入管法改正を考える|「補完的保護」「監理措置」とは?

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入管法改正が国会で審議中です。野党はスリランカ女性の死亡事案/人権問題をタテに廃案に追い込もうとしていますが、実際の法案の中身はどんなものでしょうか? 評価すべき点もありますが、新設される「補完的保護」「監理措置」といった制度には心配なところもあるようです。

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入管法改正のポイント

入管法、すなわち「出入国管理及び難民認定法」の改正が国会で審議されています。

入管法改正というと、これまで外国人労働者に門戸を開く方向で重ねられてきました。
3年前の改正(施行は2年前)では単純労働も可能となり、実質上の「移民法」として問題視されたところです。



今回もさらに移民を増やすのか!と思いきや、そういう改正ではない模様。

出入国在留管理庁のホームページによれば、改正のポイントは3つ。

外国人あるいは難民について

1 在留を認めるべき者を適切に判別

2 在留が認められない者を迅速に送還

3 長期収容の解消・適正な処遇の実施

参考:出入国在留管理庁「そこが知りたい!入管法改正案」

不法残留者8万人がもたらす問題

以前の法改正で日本に在留する外国人が増えたため、当然、在留期間オーバーの不法残留者も増加。
その数およそ8万人。(令和2年7月1日時点)

さらに、摘発されても国外退去を拒否する「送還忌避者」が3000人余りにのぼっているそうです。(令和2年12月末時点)

かねてより指摘されていたことですが、安い賃金で使える外国からの「労働力」を増やしたことで、企業経営者や投資家は人件費を抑えて利益を確保。その一方で、異文化の「外国人」を受け入れるコスト(言語の壁、習慣や規範意識の違いによる負担)は現場や地域に押しつけられています。

そして、最終的なコスト/問題が集積するのが「収容施設」です。

問題1:送還が停止される難民認定申請を繰り返し、国外退去を拒否し続ける者がいる(重犯罪者含む)

問題2:6か月以上の長期収容者が増加し、ハンガーストライキしてまで仮放免を求める者がいる一方、仮放免後に逃亡する者も多い。(約420人が逃亡して手配中。仮放免を受けた者の約15%)

法務省入国管理局「退去強制業務について」

これらの問題が限界に達しているということでしょう。入管の負担の大きさは想像に難くありません。

4つの解決策

この度の法改正が検討されている解決策は主に以下のようなものです。

ア 難民認定申請は2回まで。ただし重犯罪者は速やかに国外退去させる。

イ 国外退去を命令でき、応じなければ処罰する制度を設ける。

ウ 難民に準じて保護すべき外国人を「補完的保護対象者」として在留を認める手続きを設ける。

エ 監理措置制度を設け、対象の外国人について逃亡等を防止しつつ、相当期間の社会生活を認めるようにする。

参考:日経新聞「難民申請回数を制限 入管法改正案を決定 長期収容解消狙う」令和3年2月19日

アとイは妥当なところで、むしろ今までなかったの?!と思いますが、
心配なのはウとエです。

補完的保護対象者

まずはウの「補完的保護対象者」。
難民条約の定義に合うわけではないが、それに近いものとして保護、受け入れるべき外国人です。

現在、難民認定手続きは難民条約の定義に基づいて二段階審査で慎重に行われていますが、「補完的保護対象者」の認定はどうでしょうか。

改正法案をざっと見たところ、難民認定と同じ手続きコースに乗るようです。

参考:出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律

我が国の難民認定の厳しさについては、立憲民主党や地球市民的リベラル派が、個別の同情すべき事例を持ち出して批判しています。

しかし虚偽による難民を認めるわけにはいきませんし、不法在留はあくまで不法です。

「かわいそうだから」「泣いているから」と安易に緩和することは、安定した秩序、社会を破壊する元となります。

1枚の「かわいそうな写真」に衝撃を受けて大量の難民を受け入れた、ドイツなどヨーロッパの混乱・悲惨を見れば、その危険は明らかでしょう。

「補完的保護対象者」についても難民同様、慎重かつ厳格に審査されるべきだと思います。


監理措置制度

監理措置とは

続いてエの「監理措置制度」。

こちらは国外退去対象の外国人について、収容するか仮放免するかであった制度を変えるものです。

仮放免を「人道上、または健康上の理由」に限ることで減らし、収容対象もまた減らします。その分を「監理措置」でまかなおうというわけですね。

では「監理措置」とは何かというと……

逃亡の恐れが低い不法残留外国人については、身柄を拘束せず、社会生活をしてもらう。
ただし、「監理人」が彼らの生活状況などを把握し、定期的に入管に報告する。

というものです。「監理人」としては、弁護士やNPO、雇用主などが想定されているようですね。

公の役割の民間丸投げ

確かに収容者数は減って、入管の現場負担も減るでしょうが……

これってまさに、「小さな政府」路線、公の役割の民間丸投げではないでしょうか。

不法残留者の増加、収容者数の増加で困っているのですから、入管の組織と施設の増強、充実を図るのが本来のはず。

ところが政府はカネを使いたくない。公務員も増やしたくない。増やしてよいという空気がない。

しょうがないから、民間の眼で監視してもらいつつ、不法残留者は外で生活させようというわけです。

今回の改正法案には記載ありませんが、そのうち「監理人への報酬」制度が設けられ、それで稼ぐビジネスモデルができるのではないかとも危惧します。

監理措置対象者の生活は自腹?

また、この監理措置対象者の生活は自腹だそうです。(従前の仮放免もですが)
懐具合が豊かな不法残留者はごく一部でしょうから、ほとんどが生活に困ることになります。
具合が悪くなっても病院代がない、保険も効きません。

金銭面でも、NPOなど民間支援団体に頼ることになってしまいます。何とも情けない状態です。

大抵の不法残留者は、安い労働力として我が国が呼びこんでしまった人々なのですから、強制退去までの当座の生活(最長60日)は政府が補償してよいと思います。次回来日までの貸付でもよいかもしれません。

こう言うと、「ゴネ得だ!」「我々の血税だぞ!」「日本人の生活も苦しいのに」「そんなやつらに回す予算はない!」などの声が上がりそうですが……

本来なすべきは移民抑制の法改正と積極財政

それなら、そもそも外国人労働者/移民を抑制する法改正をすべきです。

また、日本人の生活苦もなくすべく、消費減税・社会保障負担減・教育補償・住居補償などを拡充すればよいでしょう。

何といっても、自国通貨発行、変動相場制、国債も自国通貨建ての我が国に財政破綻の懸念はゼロ。
過剰なインフレにならない限り、政府は国債発行/通貨発行でいくらでもカネを使うことができるのですから。

おまけに、政府がカネを使って景気がよくなれば、企業も設備投資・機械化を進め、安い外国人労働者や実習生に頼る必要がなくなっていきます。

やはり、ここでも積極財政による経済成長が問題解決のカギですね。

もっとも、我が国は長年の緊縮財政による低成長で実質賃金減が顕著です。
外国人にとって魅力的な出稼ぎ場ではなくなりつつあるのかもしれません……

トップ写真:歐洲難民潮by李雨夢

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