大変お世話になっております。
反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2021年12月30日(令和3年12月30日)
本日はバイデン政権の積極財政によってアメリカ経済はどのような状況になったのかという点をまとめてみた記事になります。
今年最後の記事となりますので、ご査収ください。
湾港の受け入れ能力を大幅に超過する荷物の移動が発生か
原因は港の混雑で輸入が滞っていることだ。
引用元:米クリスマス商戦、綱渡り コンテナ船の滞留3倍
米国の輸入コンテナの約4割が通過するカリフォルニア州ロサンゼルス・ロングビーチ港では船が沖合に停滞する光景が夏ごろから続く。
消費の急回復に受け入れ能力が追いつかない。
(中略)
米政府は対策の一環で港を24時間営業にすることを打ち出した。
ただクレーンを動かす人手の不足や、コンテナを運ぶシャーシ(荷台)が足りないなど課題は多く、24時間のフル稼働は難しい状況だ。
アメリカでは物流が問題となっており、物価を押し上げているのですが、湾港が荷物で混雑しているのだそうです。
今年の春先と比べるとコンテナ数が約3倍になっています。
あまりにもコンテナが大量に湾港に届くため、受け入れ能力を超過しているとのこと。
クリスマスシーズンでアメリカ国民は爆買いをするため、その時期に間に合わせようと必死になっていたようですが、商品が届かないという事態になれば、消費と景気回復に暗い影を落とすことになりかねません。
荷物の内容としては、家具、玩具、電子機器などであり、リモートワークや在宅作業のためにアメリカ国民が購入したということなのでしょう。
私もデスクトップパソコン用の机を購入しましたし、任天堂スイッチや家庭用ゲーム機などを暇つぶしに購入した方も多いのではないでしょうか。
課題は物量だけでなくコストにもある。
引用元:米クリスマス商戦、綱渡り コンテナ船の滞留3倍
香港フレイトスによると中国発米西海岸行きコンテナ船の海上運賃はコロナ前の10倍以上に高騰している。
小売価格への転嫁が売り上げに響く懸念もある。
中国発アメリカ西海岸行のコンテナ船の海上運賃は新型コロナウイルスの感染拡大前の10倍以上という破格の費用増大が発生しているようです。
これはさすがに価格を引き上げないとと利益が吹っ飛ぶこと間違いありません。
クリスマスシーズンを乗り越えれば、海上運賃は下落すると思いますが、油断はできませんね。
湾港の受け入れ能力を拡大することで、このような事態から脱却しようともがいているようですが、特効薬的な対策はございません。
地道な努力を積み重ねて、供給制約や物流問題を解決するしかないと言えます。
また、このような要因で物価上昇が発生しているので、政策金利の引き上げや金融引締めなどが有効な対策とは思えません。
薬価が高騰しているのなら、薬価を引き下げる政策を。
物流問題や半導体不足なら、物流を強化して、半導体生産のための設備投資を後押しする政策が必要なのです。
ステファニー・ケルトン教授の主張が身に染みて理解できている今日この頃です。
アメリカの消費者物価指数を分析すると新たな側面が見えてきた
アメリカの物価上昇がどのような水準なのかを理解するため、消費者物価指数(総合)と消費者物価指数(食料品やエネルギーを除く)を分析しました。
前者をCPI、後者をコアCPIと呼称します。
※CPIを確認する場合はこちら
※コアCPIを確認する場合はこちら
初めて進撃の庶民にお越しになられた読者様のためにも、今一度復習させていただくと、アメリカの消費者物価指数は2つございまして、消費者物価指数(CPI)とコア消費者物価指数(CPI)がございます。
CPIは簡単に言えば、消費者が物やサービスを購入する際の価格の総合指数のことです。
企業間の取引の価格の総合指数とはまた別です。
コアCPIは、食料品やエネルギーを除いた商品とサービスの価格変動を測定する指標であり、景気の影響以外の要因で価格変動しやすい食料品やエネルギーを除いているので、費用増大型物価上昇( コストプッシュ・インフレ )以外の要因で物価上昇していると判断する材料となっています。
我が国日本のCPIとコアCPIとコアコアCPIとは用語が同じでも意味が違うので留意していただければ幸いに存じます。
さて、本題に戻りましょう。
アメリカの2021年11月の消費者物価指数(CPI)は対前年同月比6.8%です。
また、アメリカの2021年11月のコアCPIは対前年同月比4.9%です。
2021年9月のCPIとコアCPIの差は1.4%、同年10月は1.6%、同年11月は1.9%であり、 注目するべきはCPIとコアCPIの差が広がっているということです。
アメリカの物価上昇は、費用増大型物価上昇という側面がございます。
ここに、半導体不足や物流問題なども加わり、アメリカの物価上昇は形成されていると思われます。
費用増大型物価上昇(コストプッシュインフレ)と供給低下型物価上昇(サプライダウン・インフレ)が緩やかに同時発生しているのではないかと推察します。
半導体不足や物流問題であれば、設備投資を促進すれば半導体生産が増えますし、物流問題も解消する方向に向かうと思うので、数年後には解消するでしょう。
