世界経済フォーラム(WEF)がこの7月13日に発表した、ジェンダーギャップ(男女格差)のランキング、日本は146カ国中116位でした。我が国では、男女共同参画の様々な政策が推し進められています。しかし、そこには多くの疑問を指摘せざるを得ません。ジェンダーに関する持続的開発目標(SDGs)も含めて考えてみます。
男女共同参画局と予算
各省庁をリードする男女共同参画局
「男女共同参画」「ジェンダー平等」というのが、政府やメディア等で盛んに唱えられます。
一方、内閣府には男女共同参画局が設置されています。
- 基本計画を5年ごとに閣議決定
- 女性活躍・男女共同参画の重点方針を毎年取りまとめ
- 重点方針に基づき、各府省と連携して取組を推進
といったことを行うのが男女共同参画局です。
総理官邸における男女共同参画会議で、関連政策の方向性も議論しています。
国家行政全体において、「男女共同参画」「ジェンダー平等」を推し進めるべく、各省庁を導いている。それが男女共同参画局と言えましょう。
各省庁担当分の積み上げで、関わる予算は10兆円以上。
(令和4年度 男女共同参画社会の形成を目的とする施策・事業 約2200億円
同 男女共同参画社会の形成に効果を及ぼす施策・事業 約9兆8000億円)
令和4年度の国土強靭化予算が約4兆5500億円ですから、ずいぶん巨額です。
予算と政策への疑問点
10兆円予算の中には、性犯罪やDV、ストーカー対策、女性の貧困対策といったものがあります。この辺りは必要と思えますが、次のようなものには疑問を感じます。
①約43億円:持続可能な開発目標(SDGs)や女子差別撤廃委員会など国連機関等との協調
↑各国の歴史や伝統を軽視する、統一的な指標や勧告に従うのはどうなのか。そういったものに「協調」するばかりでなく、我が国をはじめ各国の事情を斟酌するよう調整すべきではないか。
②約7億円:教育・メディア等を通じた男女双方の意識改革、理解の促進
↑「意識改革」とは押し付けも甚だしい。思想・言論の自由を重んじる我が国にふさわしいものとは思えない。「女は男の所有物」「女の意見を社会に反映させるな」といった意識を多くの国民が持っているなら、多少は理解できるが……。
③約22億円:積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の推進等による女性の参画拡大・男女間格差の是正
↑女性の管理職や議員、教授が少ないといっても、現状でも希望すれば、その意志があれば不可能ではない。無理な数合わせによる女性優遇で、しかるべき男性が排除されることにならないか。
令和4年度版 男女共同参画白書
ジェンダーギャップ指数で下位の日本
「令和4年度版 男女共同参画白書」が公表されています。
この中でジェンダー平等の国際ランキングが掲載されており、ジェンダーギャップ指数で156カ国中、日本は120位だそうです。
(世界経済フォーラムが今年7月13日発表した最新ランキングでは116位。上位の国が必ずしも「男女とも幸福」とは言えないと思いますが)
この指数は政治・経済・教育・健康の4分野の総合で算出されます。
日本は政治(147位)と経済(117位)が低いため、下位に沈んでいるとのこと。
それぞれの男1に対する女の割合と評価項目は以下のとおりです。
【政治分野】0.061
- 国会議員(下院)の男女比
- 閣僚の男女比
- 最近50年における行政府の長の在任年数の男女比
【経済分野】0.604
- 労働参加率の男女比
- 同一労働における賃金の男女格差
- 推定勤労所得の男女比
- 管理的職業従事者の男女比
- 専門・技術者の男女比
これらの評価項目も見て、いくつか気づくことがあります。
政治分野への疑問
まずは【政治分野】です。
閣僚や行政府の長(総理大臣)は、経験を積んだ衆議院議員(下院)の中から選ばれます。
そもそも衆議院議員の女性比率は10%。
