RCEPが15カ国で署名されたと報道されました。詳しい内容についてはこれから出てくるでしょう。
しかし1つだけ確実に言えることがあります。RCEPは中国主導であり、日本が対抗するなどお話にならないということ。
もっと踏み込んで言えば、中国が経済支配を広げる次なるステップがRCEPです。
なぜこのような結論になるのか簡単に解説します。
RCEPとはそもそも何か
RCEPとはTPPのASEANバージョンと考えればOKです。
TPPとはアメリカが日本を美味しくいただくための条約でした。TPP参加国のGDPの9割がアメリカと日本で占められていました。
もっともアメリカが途中で離脱しましたから事なきを得た印象があります。
RCEPも中国と日本のGDPで、RCEP参加国全体のGDPの8割以上になります。構図的にはそう変わりません。
RCEPそのものは大幅な関税の引き下げの他に、電子商取引のルール整備などがその内容です。世界の人口とGDPの3割をカバーしているとされます。
余談ですがRCEPの交渉は2003年から始まりました。TPPが中国包囲網と言っていた人は、己の無知を恥じるべきだと思います。
少なくとも日本はその時点でRCEPの交渉に参加しており、中国包囲網という意図はみじんもありませんでした。
RCEPで中国の影響は絶大
TPPでアメリカの影響力は絶大だろうと言われたように、RCEPで中国の影響力は絶大になるでしょう。
なにせ世界のGDPの2割近くを占める中国です。影響が小さかったら驚きです。
工業製品を伸ばしている中国と、これから日本は無関税で戦うことになります。中国の安い製品はこれまで以上に日本に入ってくるでしょう。
中国との自由競争は、日本に不利な要素を多く含みます。
加えて自由競争によってデフレ圧力は強まり、国際競争力の美名の下に人件費抑制圧力もかかるでしょう。
RCEPの枠組みが中国主導になるのは明らか
国内のRCEPの報道を見ていると、日本がナビゲーション役になるなどと言うおバカな言説もありました。
未だに2010年までの「アジアのリーダー日本」の幻想を見ているのです。もはやそんなものはどこにもありません。
RCEPが中国主導となり、中国がリーダーとして影響力を及ぼすのは明らかです。
中国は日本の3倍のGDP
中国のGDPは15兆ドル超となり、日本のGDPの3倍に及びます。2010年に抜かれてから10年で、3倍という差が付きました。
いかに日本が経済成長せずに過ごしてきたかわかる数字です。
軍事費に至ってはもはや比べるのもバカバカしい。2018年の中国の軍事費はGDP比で1.9%と国際水準でした。対して日本は0.9%。
そしてGDPは3倍差ですから、概算して軍事費は6倍差が付いています。
笑うしかありませんよね。
すでに「日本が対抗できるかどうか」なんか話にもなりません。こんなの議論するまでもないでしょう。
マキャベリ「隣国を援助する国は滅びる」
マキャベリは君主論の中で「隣国を援助する国は滅びる」と喝破しました。日本は2018年まで対中ODAを続けていました。
ODAとは「政府資金で行われる、開発途上国などに対する援助・協力。政府開発援助」のことです。
マキャベリによれば日本は滅びて当然の行いをしていました。
RCEPは自由貿易協定です。国家同士の自由競争が始まるのです。
しからば自由競争とは何か? 自由競争とは資本主義下において弱肉強食と同義です。したがってRCEPによって国家間の主導権・国益の奪い合いが始まると見ていいでしょう。
この奪い合いには当然ながら国力や軍事力がものを言います。
かの戦争論を書いたクラウゼヴィッツも「軍事力なき外交は、音符なき五線譜」と言いました。
中国の戦略は経済での支配
もはや台湾や韓国は、中国経済なしには立ちゆかない経済構造です。上海や香港は言わずもがな。中国の戦略とは「まず経済支配」です。
経済構造を中国に依存させ、一体化していけばやがて政治は後から付いてくる。新羅ウイグルやチベット、内モンゴル自治区と同じように人口侵略もお手の物。
内モンゴル自治区では、モンゴル語の代わりに中国語を使うよう教育されるようです。
RCEPはこの経済支配の戦略の一環として捉えるべきでしょう。
そのRCEPでもっとも大きな獲物は何か? 韓国はすでに中国経済なしには立ちゆかないので二の次。日本に決まっていますよね。
まとめ
中国は覇権国家です。したがって将来的に、日本も中国の覇権に組み込もうとしてきます。
その一環としてのRCEPだと理解するべきでしょう。
では今から日本に何か有効な手立てがあるのか? 積極財政をすれば中国の覇権から逃れられるのか?
残念ながらすでに「遅い」と言えます。軍事費で6倍差、GDPで3倍差です。手遅れの段階にまで差が付いてしまったと筆者には思えます。
今になって慌てふためいて「どうなる! 日本!」などと言いますが、すでに「どうにもならない」ので、どうなるもクソもありません。
このまま行けば将来的に中国の覇権に組み込まれます。その現実をまずは受け入れて、そして「どうするか」を考えないといけません。