菅政権成立! 「自助・共助・公助」と言うけれど、自助も共助もいっぱいいっぱい!|「公助」拡大のススメ

この記事は約6分で読めます。

大方の予想通り、安倍政権後は菅政権となりました。

圧勝に終わった総裁選において菅義偉氏の掲げたキャッチ・フレーズと言えば、「自助・共助・公助」。困った時には、自分で何とかする。それで解決できなければ、近しい人たちに相談する。それでもダメな時に、政府や役所に頼む。

これは一応、正しい。ただし、一市民・個人の生き方としてだけみれば、です。
我が国の一国民としては、「公助」拡大を政府に要求することこそ、真の「自助・共助」となります。

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自助とは

天は自ら助くる者を助く、と言います。また、一身独立して一国独立する、という言葉もあります。

心身の病気や各種の障碍などの事情がある場合を除き、
自分の生活は自分でしっかり支え、各自の仕事や子育てを通じて国家全体の発展に協力してほしい。

そのように一国の政府が国民に訴えるのは当然でしょう。

共助とは

「一身独立して一国独立する」は福澤諭吉『学問ノススメ』の言葉ですが、そこには以下のような一節もあります。

官私を問わずまず自己の独立を謀り、余力あらば他人の独立を助け成すべし。
(公務員も民間人も、まず自己の独立を果たすようにし、余力があれば他人の独立を助けるようにするとよい)

福澤諭吉『学問のすすめ』 ( )内は筆者訳

自助ができて、余裕があるなら周囲の困っている人を助ける、共助をやってほしい。
これまた、助け合いのできる温かい社会の形成につながることです。政府が国民に求めるのも正しいと思います。

とはいえ、問題は「余裕」です。
共助をやれる余裕を多くの国民が持てているのか、大いに疑問。

国民の財布に余裕なし

20年以上、可処分所得は減少傾向。
すなわち家計において欲しいもの、必要なもの、娯楽にも教育にも使えるお金は減っている。
給与は増えず、社会保険料負担は増え、消費税も増税。当然の結果でしょう。

内閣府「日本経済2018-2019」第二章 第一節

以下の記事でも、実際に一人あたり可処分所得が下がり続けていることがデータと共に解説されています。
銀行員のための教科書「可処分所得の推移を見れば生活が改善しない理由が分かる

このような状況でコロナ禍の追い撃ちです。共助どころか、自助をやることすら難しい状況に追い込まれている人が増えているのではないでしょうか。

NHK「8月の自殺者 大幅増加で1800人超 コロナ影響か分析へ」

東京商工リサーチ「コロナ関連破たん 9月は再び増勢の兆し」

減らされ続ける公共事業と増えない政府支出

その一方で、公共事業関係費は平成10年(1998)をピークに削られ続け、今や当時の5分の2程度。

日本の公共事業関係費の推移

台風や豪雨被害の相次ぐ我が国で、治水事業関係費はピーク時から約3分の1まで減らされています。

日本の治水事業関係費の推移

GDP(国内総生産/総支出/総消費)の大きな勢力となる政府支出も増えておらず、そのためまったく経済成長できていない。

政府支出とGDPの国際比較

これは大きな意味の「公助」が足りていない、ということです。

公助あっての自助・共助

「公助」というと、失職、疾病、犯罪被害、災害発生時など、危機に直面した時に働くものをイメージしがちですが、それだけではない。

道路や上下水道、ダム、堤防などのインフラをととのえ、学術や技術、教育のための支出をし、国内外の治安・安全保障のために警察や自衛隊を運営する。その他もろもろ、数え切れないほどの政府の仕事。

それらを含むものが「公助」であり、この「公助」の下支えがなければ「共助」はできず、「自助」ができるかどうかすら怪しくなる。

グローバリズム/新自由主義による「国家の店じまい」

政府の規制をなくし、世界を相手に自由競争だ! 
だらけたヤツは落ちぶれる。競い合ってこそ社会は良くなる。
さあ、勝負しようぜ!

といった雰囲気で、グローバリズム/新自由主義により「国家の店じまい」(政府が「公助」から手を引くこと)が進んでいるのが現状です。その結果は以下のツイートのとおりだと思います。

さらにこのような声も。

「自助」「共助」をしっかり行うには

「自助・共助・公助」という語順に象徴されるように、菅新政権が「公助」を大きく復活させることはないでしょう。新自由主義、国家の店じまい、一部の政商、グローバル大企業のための政治が予想されます。経世済民派にとって、また一般国民にとっても、試練の継続は確定的です。


とはいえ、このような中でも「自助」「共助」をしっかり行うにはどうすればよいか。

まずは必要に応じて各種社会保障なども活用して自らの生活を立てつつ……
政府・政治家に「公助の拡大」すなわち積極財政への転換、インフラ投資の復活強化、社会保障負担軽減、国民生活のための各種規制の復活強化などを訴える、同時にそのような世論を喚起することです。

国の借金がーとかいう人もいますが、心配ご無用。
日本は自国通貨発行、変動為替相場制、国債もすべて自国通貨建ての国。
アメリカと同じく財政破綻とやらの懸念はゼロです。

それどころか10万円給付金で誰もが経験した通り、国債発行により政府支出が拡大すれば、国民の預金が増えます。
いわゆるプライマリーバランス黒字化目標などは何の意味もないどころか、有害なので消費税と共に撤廃すべきです。

「公助の要求」こそが自助・共助

現状においては、「公助」を要求することこそが「共助」すなわち困っている身近な人を助けることであり、めぐりめぐって「自助」ともなります。

困難で面倒なことですが、どうしても必要なことです。福澤諭吉『学問のすすめ』には次のような一節もあります。

かりそめにも政府に対して不平をいだくことあらば、これを包みかくして暗に上を怨むることなく、その路を求め、その筋により静かにこれを訴えて遠慮なく議論すべし。天理人情にさえ叶うことならば、一命をも抛ちて争うべきなり。これすなわち一国人民たる者の分限と申すものなり。
(政府に不満があるならば、心の中で恨んでいるばかりではダメだ。正当な手続き、手段によって冷静に訴え、遠慮なく議論すべきである。道義や人情に沿うものなら、命懸けて論争すべきなのである。それが一国民の仕事と言えるものなのだ。)

福澤諭吉『学問のすすめ』 ( )内は筆者訳

政治の動かなさときたら山のごとしですが、あきらめずに続けていきましょう。ご協力いただける方が一人でも増えることを願っています。

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