ロシアによるウクライナ侵攻、さらにプーチン大統領の核恫喝によって、核武装(核保有~核共有)の議論が盛り上がっています。相手に核兵器を撃たせない、侵攻もさせない、「核抑止」の問題です。また、核兵器を持つことによる国際的存在感の向上、外交力強化の問題でもあります。
「核の傘」の限界
失われた30年、消極財政/緊縮財政で経済停滞する一方、
中国や北朝鮮、ロシアという核保有国との問題を抱える我が国にとって、核武装は切実な問題となっています。
この問題が注目されるのは、アメリカによる「核の傘」の限界が明らかになったからです。
●アメリカは核兵器を持つ国と戦争しない。
●日本が核保有国から攻撃を受けても、アメリカは軍を出さない。
●日本が核攻撃を受けても、自国へ核を撃ち込まれるのが怖いので、アメリカは反撃しない。
そのような疑念がリアリティを持って、人々に共有されています。
昭和40年代(1960年代)以降、我が国は核兵器を持つのをあきらめました。
アメリカが核抑止力「核の傘」を提供すると約束したからです。
そして「非核三原則」(持たず、作らず、持ち込ませず)を掲げて来ました。
しかし、その約束が空手形、不良債権と見なされつつあります。
最善の道、核保有
核抑止力は自前で作って持つのが最善
独立国家であれば、自分で自分を守れる力を持とうとするのが当然です。
自らを護る力と気概があってこそ、一人前。
そうでなければ、他国から軽く見られますし、外交努力もうまくいきません。
核抑止力も自前で作って持つのが最善、最も効果が高くなります。
「「技術先進国の日本なら、3年もあれば核兵器保有は可能」との研究がある」と言われます。
(小川和久「「核武装論」をやめ「非核二原則」を目指せ」『文藝春秋2018年の論点100』)
核兵器を持つことは十分に可能です。
最善の道は最も困難なもの
とはいえ最善の道は最も困難なもの、というのが世の常。
茨だらけの道なき道であります。
次のような問題が立ちはだかります。
●非核三原則
「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」
昭和47年(1972)の佐藤内閣による閣議決定です。
単なる方針なので、原理的には政府が破棄を閣議決定すればいいのですが、岸田首相にその気はありません。
●核拡散防止条約(NPT)
アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国以外の核兵器保有を禁止するもの。
日本も批准してしまっています。オープンに核保有を進めるとなると、NPT脱退が必要でしょう。
●アメリカとの関係
アメリカは日本の核武装を望んでいないと言われます。
「核の傘」を約束したのも、当時の日本に核武装を検討する意志があったからです。
また、日米原子力協定というものがあり、ウランなどの核燃料の扱いについてアメリカの承認が必要となっています。
自前で核保有するには?
「自前で核保有」という最善の方法を取るには、まず非核三原則を撤廃せねばなりません。
同時に、あらかじめ核武装具現化への政治的・技術的道筋を研究しておく必要があります。
さらにタイミングも重要です。
「日本が核武装する方が、アメリカにとっても有益」と判断される状況を待つ、あるいは作り出す。
かつてのトランプ大統領のように、日本の核武装を容認する発言が出た時こそチャンスです。
なお、核保有については意外にも合憲です。
昭和32年(1957)岸信介首相の国会答弁が、政府の公式見解となっています。
「自衛権を裏づけるに必要な最小限度の実力であれば、私はたとえ核兵器と名がつくものであっても持ち得るということを憲法解釈としては持っております」
核共有(ニュークリア・シェアリング)
核共有(ニュークリア・シェアリング)も議論されています。
北大西洋条約機構(NATO)で実施されているもので、日本も加入してはどうかという話。
これについては↓にまとめられています。
ア 共有するのは核ミサイルでなく、航空機から落とす核爆弾
イ 敵国の基地を攻撃するものでなく、自国内に侵入した敵軍に使うもの
ウ アメリカの承認なしに使えない
といった点から、核抑止力となり得ないとの指摘です。
妥当な指摘だと思いますが、以下のことには留意が必要でしょう。
〇陸続きのヨーロッパと違い、日本は海に囲まれている
……領海に侵入した敵の空母などへの核爆弾攻撃が考えられます。陸上での使用が想定されるヨーロッパよりも、「使いやすい」のではないでしょうか。
〇核兵器の「存在」による効果
……「核兵器がある」ということで、敵国に侵攻を思いとどまらせる効果があると考えられます。戦略核ほどの効果はないでしょうが、「ある」と「ない」では大きな違いがあります。
とはいえ、NATOに入るには集団的自衛権の問題があります。ある加盟国が攻撃されたら、他の加盟国も戦わねばなりません。(例えば、ドイツがロシアの攻撃を受けたら、イギリスやフランスもロシアと戦う。)
改憲の必要も取り沙汰されるため、我が国では政治的なハードルが高いと言えます。
アメリカとの核共有など、別の枠組を模索する方がいいのかもしれません。
非核三原則から二原則へ?
