日本学術会議は批判されるべき組織だが、菅政権による改革で良くなるのか? 

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東京都港区六本木・日本学術会議 2012年10月 作者 Rs1421

菅政権が日本学術会議の新会員候補のうち、6名を任命しませんでした。
日本学術会議の提出した名簿どおりに任命されなかったことはこれまでなく、法律上も疑義ありということで政権批判が巻き起こりますが……。

その一方で日本学術会議にも批判が集まり、自民党では同会議の改革について検討を始めています。
この「改革」で日本学術会議はより良いものになるのでしょうか。

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日本学術会議とは

日本学術会議は「わが国の人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内外に対して発信する日本の代表機関」(同会HPより)です。

専門的な見地から多くの提言を行いつつ、学者のコミュニティ形成、他機関との連携を図る努力は評価に値するでしょう。

6名の任命除外は

昭和58年(1983)以来、学術会議法第17条により、政府は日本学術会議の推薦による候補者をそのまま任命してきました。当時の法改正の趣旨からも、今回の6名外しは不適切なのは明らかです。

secretary _of_japan「国家とは法により存在し、国民の法への信頼が支える」

6名によほどの問題(他国のスパイの嫌疑とか?)があるなら確かに考慮すべきとも思いますが、少なくとも政府はきちんと理由を説明すべきでしょう。それをしないまま、学術会議批判の煙幕を張って改革を進めるのは卑怯だと思います。

日本学術会議にも問題あり

とはいえ日本学術会議にも問題はあります。

日本学術会議は「特別公務員」として任命されています。
当然、「公益」「公共の福祉」「日本国民のため」の活動が期待されるはずですが、それが果たされていないところが見受けられる。

軍事・安全保障の研究を忌避する声明

GHQ占領下にあった創設当初から軍事忌避傾向がありましたが、いまだにそれが続いています。

平成29年(2017)にも「軍事的安全保障研究に関する声明」を出し、大学などが防衛装備庁と連携することがないようクギをさしています。逆に中国への学者・技術の流出にクギをさせばいいのに。

その中国の軍事的脅威が高まる中、国産の安全保障技術向上は喫緊の課題。それを阻止しようとするのは、むしろ「戦争の災禍」を呼ぶことになりかねません。

災害対策・国土形成に関する提言の偏り

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t298-1-abstract.html
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t294-2-abstract.html
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t294-5-abstract.html

近年の激甚化する災害に対しては、ダムや堤防といったハード整備が必須です。
ところがそれについては
「人口減少、国家財政等の社会的状況の変化を鑑みるとき、従来のような社会資本整備は、時間的にも資金的にも、また合意形成観点からも、困難」
と突き放し、ほとんど言及がありません。

目立つのは情報技術の活用や科学者・現場当事者の連携協力といったソフト対策ばかり。
こんな提言に従っていては、国土強靭化は進まず、国民の命も財産も守られません。

東日本大震災での復興増税、国際リニアコライダー阻止

http://www.scj.go.jp/ja/info/jishin/pdf/t-110405-1.pdf
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-k273.pdf

東日本大震災後には増税して国民的な復興努力をすべきと提言、実際に復興増税が実現。

素粒子物理学の国際大規模プロジェクト、ILC(国際リニアコライダー)建設についても主に財政的負担が過大であることを理由に反対を提言、その結果、建設計画は停滞。

災害対策の提言でもそうでしたが、政府の財政状況を心配し過ぎです。
彼らの提言ではSDGSが強調されることが多いですが、日本の財政ほどSDGS的(持続可能)なものはありません。

独自通貨・国債は自国通貨建て・変動為替相場制の我が国が財政破綻する可能性はゼロ。積極的に各分野に財政出動して、国家的成長を図るべき、と認識を改めてほしいところです。

空気に乗る大衆的エリート

その他、やたらな男女共同参画/ジェンダーフリーや多文化共生の推進などの発言、提言が目立ちます。レジ袋有料化の後押しについて大西元会長が東京新聞で述べたことも批判を呼びましたね。

https://www.jijitsu.net/entry/rejibukuro-yuuryou-gakujutsukaigi

こういったことはいずれもマスコミでもてはやされ、大衆の空気にも合致する一方で、
我が国の国民経済や社会的紐帯の成長・強化を阻害してしまうものです。それどころか、我が国の歴史や伝統に基づく価値観、日本語によって成り立つ文化・共同体の破壊につながります。

日本的・土着的なものを軽視し、世界的・グローバルな価値観で日本を裁く……そんな視線を学術会議から感じます。

やはり日本学術会議には「改革」が必要です。グローバル・エリートすなわち「どこでも族/エニウェア族」的意識をこそ改めてほしいと思います。

自民党による「あり方」の検討

日本学術会議の在り方について、自民党作業チームが年内をめどに方針を出すそうです。

上記報道によれば、座長の塩谷元文部科学大臣は「『政策のための科学』という考え方に基づき、精力的に議論したい」と述べました。

『政策のための科学』……
危険な印象を抱いてしまいます。政府・自民党の決めた政策、グローバル企業を利する政策のために科学が利用されるのではないか。というのも、

安倍政権下の未来投資会議の議論を引き継いで、菅政権下で集められた成長戦略会議の有識者メンバーは、
元ゴールドマン・サックスのデービッド・アトキンソン氏、竹中平蔵慶大名誉教授、金丸恭文・フューチャー会長兼社長ほか。

人材派遣のパソナ会長の竹中氏に加え、外国人のアトキンソン氏の提言を受けて、グローバル化まっしぐらの政策が作られ、それを日本学術会議がもっともらしく理論づける……

そんな想像は杞憂でしょうか。

日本学術会議も自民党も大衆社会の上澄み

邪推と言われればそうかもしれませんが、日本学術会議の会員も政治家もその多くが、

学界世間と政界世間でグローバル礼賛、個人主義礼賛、日本忌避の空気をを読んで上昇気流に乗ってきたわけです。

日本学術会議の「改革」が一般国民にとってまともな方向、すなわち「経世済民」「人々の安寧と世の平和、発展」を真に支えるものになるには、

世論、空気をまともなものに変えねばならない。菅政権の動向をしっかり監視しつつ、地道な言論活動を継続するしかありません。

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