消費税10%の増税で苦境に陥る令和日本に、もしも三島由紀夫が生きていたら、我々は、どうなっていただろうか?

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 令和元年10月1日に安倍総理は消費税を10%に増税し、令和元年の日本は大きな苦境に陥るでしょう。絶望ばかりの現代日本ですが、こんな時には、もしも・・・が、・・・だったら?という思考実験が、何かの役に立つかも知れません。私は数年前、三島由紀夫が自決せず生き続けていたら日本はどうなったか?というテーマで、政治小説『三島由紀夫』〜彼が絶望を諦めた理由〜を書いたのですが、本エントリーは、その転載です。

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『95歳の新生活』

 私の名前は三島由紀夫、令和元年の今年95歳である。若い頃から身体を鍛えていたので至って健康だ。この4月には、桜が満開の靖国神社で行われたYMOの奉納ライブに出掛けたところだ。実はつい最近、東京湾を見下ろすコンドミニアムの最上階に引っ越して来たのだ。自宅は息子に譲り95歳の新生活を始めようという訳だ。

『48年前の出来事』

 引越の荷物も漸く片付いたので、私は、この建物をデザインした建築家のブログでも見ようかと思いついた。東京湾の夜景を一望するリビングのソファに腰を降ろしてブログにアクセスした私は、余りの衝撃にソニーが世界最初に発明したアイパッドを床に落としてしまった。48年前に私は、このブログを確かに見た事があるのだ。

『自決する気が無くなった理由』

 しかしこのブログの内容は大きく異なっていた。建築論や文化論など軽めのコラムが中心で政治的なエントリーは一切無い。正直に告白すると見たというのは正確ではない。48年前の11月24日の夜、夢の中で、私は、このブログを見たのだ。そこに克明に書かれていた酷い日本の有様に、私は、自決する気が完全に失せてしまったのである。

『今までに経験した事が無い悪夢』

 1970年11月25日の朝、今まで経験した事がない嫌な汗をかいて私は目を覚ました。全身が気怠く、まるで自分の身体でないようだ。予定では自衛隊の市ヶ谷駐屯地でクーデターを起こして自決する予定であったが、不思議なもので全くその気が無くなってしまった。私は盾の会メンバーに連絡し計画中止を告げた。

『支那と朝鮮に負けるアベノミクス』

 その夢の事は暫く忘れてしまっていたがブログを読んで鮮明に思い出した。今では万年野党「自民党」の党首、安倍晋三が、夢の中では、首相で、移民を大量に入れて日本を滅ぼそうと画策し、経済規模も中共に倍近くの差を付けられ、国民は貧困化し、更に韓国にも国民一人当たりの豊かさで抜かされそうという最悪の状況だったのだ。

『消費税増税を喜ぶ家畜人と化した自称ホシュ』

 特に呆れたのが、消費税という欠陥税を、平成に入って導入すると、有りもしない財政破綻に怯えて延々と増税し、20年もデフレを続けた挙げ句、令和という新年号になった最初の参院選で、10%に増税するという与党を支持する自称ホシュのクズどもの姿を見た事だ。正直に告白すると、割腹自決を遂げる以上の苦痛を私は、その悪夢の中で感じたのだ。

『三島事件そのものを作品化』

 まあ、ともかく死ぬ気も失せる程、酷い将来の日本の姿に、むしろ「生きねば」と想う自分が居たのは確かだ。私は盾の会のメンバーを集めて、クーデター計画を完全映画化する旨を伝えた。作品は3時間を超える大作となり、クライマックスの市ヶ谷駐屯地のシーンは自衛隊員には伝えず実行され迫真の映像となった。

『愛のコリーダのような映画』

 内容のバイオレンスとエロティシズムによって映画は大変な問題作となり、フランスとの合作映画という形式で漸く発表可能となった。各地の映画祭でも話題となったが、過激過ぎる表現によって無冠に終った。更に私は、阿部貞事件を題材とし、藤竜也主演のハードコアポルノなど問題作を次々と発表する事となる。また、私の映画の助監督だった大嶋渚は、私のパクリ映画を相次いで発表し海外でも人気者になった。

『ノルウェーの森のような小説』

 また映画と同時進行で小説も積極的に書き上げていた。しかし、あの悪夢以降は文体も全く変わってしまった。後の村上春樹などに大きな影響を与えたが、オシャレな男女が直ぐにセックスに及ぶ軽薄な内容が、文壇からは大きな批判を浴びた。しかし若い世代からは絶大な支持を受けベストセラーを連発し続けた。

『表現者としての活動』

 私は70年代に入り政治的な運動は控える様になったが手は打っていた。60年安保の極左活動家であった西部邁を大抜擢し保守系オピニオン誌を創刊した。また毎晩六本木に出掛けて夜遊び三昧だったが、私の周囲には、アーティストやデザイナーやミュージシャンが集まる事実上のサロンが形成されていたのだ。

