生活保護引き下げ問題の概要とまとめ【貧困層切り捨て】

この記事は約4分で読めます。

 先日、「生活保護費引き下げを違法と判断 取り消す判決 熊本地裁 | NHK」というニュースが流れました。
 生活保護費引き下げが違法だとの判決が下ったのです。

 この判決について、多くの人の感想は「えっ?! 生活保護費って引き下げられてたの?」ではないでしょうか。
 普段はあまり関心を持たない生活保護費。
 しかし、生活保護は国民最後のセーフティーネットであるとともに、国民の生存権を左右する大きな問題です。

 生活保護費の引き下げについて、概要を簡単に解説します。

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生活保護とは

 生活保護とは、憲法が定める生存権を保障する制度です。
 貧困で困窮している国民に対し、困窮の程度に応じて健康で文化的な最低限の生活を送れるように扶助する制度。

 困窮する国民が最後に頼れるのが生活保護です。
 生活保護は「最後のセーフティーネット」とも呼ばれ、困窮した人が最終的に頼る制度が生活保護。

生活保護費引き下げの概要

 2013年、政府は3回に分けて生活扶助基準を平均6.5%、最大10%削減することを決定しました。
 削減額は年間670億円に上ります。

 削減した理由について、政府はデフレによる物価下落を挙げています。
 しかし、この物価下落の基準が「物価偽装」「不適切な手続き」だとして批判を浴びました。
 くわえて、物価の下落は4.78%であり、6.5%も削減する理由にはなりません。

 生活保護の引き下げについて、全国29都道府県で1000人以上による訴訟が行われています。

 生活保護基準は47もの制度に影響。
 たとえば、「最低賃金」「住民税非課税」「保育料減免」などです。
 これらの制度は、所得が生活保護基準の1.x倍を基準としているからです。

 先日、熊本地裁で生活保護引き下げは違法との判決が出ました。
 2022年現在、いくつもの裁判所で生活保護引き下げ訴訟が行われています。
参照 生活保護費引き下げを違法と判断 取り消す判決 熊本地裁 | NHK

 2013年の生活保護引き下げでも大打撃だったにもかかわらず、2018年の生活保護費見直しでも引き下げが行われました。
 2018年の引き下げは3年で段階的に、年額160億円を引き下げる予定です。

 2013年の引き下げでは「デフレだったから」を理由にしていましたが、2018年は政府見解によれば「デフレではない」はずです。
 引き下げは社会保障費削減の一環でしょう。

 引き下げは特に、子供に関するものが多くあります。
 母子加算は2割削減、児童養育費加算は5000円削減、学習支援費も削減されます。

生活保護と日本の貧困の実態

 生活保護費の引き下げは、他人事ではありません。

 生活保護基準相当の低所得層は、相対的貧困と定義されます。
 相対的貧困は等価可処分所得の中央値の半分、127万円以下の等価可処分所得層です。

 日本の相対的貧困率は15.4%(2018年)とされており、6人に1人が相対的貧困です。
 人数にして1850万人ほどが相対的貧困だと考えられます。

 一方、生活保護受給者は206万人に過ぎません。

 日本の生活保護の捕捉率は15~18%と考えられており、800万人以上が生活保護受給資格があるにもかかわらず、生活保護を受給していない状態です。

 捕捉率から考えると800万人以上、相対的貧困率から考えると1600万人以上が生活保護基準ギリギリの生活をしています。

 行政の手は、日本の貧困にまったく届いていないのが実態です。
 生活保護費は削減するどころか、健康で文化的な最低限の生活のためにもっと支出するべきでしょう。

生活保護引き下げが引き起こすさまざまな問題

 生活保護の引き下げは他人事ではありません。

 第一に、生活保護費の引き下げは、健康で文化的な最低限の生活の引き下げにほかなりません。
 つまり、国民により貧困な生活を強いるのが生活保護の引き下げです。

 第二に、生活保護の引き下げは需要を減少させます。
 生活保護だけでなく、生活保護基準に関わるさまざまな制度に影響を及ぼします。

 政府はデフレで物価が下がったためと説明していますが、物価以上に生活保護費を下げることは許されません。

まとめ

 今回の記事では、熊本の生活保護引き下げ訴訟の判決を受けて、その解説を試みました。
 生活保護引き下げ訴訟は2013年から、10年近くにわたる経緯があります。

 2013年と言えば、生活保護バッシングの翌年です。
 生活保護引き下げは、生活保護バッシングの延長線上で社会保障の削減として行われた可能性は高い。

 生活保護引き下げは国民の生存権を脅かす大問題。
 最後のセーフティーネットを破壊する行為です。

 生活保護引き下げについて、今回の解説で関心を持ってもらえたらと思います。

 

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