最近ようやく「コロナウイルスによる経済損失がヤバい! コロナ不況だ!」と報道され始めました。日本政府も重い腰を上げて、補正予算を成立させる見込みです。
危機ではないときには、さも危機のように煽られるものです。しかし本当の危機の場合、危機の深刻さに多くの人が気がつかずに危機を迎えます。多くの人が正常バイアスによって、危機を過小評価します。
経済損失はどれくらいになるのか? 想定される最もヤバい状況とは? できるだけ簡単に、解説していきます。
世界を覆うコロナ不況!経済損失はいくら?
コロナウイルスによる経済損失がいくらになるのか? 様々な報道がされています。東京五輪が中止されて20兆円の損失だ! いやいや新型コロナが長期化して16兆円だ! 世界経済の損失は30兆円だ! まてまて、100兆円は経済損失が出るぞ! etc……。
この手のコロナによる経済損失の試算は、はっきりいえば「当たるも八卦、当たらぬも八卦」です。コロナがどれくらいで収束するか? どれほどの被害が拡大するか? すら判明してない状況で、経済損失なんて計算しようがありません。
しかし一つだけ、断言できることがあります。危機管理の観点から、常に最悪を想定しておかないといけません。つまりコロナによる経済損失は、試算されているなかで最大のものを想定しましょう。
つまりパンデミックの場合、最善でもGDP損失は2.3兆ドル。米シンクタンク試算 | Business Insider Japanあたりの、大きな経済損失を想定しておくべきです。
筆者は日本のコロナによる経済損失を、”最低でも”50兆円/年以上と見積もっています。
コロナ不況と経済損失で想定されるシナリオ
コロナウイルスによって、世界同時不況が訪れます。その際にどのようなシナリオがあるのか? 想定される最悪のシナリオの一つを、お示ししたいと思います。
世界経済の低迷とコロナウイルスとの戦いの長期化
コロナ感染拡大を防ぐために、世界各国は外出禁止を次々と実行しています。消費は低迷し、需要は急降下の一途です。一説によればアメリカの4-6月期のGDPは、4割ほど下落するのでは? との観測もあります。
コロナウイルスは現在、まだ猛威を振るい始めた初期段階の可能性もあります。これから本格的な、感染爆発が起こるかもしれません。
またコロナウイルスのワクチン開発に、1年はかかる見通しです。実際の流通には、もっと時間がかかるかもしれません。
世界経済の低迷は、長期化する可能性があります。
世界経済のデフレ化と崩壊する資本主義
コロナウイルスの長期化で世界経済が停滞すると、世界全体がデフレ化する可能性があります。デフレとは資本活動の縮小であり、資本主義の病です。
資本主義とは「常に負債を拡大しつつ、経済成長をしていく経済形態」です。デフレでは少なくとも、経済成長が止まります。すなわち資本主義の崩壊と呼んで、差し支えありません。
世界も日本も失業率と不満の大幅な増加
上述した世界経済のデフレ化も、コロナによる経済損失といえるでしょう。しかし個人にとって恐ろしいのは、失業率の増加です。
リーマンショックのときにヨーロッパでは、失業率が25%以上になった国がありました。コロナ不況はリーマンショック以上のダメージを、世界経済に与える可能性があります。
失業率の増加は即、国民の不満になります。国内で不満が鬱屈した国家が、国民の目をどこに向けさせるのか? 大抵は外に敵を作り、団結しようと呼びかけることは歴史が証明しています。
コロナによる経済損失に経済学が役立たず?
コロナによる経済損失のダメージを軽減し、癒やすために人類の英知を結集せねばなりません。様々な分野で、それぞれの社会科学による議論が望まれるでしょう。
しかし経済学だけは全く役に立たないかもしれない、という衝撃的な話を解説します。
主流派経済学が想定していない不確実性
現在の経済学の主流は、新古典派経済学と呼ばれるものです。新自由主義やグローバリズムと呼ばれることもあります。
主流派経済学では、現実の不確実性を想定してません。例えば今回のような、コロナウイルスの感染拡大による経済損失は、主流派経済学では想定されません。
主流派経済学はせいぜい、リスクという「計算可能な危険性の想定」しかしません。
世界中が味わっているように、現実はこんなに不確実性に満ちているにもかかわらず!
