貨幣価値が生まれるプロセス
貨幣に価値が生まれるのは、モノやサービスと交換できるからです。
そして、その国の通貨に価値があるのは、その国にモノやサービスを供給生産できる能力があるからです。
もし、その国がモノもサービスも供給できなくなれば、その国の通貨に価値は無くなってしまいます。
単純に国内だけの問題として考えてみれば、通貨だけがあっても、モノがその国に無ければそもそもモノは手に入りません。
国外との関係で見ても、輸入ばかりで円が売られ続ければ、通貨価値は低下、あるいは低下圧力に曝され、通貨安になりやすくなってしまいます。
そもそも国内ですらモノやサービスと交換できない通貨が貿易の決済に使えるわけがありませんから、当然でしょう。
付加価値とは
付加価値とは、あるモノや行為を価値あるものに変えることです。
資源に価値があるのは、それを精製加工する事によって生活などに使えるモノに出来る可能性があるからですが、実際にそれを精製加工して使えるものにする、つまり“価値を付加する”こと、あるいは付加された価値を付加価値といいます。
原油は精製加工されなければただの泥水ですし、鉄鉱石も精製加工されなければその辺の石っころや砂利と同じです。
それらを精製加工することによって、様々な価値あるモノが生まれるのです。
日本に資源はありませんが、その資源に付加価値を与える、つまり生活などに使えるモノに出来ること。
これが円の価値の源泉です。
緊縮財政、株主至上主義と貨幣
付加価値は、設備や技術、そしてそれらを操る人の力、すなわち労働力によって生み出されます。
貨幣は万年筆やキーストロークで生まれはしても、その貨幣に価値を付与するのは、結局労働による力ということなのです。
緊縮財政は、その労働力の発揮場面を奪い、株主至上主義はその価値を毀損してしまいます。
つまり、いずれもいわゆる国力とか、その国の経済力とか言われるものを破壊してしまう恐ろしいものなのです。
貨幣の負債性
モノやサービスとの交換手段として使われる貨幣は、必然的に負債としての性質を帯びます。
貨幣は保有者自身から見れば資産となりますが、保有者以外の(モノやサービスを提供する可能性のある)人々から見ると“将来的に負債を生じさせる可能性のあるもの”と言うことになります。
ゆえに、どちら側からの視点で貨幣を見るかによって、貨幣は資産であるのか負債であるのかが変わるため、議論は水掛け論になりがちです。
しかし、貨幣がモノやサービスとの交換手段として使われることを前提にするならば、貨幣の本質は負債であると言わざるを得ないのです。
貨幣は不特定多数の誰かが欲しがらねば資産としての価値はありません。
誰もが貨幣を欲しがる理由は、貨幣がその流通する社会において、あらゆるモノやサービスと交換できる、つまり負債性を帯びているからこそ資産的価値が生まれるのであり、このことが貨幣の本質は負債であることの証明とも言えるでしょう。
資産としてのモノ、交換を前提とした貨幣
例えば既に発行流通されていない古貨幣は、一部の好事家には高値で取引されることはあっても、それは古貨幣がモノとして、つまりそのモノ自体に実物的な資産としての価値があるからであり、その古貨幣に資産的価値を見出だせない人にとっては、ガラクタに過ぎません。
貨幣は、その負債性があるからこそ資産的な価値を見出されるものなので、負債性がなければゴミクズに過ぎない、つまり貨幣そのものに資産的な価値があるわけではないため、それ故に貨幣の本質は負債であるとも言えます。
政府や中央銀行が発行するベースマネーは、その国のあらゆる負債を償還しうる貨幣であると同時に、その国で生産されたあらゆるモノやサービスとの交換を約束されたものです。
この“交換を約束されたもの”という性質が、貨幣の負債性と言うことができます。
海外から見た場合が解り易いでしょう。
日本の生産物やサービスが欲しいと思った場合は、原則的に日本円を手に入れて日本円と日本の生産物を交換(購入)しなければなりません。
この場合、海外が日本の生産物を購入するために手に入れた日本円は、日本にとっての負債として機能しています。
もちろん、海外が保有する日本円は、当然日本側にとって必ずしも償還する必要のない負債になるわけですが、もしこれを償還しようとするなら、原則的に日本から日本の生産物を海外に譲渡する必要性が生じる、ということです。
無論、これはあくまで原則的な話であり、実際は外国貨幣や金融資産等様々な償還手段はあります。
貨幣の負債性と貨幣の価値
つまり原則に従って考えるなら、日本円の負債性、即ち日本円の資産的価値を裏付けるのは、日本の生産物やサービスの価値であるということです。
そしてその価値を決定付けるのは、それらを提供する日本国に住み、モノやサービスを供給している人々、即ち労働者の力、即ち労働力なのです。