『80年代のクリスタルな空気』

 結果80年代初頭の日本社会の空気は静かに大きく変化していた。60年代とは正反対で、愛国的な発言、保守的な言動、右寄りな姿勢、というものが格好よくオシャレになっていたのだ。その集大成は私が仕掛けたYMOである。三宅一生デザインの特攻服を着てテクノを奏でて世界的な大ヒットを連発したのだ。

『坂本龍一とは親子二代の付き合い』

 特に父親が編集者として「仮面の告白」など担当した坂本龍一とは親子二代の付き合いとなった。私が監督し、坂本龍一とデビット・ボウイが共演した日英海軍の武士道と騎士道を描いた「戦場のメリークリスマス」や、満洲国がいかに優れた国家だったかを示した「ラストエンペラー」では、革新官僚の岸信介をサカモトに演じてもらった。

『日本人二人目のノーベル文学賞』

 私が監督した映画ラストエンペラーが米アカデミー賞を総嘗めにした頃、日本人二人目のノーベル文学賞受賞の知らせが届いた。私としては天皇陛下から文化勲章を賜る方が大いに緊張したのであるが・・・時はバルブ景気の真最中であり、日本は私が危惧した通りの国になりつつあった。しかし本当の問題は、その後である。

『バブル崩壊後の社会の混乱』

 私は例のブログを見た事など当時はすっかり忘れていた。しかし、年号が昭和から平成に改元された時、記憶が再び蘇った。平成の30年間に日本社会が転がり落ちるのは、バブル崩壊後の話だ。予想通り、社会の閉塞感は高まり、それに呼応する様に改革!改革!と、世間が騒がしくなっていた。

『日本保守党を細川護煕と結党』

 政治状況は近衛文麿の孫の細川護煕が国政復帰を画策していた。私にも細川から声が掛かると、党名を日本保守党にする事を条件に私も新党設立に参画し政治家に転身したのだ。小沢一郎が自民党を飛び出し55年体制が崩壊すると、野党連立政権が樹立し、私は宮澤喜一の後の第79代内閣総理大臣に就任した。

『79代内閣総理大臣として』

 連立与党は共産党を除く野党連合であり事実上の野合に他ならなかった。この綱渡りの政権運営で役立ったのは、映画監督として満洲国の研究を行った事だ。岸信介などの革新官僚が、積極財政で公共投資を行い、極寒の原野だった満洲が僅か数年で重工業地帯に変貌したのを私は知っていた。行う政策は一つだ。

『積極財政で日本超復活』

 小選挙区への選挙制度改革を小沢一郎は求めたが、私は、先にバブル崩壊の後処理を行う事を主張して豪腕で小沢をネジ伏せた。日銀に命令し不良債権を異次元の金融緩和で一瞬で処理した。当時は米国も日本の内需を狙っており公共投資増を求めていたので、未着工の新幹線や高速道路を一気に整備する作戦を敢行した。

『構造改革は極左思想』

 当時の政府には、冷戦崩壊後に米国一極体制であるグローバリズムを支持する輩もいたが、私はそれを完全無視して、バブル崩壊の後処理のみに集中した。当時流行だった構造改革とは元々イタリア共産党生まれの極左思想であり、ベルリンの壁崩壊後に極左の連中が構造改革派に衣替えするのを私は見逃さなかった。

『日本のGDPは、令和元年で2000兆円越えに』

 三島由紀夫政権は歴史的な超長期政権となり、日本国憲法を破棄し「十七条の憲法」と呼ばれる僅か17条の自主憲法を国民投票で制定するまで私は首相を務めた。日本は英国と同じく事実上の不成文憲法に移行したのだ。積極財政の結果、今の日本のGDPは2000兆円を超えチャイナ経済も日本には追付けない。

『世界一豊かな自主独立の日本』

 国民一人当たりのGDPは世界断トツの1位で、2年前には在日米軍の撤退も完了した。落ち目の英国との間での核シェアリングも完了し、今では6隻の原潜が1000発の核爆弾を搭載し、24時間態勢で周辺諸国に睨みを利かしている。広島サミットでは当時のオバマ大統領が原爆投下を謝罪し、来年には、ロシアから北方領土も四島一括返還に向けて最終調整が続いている。竹島は十年以上前に無人島に戻り海上保安庁の管轄下に置かれている。尖閣には一隻の外国船を寄せ付けぬ中、来年には巨大油田も商業化予定で中東ともサヨナラだ。

『東京五輪のスタジムを見下ろす絶望』

 実は私がこのコンドミニアムに引っ越したのには理由がある。この部屋からは来年2020年に開催予定の東京五輪スタジアムが見下ろせるのである。私は開会式のプロデュースを任され、工事費1兆円で収容人数20万人の世界一高価なスタジアムで行われる開会式は、野村萬斎や椎名林檎が、私の下でセレモニーの準備に勤しんでいる。五輪開会式当日には、私は、会場には行かずこの部屋から親しい友人を招いてロマネコンティを飲みながら、最高の絶望を体感するつもりだ。

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