切り売りしてグローバル外資の利益を最大化する政策」を主張し続けると思います。
彼が本当に改心し、小泉政権以降の的外れの持論の誤りを認め、全否定しない限りは信用できません。
どうなるんでしょうね。書いていても信じられない話なので、判断に困るんですよね。
今後に注目ですね。
このことが真実なら、画期的なことではありますね・・・。
竹中平蔵氏は、菅総理にも現状近い立場にもありますので、こういう考えが、今検討されているらしい3次補正や、来年度の予算編成に良い影響を及ぼすことを祈るばかりですね・・・。
画期的すぎて「ほ、ほんまに? 嘘ちゃうやろか?」と疑ってしまいますよね。
私も疑ってますし。
なんとかいい影響があることを祈念したいですね。
今後、竹中平蔵が積極財政を訴えるようになったとしても重用する政治家が同様に間違いを認めなければ竹中平蔵が干されるだけで終わりそうですが・・・
あり得る展開ですねぇ。どうなることやら。
MMTを詳しく教へて頂き有難うござゐます。いつも拝見してをります。
騙されてはいけません。竹中は断固として「改心」なんかしてをりませんよ。
10年前は米国の犬として「積極財政論者」でした。米国が我が国に「内需拡大」を要求してゐたからです。その後米国の圧力がなくなり、デフレ下でパソナが政府や地方の仕事を請け負ふ為に「プライマリーバランス」を言ひ出して「公務員改革」を推進したのです。今や役所の窓口はパソナだらけです。同時に、「行革」による公有財産の民活や払ひ下げ(関空が典型例)で、オリックスと組んで巨利を得てをります。
では、なぜ今、積極財政か(?)恐らくコロナに際し、「持続化給付金」などの「政府支出」で潤ふ手口を見つけたのでせう。失業者の救済もビジネスになると三橋貴明氏は見てをります。
いづれにせよ、今頃になつてMMTに目覚めた訳ではありません。その時その時で「緊縮」にも「積極」にも寝返る「吸血コウモリ」ですから、3年後には何を言ひ出すか分からない売国奴だと看做しておけば間違ひないでせう。グローバリストの本質に変はりはないのです。騙されてはいけません。
高橋様の今後のご活躍を祈念してをります。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
>竹中は断固として「改心」なんかしてをりませんよ。
別に改心してほしいわけじゃないので、そこは問題ではないかなと。
多分改心などしないでしょうし(笑)