「持たず、作らず、持ち込ませず」のうち、「持ち込ませず」を撤廃しようという論があります。
アメリカの核戦力を必要に応じて、日本国内に展開する道です。
前掲書の小川氏によれば、水爆弾頭のミサイルを搭載する戦略爆撃機の即応展開などが現実的とのこと。
ただ、これは現状の「核の傘」の延長に過ぎないものです。
空手形になるかもしれない日米同盟。その問題を解消するものではまったくありません。
もっとも、核兵器を積んだアメリカの原子力潜水艦や空母は、たびたび日本に寄港していると言われます。
日本政府の暗黙の了解のもとに、です。
非核二原則は、すでに実現しているとも言えます。
富国強兵を進め、チャンスをうかがう
核保有、共有いずれにしても実現までの道のりは遠く、年月を要するものと思われます。
そこに向かうためには、以下のことも並行して進めねばなりません。
核兵器の存在を有意義なものにするために必要な事柄です。
〇敵基地攻撃・先制攻撃を可能にすること
〇核シェルターを全国に設置し、国民すべてを守れるようにすること
〇核兵器や原子力発電所の警備もできるよう、自衛隊員を増員、装備も向上
(本来50万人必要なところ、25万人に抑えられている)
法的な問題がからむ部分もありますが、上記の多くは政府がカネを使えば解決に向かうことです。
まずはGDP比2%、防衛費10兆円を実現してほしいもの。
国債発行による積極財政で、他の支出を減らすことなく防衛費を大幅に増やすべきです。
国内関連産業の仕事が増え、自衛隊員の給与も上がれば、景気がよくなり、国民全体が豊かになります。
令和の「富国強兵」を進め、国防・生活両面で国民の安心・安全を実現する。
それと共に、核保有の下準備をし、機会をうかがうのがよいでしょう。
参考資料
『核武装する勇気 真の繁栄のために』石角完爾/著 扶桑社 令和元年
『アメリカの核ガバナンス』菅英輝・初瀬龍平/編著 晃洋書房 平成29年
トップ画像
U.S. Navyderivative work: The High Fin Sperm Whale – Tomahawk_Block_IV_cruise_missile.jpg, パブリック・ドメイン
>イ 敵国の基地を攻撃するものでなく、自国内に侵入した敵軍に使うもの
こちらの1つ前の、自前の記事(『日本へのニュークリアシェアリングは可能?可能じゃない?』――私の考察記事です――)でも少し書かせていただきましたが・・、
ニュークリアシェアリングによる、敵国攻撃は、ドイツのステルス戦闘機購入から見ても、アメリカの了解ありとか、先制攻撃は難しいとかはありそうですけど、一応はできるんじゃないかと思います。(たぶんですけど・・)
ていうかたぶん、現在日本でニュークリアシェアリングについて論じている人の大半の人の、そのソース元は、たぶん、下記の記事じゃないかと思うんですが・・・、
(それ関係の記事のソース元にはたいてい下記記事があった気がします。別のものはわたしはわかりません)
↓ ↓ ↓
核兵器シェアリングへの誤解と幻想
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181220-00107827
↓
しかし、どうにも上記記事の筆者の書き方がどこか中途半端なのと、ここにきてのドイツのステルス戦闘機購入によるアメリカとのニュークリアシェアリング強化で、正直、この問題をどう見れば良いのか判断が付きづらくなりました。
(私自身も、ヤンさんの記事に最初にコメントした段階ではまだ、日本へのニュークリアシェアリングは無理と思っていたくらいです)
(あらためて上記ソース記事を読んで、どこか違和感を感じた結果が前回記事です)
ですんで個人的には、もっと多くの専門家の意見が出そうろうまでは、日本におけるニュークリアシェアリング完全否定は若干まだ、時期尚早じゃないかとは思います・・。
.