アメリカ国民の消費マインドが冷え込んでいる
米ミシガン大学が12日発表した11月の消費者態度指数(速報値)は66.8で前月から4.9ポイント低下し、2011年11月以来10年ぶりの低水準に落ち込んだ。
引用元:11月の米消費者態度指数、10年ぶり低水準に 物価上昇で
緩和の兆しがみえない物価上昇が消費者景況感を押し下げた。
アメリカのGDPの約7割は民間最終消費支出でございますから、アメリカ国民の消費意欲は我が国日本のそれを上回っております。
そのアメリカ国民の消費マインドが冷え込んでおり、物価上昇に嫌気が差している様子が伺えます。
消費者態度指数が2011年11月以来の低水準とは驚きです。
物流問題によって輸送費が増えてしまい、半導体生産が滞り生産費用が増え、自動車や一般消費財などの価格が上昇しているわけですから、消費マインドが冷え込んだようです。
継続的な物価上昇は消費意欲の減退を招き、低所得者層の購買難で相対的貧困の深刻化を招きます。
失業手当や給付金で賃金爆上げ
労働供給が増えない要因として、保育や退職、新型コロナウイルスの感染リスクをあげた。
引用元:米経済「供給制約が成長の足かせ」 地区連銀報告
雇用市場の逼迫で、ほぼ全地区が「強い賃金上昇」を報告した。
セントルイス連銀地区では、ピザ店が時給15~20ドル(約1700~2300円)の宅配スタッフの求人広告を出したり、輸送会社が夜間スタッフの時給を13ドルから21ドルに引き上げたりする例があった。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の地区連銀経済報告(ベージュブック)で景気回復していること、インフレが進行していること、民間企業の労働需要が旺盛であるということが記載されているようです。
アメリカ経済はいわゆる供給制約に陥っているとの指摘がございますが、労働市場の需給が崩れ、採用難が継続しているようです。
上記引用元にて労働供給が増えない要因として、保育、退職、新型コロナウイルスの感染リスクが挙げられておりますが、バイデン政権やトランプ前政権の失業給付が十分に支給されたため、労働しなくても何とかなっているご家庭もあるのではないかと。
給付金の影響を軽視(無視?)しているというのはかなり違和感がございますね。
失業手当ではなく、ベーシックインカムであれば、労働しているか失業しているかに関係無くお金が振り込まれますので、ここまで労働供給が増えないという事態にはならなかったと推察します。
アメリカではピザ(日本人が想像するサイズよりも大きめで分厚い)が人気でございますから、宅配スタッフが必要なのですが、時給が15ドルから20ドル(約1700~2300円)というのは物価水準を考えても素晴らしいです。
政策金利の引き上げや量的緩和の段階的縮小はインフレ対策にならない
米連邦準備理事会(FRB)は15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国債などの資産を購入する量的緩和縮小(テーパリング)の加速を決めた。
引用元:米22年に3回利上げへ FRB、緩和縮小終了の前倒し決定
終了時期の想定を2022年6月から同3月へ前倒しし、22年中に計3回の政策金利の引き上げを見込む。
インフレが長引き、1カ月前に始めたばかりの緩和縮小を速める異例の軌道修正を迫られた。
私が懸念しているのは、物価上昇を抑制するための手段として、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利の引き上げや量的緩和の段階的縮小に対する期待感が大きいということです。
そもそもアメリカの政策金利とはFF金利のことでございまして、要するにFRBが民間金融機関間の準備預金(日本における日銀当座預金のようなもの)の貸し借りの短期的な利子率を引き上げるということでございます。
量的緩和の段階的縮小とは、民間金融機関から国債などを買い上げて、民間金融機関の準備預金を増やすということを段階的に止めることです。
我々の保有している銀行預金とは別物の準備預金が増減しても、準備預金の利子率が増減しても我々の預金は変動しません。
それでインフレ対策になりますでしょうか。
それで資源価格や食料品価格が下落するのでしょうか。
それで物流の混乱が抑制され、個人消費が冷え込みますか。
半導体不足が解消されるのでしょうか。
政策金利の引き上げや量的緩和の段階的縮小によって引き起こされるのは、株式投資家や債券投資家などの心理状態の悪化だけです。
民間金融機関の準備預金という数字が変動するだけでは、現実世界に影響は与えられません。
法人税増税と設備投資減税で生産性向上を地道に行うしか方法がない
物価上昇を抑制するためには、法人税増税などを行い、同時に設備投資減税も実施することで、生産性向上を行う企業には減税を、生産性向上をしない企業に対しては増税を行うことで、生産性向上を図るという地道な努力を継続する他はありません。
物価上昇抑制に特効薬は無く、泥臭い生産性向上をやるのかやらないのか、それだけです。
ある意味、健全な資本主義に回帰しているのがアメリカ経済のようです。
以上です。