コロナ禍のインバウンドの脆弱性と日本人が国内旅行できる国作り

この記事は約6分で読めます。

 先日、ふとTwitterに投稿しました。

インバウンド頼りがなぜ問題か?

①日本はそもそも内需立国で内需8割
②外需は国際情勢などによって大きく左右される
③外需の決定に日本は主権を持たない
④よって、外需頼りは経済安全保障上、重大な問題がある
⑤日本国民が国内旅行を楽しめる国作りこそ必要

コロナ禍で脆弱性が露わになりました

 大きな反響がありましたので、記事で詳細に考えたいと思います。

 先に結論を書きます。インバウンドは確かに実績を残しましたが、コロナ禍でその脆弱性が明らかになりました。
 インバウンドと日本人観光客の人数・規模・消費額を比べると、日本人観光客にも大きなポンテンシャルがあります
 日本人が国内旅行を楽しめる国作りこそが必要です。

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インバウンドとは

 2012年あたりからインバウンドがもてはやされています。インバウンドとは「inbound」と書き、日本語に翻訳すると「本国行きの」という意味です。
 日本国内では一般的に、インバウンドは外国人観光客を指します。

 インバウンドは2012年あたりからアベノミクスで使われ始めた用語です。成長戦略の一端として、もしくは、地方創生の一部としてインバウンド政策が実施されました。

 インバウンドとは端的に言えば観光立国です。

 観光によって外国人観光客を呼び込み、日本国内で消費してもらうことで需要を増やす。これがインバウンドの狙いでした。
 斜に構えて言えば、インバウンドとは外国人の財布を当てにした需要創出です。
 くわえて、日本の文化資源の活用も掲げられました。

インバウンドが残した実績

 インバウンドはかけ声だけでは終わりませんでした。実際に大きな実績を残しています。

 2012年の外国人観光客は836万人です。年々、増加していき2019年には3188万人になりました。
 2019年の延べ宿泊者数は4309万人に上り、外国人の旅行消費額は4兆8000億円でした。

 2015年度の実績が1974万人の外国人観光客と3.5兆円の消費額でしたから、わずか4年間でインバウンドは大きく実績を残しました。

 一方、4兆8000億円はGDPに対してどの程度のインパクトでしょうか?
 2019年のGDPは561兆円です。4兆8000億円はGDPの約0.85%です。

 「観光立国!」「インバウンドで成長戦略!」などと叫んでみても、じつはゼロコンマ数%の積み上げがせいぜいなのです。
 しかし、観光業界が2012年からのインバウンド需要に沸き、インバウンドを当てにしたのも確かです。

 インバウンドの実績は確かにありました。
 しかし、コロナ禍でインバウンドの脆弱性も露わになりました。

コロナ禍で脆弱性が露わになったインバウンド

 インバウンドなどの外需に頼ると、コロナ禍などの非常時に脆弱性がより露わになります。
 外需の決定権、主権は日本にありません。
 アフターコロナで外需が回復するかどうかもわかりません。

 外需に頼るといざというときに自分で決定できないので、経済安全保障上の大きな問題となります。

 2020年の外国人観光客は年間わずか411万人でした。しかも前半に集中しており、12月はわずか5.9万人です。
 12月ペースなら年間に70万人程度まで落ち込んだ計算になります。

 外需に頼ったインバウンドは、コロナ禍で脆弱性を露わにしました。たとえば、仮に中国が国策で日本への渡航を禁止すればそれだけでインバンドは大きな打撃を受けるでしょう。
 このように、外需頼りは相手国の国策によって環境が大きく変化します。

 とりもなおさず、相手国の機嫌を「損なえない」のがインバウンド頼み、外需頼みです。だからこそ、経済安全保障上の大きな問題になります。

日本人観光客のポンテンシャル

 外国人観光客に頼らなくても、アフターコロナで日本人観光客が増えればどうでしょうか。
 それとも、日本人観光客は頼れないほど規模が小さいのでしょうか?

 日本人観光客(国内旅行のみ)の2019年の消費額は21兆9000億円です。インバウンドが同年4兆8000億円でしたので、約4倍の規模があります。
 日本国内の延べ旅行者数は5億8666万人で、インバウンドの3188万人の20倍近くです。

 なるほど、日本人観光客は1人あたりの単価が低めで、宿泊旅行でも5万5000円です。インバウンドは単価が15万8000円ですから、3倍近い差があります
 商売としてインバウンドを優先する判断は合理的でした。

 「合理的でした」と過去形なのは、そのときに合理的な判断が必ずしも長期的に正解とは限らないからです。

 とにかく、日本人の国内旅行はインバウンドに比して、規模にして4倍、人数にして20倍の差があります。

 この数字の前提となる経済ですが、日本は1997年からゼロ成長です。
 平均所得は1997年の467万円から、2019年の436万円に下落しています。

 とすれば、日本が経済成長すればインバウンドの穴埋めは十分に可能でしょう

日本人が国内旅行を利用できる国作り

 アベノミクスで日本は2012年からインバウンドを重視してきました。「インバウンドで日本文化を知ってもらう!」「インバウンドで地方創生!」「インバウンドで成長戦略!」と大声でスローガンを叫んできました。

 観光立国も大いに結構です。しかし、その前にまず、日本人が国内旅行を楽しめる国作りが必要です。

 日本が1997年からゼロ成長に陥ったのは、ありもしない財政問題を問題視して積極財政をしてこなかったからです。そのうち、緊縮財政はドグマになりました。
 「緊縮財政しかない」との前提条件で各種政策が考えられたのです。

 「緊縮財政しかない」「財政出動はできない」という前提条件のもと、どうにかして需要を増やせないかと考えられたのがインバウンドでした。
 自分たちで財政出動できないなら、外国人観光客の財布を当てにしようというわけ。

 つまり、緊縮財政という間違った前提条件の上にインバウンドがあるのです。
 緊縮財政という間違った前提条件を無視するならインバウンドは必要ありません。インバウンド頼りはむしろ脆弱性を高めます。

 日本人が国内旅行を楽しめる国作りこそが必要です。それには積極財政が不可欠です。

まとめ

 今回の稿ではインバウンド関連の数字と、日本人観光客関連の数字をまとめたくて書きました。インバウンドが大きくもてはやされていましたが、日本人観光客の規模だってたいしたものです。

 消費額で4倍、人数にして20倍近い規模があるのですから。

 インバウンドばかり取り上げられ、日本人観光客に注目されてきませんでした。しかし、規模を比べても日本人観光客に注力した方が得なのは明らかです。
 外国人観光客が勝っているのは単価だけです。

 日本人が国内旅行を楽しめる国作りをすれば、きっと国内観光業も盛り返すことだろうと思います。
 なお、それはアフターコロナのお話。
 コロナ禍の現在は政府の補償が必要なのは言うまでもありません。

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