ここからはさらに、ニュークリアシェアリングが多少つかいものになるという仮定における話ではありますが・・・、
私個人は、核兵器保有よりかは現状では、ニュークリアシェアリングの方がいいんじゃないかと思っています。
それは、核兵器の大量拡散の防止です。
おそらく日本が核保有国になれば、隣の韓国も、フィリピンもベトナムも、その他、世界中の多くの国が自前での核兵器保有を望むでしょう。(あいつが持つなら俺も持つ、のドミノ連鎖が起こる可能性があります)
先進国でさえ、その保有を持てあますというのに、それ以外の、言い方は悪いですが中小国が持つというのは核戦争のリスクの大幅増を招きかねないと思います。
.
しかし、ニュークリアシェアリングなら、隣の韓国も自前で核兵器を開発しようとは思わないでしょう。(場合によっては韓国もニュークリアシェアリングの導入に走るかもしれませんが)
(まあただ、これはニュークリアシェアリングが多少は日本の役にたつという前提の元、話しているということではありますが・・)
.
もちろん、一番良いのはバケツリレーさんも言われているように、自前による核兵器保有です。
しかし、これは上記でも書きましたように、核の大量拡散の可能性もはらみます。
核兵器を自国保有する場合は、よっぽどその時の国際情勢やらなんやらを注視して、慎重に実行する必要性が出てくると思います。
>イ 敵国の基地を攻撃するものでなく、自国内に侵入した敵軍に使うもの
こちらの1つ前の、自前の記事(『日本へのニュークリアシェアリングは可能?可能じゃない?』――私の考察記事です――)でも少し書かせていただきましたが・・、
ニュークリアシェアリングによる、敵国攻撃は、ドイツのステルス戦闘機購入から見ても、アメリカの了解ありとか、先制攻撃は難しいとかはありそうですけど、一応はできるんじゃないかと思います。(たぶんですけど・・)
ていうかたぶん、現在日本でニュークリアシェアリングについて論じている人の大半の人の、そのソース元は、たぶん、下記の記事じゃないかと思うんですが・・・、
(それ関係の記事のソース元にはたいてい下記記事があった気がします。別のものはわたしはわかりません)
↓ ↓ ↓
核兵器シェアリングへの誤解と幻想
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181220-00107827
↓
しかし、どうにも上記記事の筆者の書き方がどこか中途半端なのと、ここにきてのドイツのステルス戦闘機購入によるアメリカとのニュークリアシェアリング強化で、正直、この問題をどう見れば良いのか判断が付きづらくなりました。
(私自身も、ヤンさんの記事に最初にコメントした段階ではまだ、日本へのニュークリアシェアリングは無理と思っていたくらいです)
(あらためて上記ソース記事を読んで、どこか違和感を感じた結果が前回記事です)
ですんで個人的には、もっと多くの専門家の意見が出そうろうまでは、日本におけるニュークリアシェアリング完全否定は若干まだ、時期尚早じゃないかとは思います・・。
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ここからはさらに、ニュークリアシェアリングが多少つかいものになるという仮定における話ではありますが・・・、
私個人は、核兵器保有よりかは現状では、ニュークリアシェアリングの方がいいんじゃないかと思っています。
それは、核兵器の大量拡散の防止です。
おそらく日本が核保有国になれば、隣の韓国も、フィリピンもベトナムも、その他、世界中の多くの国が自前での核兵器保有を望むでしょう。(あいつが持つなら俺も持つ、のドミノ連鎖が起こる可能性があります)
先進国でさえ、その保有を持てあますというのに、それ以外の、言い方は悪いですが中小国が持つというのは核戦争のリスクの大幅増を招きかねないと思います。
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しかし、ニュークリアシェアリングなら、隣の韓国も自前で核兵器を開発しようとは思わないでしょう。(場合によっては韓国もニュークリアシェアリングの導入に走るかもしれませんが)
(まあただ、これはニュークリアシェアリングが多少は日本の役にたつという前提の元、話しているということではありますが・・)
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もちろん、一番良いのはバケツリレーさんも言われているように、自前による核兵器保有です。
しかし、これは上記でも書きましたように、核の大量拡散の可能性もはらみます。
