そんな気がしていた――。本当にそうだろうか。
スマートフォンの画面には大阪都構想が否決されたと書いてある。
喜びや興奮の前にまず、僕はそっと息を吐いた。
「ホッとしたわ。あ~疲れた……」
と。
閑話休題。
大阪都構想が否決されました。大阪都構想が否決されるまでの動きをまず解説し、その後に大阪都構想がなぜ否決されたのか? その理由について分析したいと思います。
大阪都構想2020も否決
各社が報じるところによれば「反対」69万2996票、「賛成」67万5829票とわずか1万7000票差で否決されたとのことです。
パーセンテージにして1.2%差です。
前回の大阪都構想2015が1万票差でしたから、前回に引き続いて今回も僅差での否決となりました。
2015年5月17日の大阪都構想2015に続き2020年11月1日に、大阪市民は大阪都構想を否決して良識を示したと言えます。
大阪都構想2020否決までの道のり
ざっと大阪都構想2020までの道のりを振り返っておきましょう。「よくこれで否決できたな」というのが率直な感想です。
2015年5月17日に大阪都構想2015が否決。その差はわずか1万票差でした。
しかしその半年後の2015年11月に大阪ダブル選で松井一郎氏、吉村洋文氏が知事・市長に当選。わずか半年後に大阪市民、大阪府民は維新に勝利を与えてしまいます。
2019年4月には大阪クロスダブル選と地方統一選がありました。地方統一選では維新が勝利し、またクロスダブル選でも吉村知事・松井市長が誕生しました。
反維新勢力の心をおるに十分な成果でした。筆者? 当然、わりとこの時点で諦観を覚えていました。
地方統一選の維新勝利をうけて公明党がスタンスを転換。一転して大阪都構想に協力的になります。これが2019年6月あたりからのことです。
2019年12月には維新と公明党が大阪都構想の大枠で一致。そして2020年6月に特別区設置協定書案が維新・公明党によって可決されました。
このあたりの動きは、以下の記事に詳しく書いてあります。
そして来る2020年11月1日、大阪都構想の住民投票が行われなんと否決! 僅差ながら大阪都構想は2度目の否決となりました。
普通この流れで否決などほとんどあり得ません。ちょっとした奇跡――と片付けるなら思考停止。どうして否決されたのか分析しましょう。
大阪都構想2020はなぜ否決されたのか
選挙において維新は圧倒的に勝利していました。ダブル選、ダブルクロス選ともに勝利しましたし、地方統一選も過半数まではいかなかったものの勝利と言って良いでしょう。
事前の世論調査でも10ポイント程度、大阪都構想賛成派が多いとされていました。
しかし大阪都構想住民投票の告知前から徐々に反対運動が盛り上がり、反対がポイントを伸ばし賛成がポイントを減らす展開となりました。
反対派の運動が効果的だったからでしょうか? 大阪都構想2015と比較すると公明党が賛成に回り、野党は一致して反対していません。反対運動が効果的だったとは言いがたい状況です。
草の根運動やSNSが力を発揮したのでしょうか? もちろん大いに発揮したと思います。大変心強い運動でした。
しかし賛否を覆すまでの強さがあったのか? と言われれば疑問です。
Twitterをよく見ていましたが、住民投票前でも「#大阪都構想」というハッシュタグがトレンド入りすることはありませんでした。
反対派が多くなったのは「関心が高まったからではないか」と考えます。
2000年以降の日本で「改革」が通るのは大抵「無関心から」でした。郵政民営化だけは例外です。しかし例えば種子法、農協改革、入管法規制緩和が可決されたときに反対運動は盛り上がっていたか? 一部でしかみられませんでした。
逆にTPPなどは生活から遠い改革です。生活に近い改革より関心が薄くなるのが一般的です。
大阪都構想の反対派が増えたのはまさに、関心が高まったタイミングからでした。関心が賛否の大きなキーワードだと思います。
維新は選挙戦略・そして選挙結果ともに勝利してきました。彼らの敗因は「大阪都構想に関心を持たせてしまったこと」にあるのかもしれません。
維新が反対派をスルーして淡々と活動し、大阪都構想がここまで盛り上がらなかったら――きっと大阪都構想は可決されていたに違いありません。
「身近」「関心」。この2つが分析の大きなキーワードでしょう。