コロナの経済損失をサプライサイドでカバーできるか
主流派経済学は、サプライサイド経済学とも呼ばれます。サプライサイド、つまり供給側という意味です。主流派経済学はオンデマンドサイド、需要をほぼ考えません。主要理論であるセーの法則で「供給すれば消費される(はず)」と考えるからです。
※専門的には「供給と需要は常に一致する」と表現されます
今回のコロナウイルスによる経済損失はどうでしょうか? 感染拡大に伴って、外出の規制などがかけられました。自粛要請も出ています。需要が急激に減少したことで、経済がダメージを受けました。
よって需要を創出したり喚起したりすることでしか、コロナによる経済損失を補填することはできません。主流派経済学が唱える、サプライサイドの政策では経済損失は補填不可能です。
脆弱性を増加させ、コロナの経済損失を増大させた主流派経済学
1980年代からグローバリズムは加速し、2000年代にグローバリズムは黄金期と呼ばれました。グローバリズムを加速させたのは、主流派経済学に他なりません。
グローバリズムはヒト・モノ・カネが、国境を越えて自由に移動することです。結果としてコロナウイルスも、国境を越えて自由に移動しました。金融危機についても同様ですが、グローバリズムは国境という壁を取り払い、脆弱性を拡大したのです。
コロナウイルスの急速な拡大の遠因は、主流派経済学にありました。
コロナ不況に備えて個人がしておくべき対策
すでにコロナ不況は始まっています。コロナウイルスとの戦いが、どれくらいの期間になるか? 誰にもわかりません。したがってコロナウイルスの経済損失も、算出しようがないほど大きなものになる可能性だってあります。
先行きの見えないコロナ不況に、個人できる対策はあるでしょうか?
最悪を想定して最悪にならなければラッキー
自分で考えられる限りの、最低で最悪なケースを想定しておきましょう。失業率が増加すれば、非正規雇用の人たちは職を失う可能性は高いでしょう。正規雇用のサラリーマンだって、どうなるか誰にもわかりません。
最悪の最悪を想定して、最悪にならなければラッキーです。
デマに踊らされず、冷静に
人間は危機のなかにいると、視野狭窄に陥り思考停止になりがちです。恐怖や混乱は、多くのデマを呼びます。そのデマは、さらに多くの混乱と恐怖をまき散らすのです。
できる限り冷静に、論理的に対処できるように心がけましょう。
最悪の場合は個人が何をやっても無駄
身も蓋もありませんが、最悪の事態になれば個人が何をやっても無駄です。リーマンショックのスペインは、若年層の失業率が50%を超えていました。
この状態では個人がどうあがいたところで、どうにもなりません。
家族や友人、お隣さんと助け合うくらいしかできることはありません。
コロナの経済損失を国家が補填するべき理由
コロナウイルスによって引き起こされる最悪のシナリオに、個人の力では太刀打ちできません。よって国家という、大きな共同体で対抗しなければならないのです。
上記の理由以外にも、国家がコロナウイルスによる経済損失を、補填するべき理由はいくつかあります。
一つ目は、経済の下落は国力の下落とイコールだからです。国力が下落すれば相対的に、国家の安全保障能力も下落します。つまり国家が国民の生命と財産を守るという、義務を果たせなくなります。
よって経済の下落を止めるため、コロナウイルスによる経済損失を補填する必要が国家に生じます。
二つ目は、大きな不確実性に、個人では太刀打ちできないからです。例えば南海トラフ地震が起きて被災したら、個人ではどうにもなりません。コロナウイルスによる経済損失も同様です。
今こそ国民意識を結合し、団結してコロナウイルスに立ち向かわなければなりません。そうしなければいけないはず……ですが……?
軽薄なリーダーシップを見せようとする軽薄な政治家
現在の日本は「僕ちゃん、こんなにもすごいんだぞ! ほら! 見て!」という、非常に幼稚な政治家たちが跋扈しています。正直パフォーマンスに夢中で、真面目に政治をしているように見えません。
お肉券とかお魚券とかを議論している時点で、もはやジョークを超えてます。専門家への相談になしに学校を休校にしたり、大阪兵庫間の移動を自粛してほしいといってみたり。
そして一向に、コロナウイルスの検査態勢が整わないと。WHOも「コロナへの対処はとにかく、検査、検査だ」といっているのにです。
ちなみに現在の安倍内閣の支持率を見れば、軽薄な政治家たちが国民世論にウケているのは明白。本当にマズいのはコロナウイルスではなく、日本の政治意識そのものなのかもしれません。