核兵器を自国保有する場合は、よっぽどその時の国際情勢やらなんやらを注視して、慎重に実行する必要性が出てくると思います。
>イ 敵国の基地を攻撃するものでなく、自国内に侵入した敵軍に使うもの
こちらの1つ前の、自前の記事(『日本へのニュークリアシェアリングは可能?可能じゃない?』――私の考察記事です――)でも少し書かせていただきましたが・・、
ニュークリアシェアリングによる、敵国攻撃は、ドイツのステルス戦闘機購入から見ても、アメリカの了解ありとか、先制攻撃は難しいとかはありそうですけど、一応はできるんじゃないかと思います。(たぶんですけど・・)
ていうかたぶん、現在日本でニュークリアシェアリングについて論じている人の大半の人の、そのソース元は、たぶん、下記の記事じゃないかと思うんですが・・・、
(それ関係の記事のソース元にはたいてい下記記事があった気がします。別のものはわたしはわかりません)
↓ ↓ ↓
核兵器シェアリングへの誤解と幻想
核兵器シェアリングへの誤解と幻想(JSF) – 個人 – Yahoo!ニュース
↓
しかし、どうにも上記記事の筆者の書き方がどこか中途半端なのと、ここにきてのドイツのステルス戦闘機購入によるアメリカとのニュークリアシェアリング強化で、正直、この問題をどう見れば良いのか判断が付きづらくなりました。
(私自身も、ヤンさんの記事に最初にコメントした段階ではまだ、日本へのニュークリアシェアリングは無理と思っていたくらいです)
(あらためて上記ソース記事を読んで、どこか違和感を感じた結果が前回記事です)
ですんで個人的には、もっと多くの専門家の意見が出そうろうまでは、日本におけるニュークリアシェアリング完全否定は若干まだ、時期尚早じゃないかとは思います・・。
.
ここからはさらに、ニュークリアシェアリングが多少つかいものになるという仮定における話ではありますが・・・、
私個人は、核兵器保有よりかは現状では、ニュークリアシェアリングの方がいいんじゃないかと思っています。
それは、核兵器の大量拡散の防止です。
おそらく日本が核保有国になれば、隣の韓国も、フィリピンもベトナムも、その他、世界中の多くの国が自前での核兵器保有を望むでしょう。(あいつが持つなら俺も持つ、のドミノ連鎖が起こる可能性があります)
先進国でさえ、その保有を持てあますというのに、それ以外の、言い方は悪いですが中小国が持つというのは核戦争のリスクの大幅増を招きかねないと思います。
.
しかし、ニュークリアシェアリングなら、隣の韓国も自前で核兵器を開発しようとは思わないでしょう。(場合によっては韓国もニュークリアシェアリングの導入に走るかもしれませんが)
(まあただ、これはニュークリアシェアリングが多少は日本の役にたつという前提の元、話しているということではありますが・・)
.
もちろん、一番良いのはバケツリレーさんも言われているように、自前による核兵器保有です。
しかし、これは上記でも書きましたように、核の大量拡散の可能性もはらみます。
核兵器を自国保有する場合は、よっぽどその時の国際情勢やらなんやらを注視して、慎重に実行する必要性が出てくると思います。
コメントありがとうございます。
シェアリングの場合、国内に核兵器(爆弾)が存在すること自体がキモです。
いざという時にはアメリカの意向を無視して強奪する、という選択肢もあり得ます。
あり得る、と他国が考える時点で、それが影響力を持つことになります。
核兵器というのは政治的にたいへん便利な道具。しかしおっしゃるとおり、誰も彼もが持つようになると困ったことになります。核保有をする場合は、他の未保有国には持たせないようにする戦略も必要でしょうね。この辺はアメリカを見習うべきかも、です。
退潮するアメリカ、横暴な中露に代わり、核武装した日本が世界の秩序を守る。
それくらいの気概があってしかるべきだと思います。
>「持たず、作らず、持ち込ませず」のうち、「持ち込ませず」を撤廃しようという論
撤廃だとショックが大きいでしょうし、「持たず、作らず、打ち込ませず」で閣議決定すれば、「ダジャレかよwww」「三度(みたび)許すまじ原爆を」って雰囲気になり、核アレルギーの国民も許してくれると思います(笑)。
ほかには材料だけ用意しておいて、核攻撃を受けた際は48時間以内に日本国内で組み立て、ミサイルに載せて反撃できるよう訓練だけしておいて、その錬度と技術力を日頃から誇示すれば格好いいだとか、国際政治の場でプレイヤーになれないストレスから、ついそんなこと「デアゴスティーニ作戦」を妄想してしまいます。。。
二原則より新三原則っていいですね! こういうのはやっぱりリズム、語感が大事ですし、核アレルギーにも効きそうです(^^)
各基地で、組立練度選手権とか毎年やってほしいです! 航空祭みたいに、やって当然の年中行事にするとか~