大阪都構想反対だった筆者たちの活動
筆者は2015年からずっと、大阪都構想に関する記事を書き続けてきました。2018年末に新ブログに移行して記事を引き継がなかったのですが、新ブログだけでも大阪都構想関連は60近い記事数です。
新ブログの大阪都構想関連のPVはのべ9万と、10万PVに一歩届きませんでした。現在1日になぜか都構想関連だけで1000PVほど来ていますから、おそらく10日後くらいには10万PVとなるでしょう。
ユーザー数で言えば6~7万人が、当ブログの大阪都構想関連記事を参照したことになります。
大阪都構想の反対派として、皆様と共に一定の成果を残せたものと自負しています。
SNSやブログで当ブログの記事を取り上げ、拡散してくださった皆様に感謝申し上げます。皆様の運動の成果が上記の10万PV近いアクセスです。
あなたの活動がこの10万PVにつながりました。重ねて厚く御礼申し上げます。
大阪都構想が否決されたとの報道を受けて筆者が感じたことは、冒頭に書いたとおりです。ホッとした、が一番近い表現でしょう。
まとめ
大阪都構想に反対した皆様と、そして大阪市民の良識が大阪都構想を再び葬りました。とても喜ぶべきことです。
100年以上にわたる歴史を誇る自治体を、あなた方が破壊から守り抜いたのです。2020年11月11日は、2015年5月17日とともに大阪人にとって忘れられない日になるでしょう。
以下がPVの多かった記事トップ3です。あなたの拡散した記事があるかもですよ。
1万8000PVとダントツの記事です。
今もむちゃくちゃ見られている記事。1万2000PVでした。リアルタイムに現時点で十数人が見に来てます。住民投票が終わってからってなぁ……まあええんやけど。
7000PVの記事。個人的には一番好きな記事です。
>大阪都構想の反対派が増えたのはまさに、関心が高まったタイミングからでした。
>彼らの敗因は「大阪都構想に関心を持たせてしまったこと」にあるのかもしれません。
確かにその通りかと思います。
ちなみにこちらの記事では、住民投票の告示日前あたりから潮目が変わったと分析しています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/yoneshigekatsuhiro/20201102-00205974/
その要因として、「住民投票が近づき、在阪局各局でテレビ討論会などの企画が設定されたことなどから、市民の関心が高まっていったことが影響している」とのこと。
>筆者は2015年からずっと、大阪都構想に関する記事を書き続けてきました。
>ユーザー数で言えば6~7万人が、当ブログの大阪都構想関連記事を参照したことになります。
ヤンさんの関連記事(特に都構想のメリット・デメリットに関する内容)は、個人的には至極当然の”耳タコ”レベルでしたが、ネット上でここまでのPVがあったということは、やはり真実を広める拡散効果があったと思います。
>大阪都構想に反対した皆様と、そして大阪市民の良識が大阪都構想を再び葬りました。とても喜ぶべきことです。
(少なくとも10月初旬ごろまでは)個人的には、極めて悲観的というより絶望的な気分、つまりほぼ100%の確率で可決されるだろうと思っていました。大阪市民のほとんどは地元メディアを通じて維新の連中の垂れ流す悪質なプロパガンダに洗脳されているから、当然そうなると。しかし、その悲観的な予想が覆されて安堵しています。大阪市民を見くびっていました(笑)。ちなみにNHKの出口調査を見ても、20代以下の若年層や60代以降の高齢者層に都構想への反対者が多かったようです。
さて、今後ですが、いわゆる大阪都構想の欺瞞が周知されるだけにとどまらず、10年近くもの間、大阪市政を私物化し、滅茶苦茶にしてきた反社会的デマゴーグ集団である維新の会への幻滅・反発が大阪市民に広がることを期待しています。
維新はアイデンティティである大阪都構想を失ったわけですから、何かしらの変化は期待したいところですよね~。
何はともあれホッとしています。
いろいろな意味で、笑うしかないです。
半分近くの大阪市民が解体を望んでいたわけですから…。
それはそれ。
前回もそうでしたから脇に置くしかありませんし、嘆いても仕方ありません。
深く考えると、結構恐ろしいことではありますけど。