なぜうつ病は増加したのか?うつ病の推移から社会を読み解く

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 1996年のうつ病患者は43万人でしたが、2017年には127万人にまで増加しました。
 わずか20年で、3倍にまでうつ病患者が増加したのです。

 潜在的なうつ病は8人に1人との統計や、潜在的なうつ病患者は数百万人に上るとの説も。
 ストレスフルな現代社会にとって、うつ病は蔓延する疫病です。

 今回の記事では、「うつ病に対する基本的な知識」「うつ病の推移」「うつ病が増えた原因」について解説します。

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うつ病とは

 日本ではうつ病患者が増加しています。
 うつ病は非常にメジャーな病気ですが、その実態はあまりよく知られていません。

 なんとなくイメージは持っていても、原因や治療について詳しく知っている人は少ないかもしれません。
 うつ病の基本的な知識について解説します。

原因

 うつ病はメジャーな病気でありながら、その原因は明確に解明はされていません。

 うつ病とは、「気分が落ち込む」「憂鬱になる」「やる気が出ない」といった精神的な症状のほか、「眠れない」「疲れやすい」「体がダルい」などの身体的症状も現れる病気です。
 気分障害の一種で、うつ病と躁うつ病に分けられます。

 うつ病の原因ははっきりとは解明されていませんが、神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンなどのバランスの乱れが関係していると言われています。

 筆者の個人的な体験では、「気分のひどい落ち込み」「希死念慮」「やる気が出ない」といった症状が顕著です。

治療

 うつ病の治療は「十分な休養を取る」「環境を改善する」「薬の投与」があります。
 ストレスはうつ病の原因とされており、休養や環境の改善によってストレスを軽減することが必要です。

 併せて、薬物による治療がうつ病には欠かせません。
 一般的には抗うつ剤を処方し、患者の容態によっては抗不安薬、睡眠導入剤、気分安定薬などを用います。

治るまでの期間

 未治療の場合、うつ病は6~12ヶ月続いた後、自然に軽快すると言われています。
 治療をした場合は平均して3~6ヶ月で回復することが多いようです。
 しかし、2~3割の患者はそれ以上の期間がかかることも。

 うつ病患者のうち6割が、2年以内に再発することが多いのだそう。
 そのため、うつ病の治療では回復とともに再発防止にも力を入れることが必要です。

うつ病患者の推移と潜在患者数

 うつ病患者は2000年代から増え続けています。
 1996年に43万人だったうつ病患者は、2017年に3倍の127万人にまで増加。

 うつ病の推移は以下のグラフの「気分障害」にあたります。

 2000年代初頭はちょうどデフレに突入した時期です。
 はたして、この奇妙な一致は偶然なのでしょうか。

 うつ病が増えた原因について調べると、うつ病が増えているのは複合的な原因によるものでした。

なぜうつ病が増えたのか

 うつ病が増えている原因はどうも複合的なものです。
 原因についてわかりやすく解説します。

診断の方法

 うつ病の診断方法は1994年を境に変更されました。
 精神疾患分類体系(DSM)と呼ばれる分類体系があります。
 この分類体系は精神疾患を分類するための基準です。

 1980年代にはDSM-IIIが判断基準として用いられていましたが、1994年にDSM-IVが発表されて判断基準が変更されました。
 変更された内容を敷衍すると、うつ病と診断される範囲が広くなったのです。

 また、1990年代以前はヨーロッパ流の判断基準が一般的でしたが、1990年代に入ってからアメリカ流の判断基準を採用するようになったことも、うつ病と診断される人が増加した一因です。

心療内科の増加

 新薬の登場や心療内科の増加も、うつ病が増加した一因ではないかと言われています。
 「鶏が先か卵が先か」と同様、心療内科が増えたから診察にいく人が増加したのか、診察にいく人が増加したから心療内科が増えたのかは微妙なところ。

 1996年から2008年の12年間で、精神科が1.6倍、心療内科が5.6倍に増えました。
 それに伴い、新薬の売り上げも増加しています。

 「うつは心の風邪」「早期治療が有効」といったメッセージや広告が浸透し、そのためにうつ病の認知度が上がったのかもしれません。

社会環境の変化

 「診断基準が変わった」「うつ病の認知度が上がった」「気軽に心療内科にいけるようになった」などの要因のほかにも、社会環境の変化を理由に挙げる説も多くあります。

 診断基準やうつ病の認知度だけでは、20年間でうつ病患者が3倍になるとは思えません。
 さらに、2008年の調査では、8人に1人がうつ病の可能性があると発表されました。
参照 8人に1人が潜在的うつ病・うつ状態の恐れ – ファイザー調査 | マイナビニュース

 上記の調査が本当なら、1500万人がうつ病の可能性があります。

 そのほかに、潜在的なうつ病の患者数は数百万人に上るという説も。

 これだけうつ病が増加したのは、社会的な環境の変化や厳しさが増したからではないかと考える方が自然です。
 1998年から日本はデフレに突入しました。
 うつ病患者が増え始めたのは2000年代初頭からです。

 この奇妙な一致は、偶然とは思えません。

 「雇用の不安定化」「所得の減少」「国民の貧困化」「非正規雇用の拡大」などの環境変化が、うつ病の増加をもたらしているのかもしれません。

うつ病に関する個人的な感想

 筆者もうつ病にかかっています。
 心療内科で投薬を始めて、だいぶ症状は軽くなりました。
 それでも、「やる気が出ない」「不安で眠れなくなる」「ひどく落ち込む」といった症状が出るときがあります。

 うつ病が発症したのはストレスフルな環境のとき。
 ストレスとうつ病には強い関係があります。

 現代の日本社会はどことなく閉塞感があり、ストレスの多い社会のように感じます。
 ストレスなく緩くでも生きていける、そんな社会になってほしいものです。

まとめ

 現代の日本ではうつ病が増加しています。
 1996年に43万人だったうつ病患者は、2017年に127万人にまで増えました。

 診断方法の変化や心療内科の増加、うつ病の認知などもうつ病が増えた原因でしょう。
 しかし、社会環境の変化も見逃せない原因です。
 ストレスフルな社会環境が、うつ病を増加させたのではないでしょうか。

 ストレスフルな社会環境には、デフレも少なからず関係しているに違いありません。
 積極財政やデフレ脱却で、ストレスフルな社会を変革する必要があります。

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