「ジェンダー平等」のため、無理に女性を要職につけるのはかえって不平等ですし、有能な男性議員が外されることになりかねません。
国会議員の女性数を増やそうと、クオーター制(※)の導入を訴える向きもありますが、これまたかえって不平等につながります。
議員になる権利(被選挙権)は男女平等です。
国民の代表としてふさわしい人が選ばれるべきで、男女比率はその結果でしかありません。
※クオーター制:政治分野の男女格差是正のため、選挙の候補者や議席の一定割合について性別を基準に振り分ける制度
経済分野への疑問
続いて【経済分野】です。
端的に言えば「カネと地位」による評価です。
多くの女性が働いてカネを稼ぎ、管理職、企業役員、起業家、医師などの地位を得るほどに指標が「改善」します。
政治分野でも同じですが、いわゆる「男性的価値観」での指標です。
すなわち、出世する、成功する、競争に勝つことに価値を置いています。
生きるための所得・カネはもちろん必要です。
出世や社会的成功を望む女性もいるでしょう。
しかし、「男性的価値観」で人生を計る女性ばかりではないはずです。
むしろ「女性的価値観」に基づく女性、つまり家庭や子育て、温和な人間関係を優先する女性の方が多いのではないでしょうか。
女性の多くは仕事に全振りしたくない?
多くの非正規雇用女性は望んで非正規、と捉えられるデータがあります。
非正規雇用労働をしている理由が「正規の職員・従業員の仕事がないから」という女性は、非正規労働者の7.9%、結婚している女性では4.1%。
裏を返せば、非正規雇用女性のうち全体で約92%、結婚している女性の場合は約96%が自ら選んで非正規雇用労働をしていることになります。
※女性の労働者のうち、約54%が非正規雇用労働者。
女性の年齢階級別労働力率において、「M字カーブ」が台形へと変化しつつあるようです。
これは結婚しても働き続ける女性の増加を示すものですが、「非正規を自ら選ぶ女性が多い」と考え合わせるならば、次のように理解できるでしょう。
「働く女性の約半数は仕事に全振りせずに、余力を残して家庭や子育て等を大切にしたい」
※女性労働者のうち、非正規は54%、うち自ら選んで非正規は92%。よって、0.54×0.92=49.68%が女性労働者全体のうち非正規を自ら選んでいる者。
SDGs曰く、「子育て、介護や家事などは大切な「仕事」」
国連の持続的開発目標(SDGs)にも、目標5としてジェンダー平等が取り入れられています。
その中のターゲット4として掲げられているのが以下。
お金が支払われない、家庭内の子育て、介護や家事などは、お金が支払われる仕事と同じくらい大切な「仕事」であるということを、それを支える公共のサービスや制度、家庭内の役割分担などを通じて認めるようにする。
ユニセフ SDGsCLUB
家庭内の子育て、介護や家事は大切なこと。
お金をしっかり稼いでくるのと同様に、尊ばれるべきことです。
家庭においてはもちろん、社会においても相応の敬意を払われなければなりません。
もちろん今一つ働きの良くない主婦/主夫もいるでしょうが、それは働く人においても同じ。各家庭・各企業で補い合い、調整すればよいことです。
ジェンダーランキングより、国民の生活実感が大事
社会において家庭の仕事に敬意を払うには、実体が必要となります。
具体的には、以下のようなことが考えられます。
- 3人以上の子を育てる母親の表彰
- 配偶者控除や児童手当の大幅拡充による家計所得増
- いわゆる「内助の功」も「輝く女性」の例として称揚する
「そんなことしたら、働きに出る女性が減ってジェンダーギャップが悪化する!」
「昭和に逆戻りか!」
という意見もあるでしょうが、
別にいいのではないでしょうか。
SDGs目標5のターゲット4は達成できますし、何より余裕を持って生きられる女性が増えます。
そのような女性のいる家庭はあたたかく穏やかになります。
共に暮らす男性の生活満足度も上がるでしょう。
ジェンダー平等ランキングなどより、実際の国民の生活が大事です。