イングランド銀行が認める正しい信用創造とは?わかりやすく解説

この記事は約6分で読めます。

「信用創造は聞いたことがあるけど、仕組みがいまいちわからない」
「いまさら、信用創造が何か聞けない」
「信用創造を詳しく知りたい」

 上記のような人は多いと思います。

 信用創造とは「お金を生み出すこと」であり、どうやってお金が生み出されているか知らなければ経済は語れません。
 信用創造さえわかれば、経済の5割は理解したと言っても過言ではありません。

 今回の記事では、できるだけわかりやすく信用創造を解説します。

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信用創造とは?

 信用創造とは、お金が生み出される仕組みのことです。

 こう聞くと、「いやいや、お金は働くことによって生み出されるのでは?」と反論する人もいるかもしれません。
 しかし、労働でお金を稼ぐことはできても、生み出すことはできません。

 世の中にお金を生み出す仕組みである信用創造は、主に銀行がその役割を担っています。

間違っていた通説

 信用創造は長年、間違った通説が流布していました。
 このような間違った通説は「又貸し説」と呼ばれており、教科書にも掲載されています。

 又貸し信用創造は以下のプロセスを繰り返します。

  1. 本源的預金が銀行に存在する
  2. 本源的預金を貸し出しす
  3. 貸し出された人がそのお金を使う
  4. 使われたお金が誰かに渡り、銀行に預金される
  5. 預金されたお金を銀行が他の人に貸し出す
  6. 3.~5.のプロセスを繰り返し、お金が増殖する

 又貸し説では、貸し出すときには支払準備金を除いた金額が貸し出せるとされています。
 現金での貸し出しに備えるのが支払準備金なので、又貸し説では現金で貸し出すことを前提としています。

 又貸し説の間違いは主に3つです。

  1. 銀行の実務を反映していない
  2. 返済が考慮されていない
  3. 本源的預金など存在しない

 まず、「銀行の実務を反映していない」ですが、又貸し説では現金で貸し出ししています。しかし、実際の貸し出しでは銀行が通帳に記帳するだけです。

 返済が考慮されていない点も問題です。
 銀行がAさんに貸し出し、それを預金して次はBさんに貸し出し、その次はCさんに貸し出し……。
 とすると、Cさんが返済しない限り、Bさんは返済ができないはずです。

 さらに、じつは本源的預金など存在しません。
 なぜなら、「誰かの資産=誰かの負債」の原則があるからです。
 誰の負債にもなっていない本源的預金は理屈上、存在するはずがありません。

主流派経済学の過ち

 長年、流布してきた又貸し説は主流派経済学が採用していた信用創造モデルです。
 そのため、経済学の教科書にも掲載されてきました。

 しかし、近年、又貸し説の矛盾や間違いが指摘されはじめました。
 たとえば、英語版のWikipediaが又貸し説から正しい信用創造に書き換わり、その数年後に日本語Wikipediaでも同じ現象が起きました。

正しい信用創造のわかりやすい仕組み

 正しい信用創造の仕組みは驚くほど簡単です。

  1. 銀行がAさんに100万円貸し出すと、100万円のが生み出される
  2. Aさんが100万円を返済すると、100万円が消滅する

 これだけです。

 もう少し詳しく説明しましょう。

 銀行がAさんに100万円貸し出すと、その時点で「Aさんに100万円の借用書(負債)と100万円の預金(資産)」ができます。
 銀行では逆に「100万円の預金(負債)と100万円の借用書(資産)」が生まれます。

 銀行にとって預金とは負債であることに注意が必要です。

 このように、誰かが銀行から借金するとその分のお金が生み出されます。
 これが信用創造です。

 逆に、Aさんが銀行に100万円を返済すると、100万円というお金が消滅します。

黒田日銀総裁・イングランド銀行の証言

 貸し出しを行うと預金が創造される。
 それが、信用創造です。

 経済学者たちは間違えてきましたが、銀行の専門家たちは認めるところです。

Money creation in practice differs from some popular misconceptions — banks do not act simply as intermediaries, lending out deposits that savers place with them, and nor do they ‘multiply up’ central bank money to create new loans and deposits.

実際のお金の創造は、一般的な誤解とは異なります。銀行は単なる仲介者として、預金者から預かった預金を貸し出すだけではなく、中央銀行のお金を「増殖」させて新たな融資や預金を生み出すわけでもありません

Money creation in the modern economy(イングランド銀行)

The article begins by outlining two common misconceptions about money creation, and explaining how, in the modern economy, money is largely created by commercial banks making loans.

この記事ではまず、お金の生成に関するよくある2つの誤解を説明し、現代経済においてお金は主に商業銀行が融資を行うことで生成されていることを説明しています。

Money creation in the modern economy(イングランド銀行)

 イングランド銀行ではこのように、融資によってお金が作られる(信用創造)ことを説明しています。

二〇一九年四月四日の参議院決算委員会にて、日本銀行の黒田総裁は、「銀行は信用創造で十億でも百億でもお金を創り出せる。借入が増えれば貸付としての預金が増える。これが現実。どうですか、日銀総裁」と問われ、「銀行が与信行動をすることで預金が生まれることはご指摘の通りです。」と認めた。

MMT(現代貨幣理論)に関する質問主意書

民間と国家の信用創造

 民間の信用創造は民間銀行×企業や民間銀行×個人で行われます。
 企業や個人が銀行に融資を依頼し、銀行が貸し出すことで預金が創造されます。

 基本的に、国家と銀行であっても構図は同じです。
 日本政府が国債(借用書)を発行し、それを民間銀行が引き受けることで預金が創造されます。
 もっとも、国家の場合はもう少しややこしい手順がありますが割愛します。

 ここで強調しておきたいのは、民間も政府も「借り入れることで預金が創造される」という事実です。

 「誰かの資産=誰かの負債」は絶対的な原則です。
 これは、誰かが借金しないと資産(お金)が生まれず、経済が営めないことを示しています。

 したがって、日本政府の国債発行はイコールでお金を生み出す行為と同義です。
 このことを覚えておくとインフレやデフレ、バブルといった経済現象の理解が容易になります。

まとめ

 信用創造の定義とは「お金を生み出すこと」です。
 そして、信用創造の仕組みは「銀行からの借金がお金を生み出す」でした。

 しかし、長年、経済学者たちは信用創造について間違ってきました。
 預金を又貸しすることによってお金が増殖すると勘違いしていたのです。

 お金とは経済の基本の「き」です。
 お金のことがわからないのに、経済のことがわかるはずがありません。

 正しい信用創造を理解すれば、経済がより深くわかるはずです。

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