経済成長は不要か?⇒成長こそ問題解決のマスターキーである

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環境問題やグローバル資本主義の弊害から、「経済成長は不要だ」「脱成長こそが豊かさ」といった主張がなされます。しかし、こういった「成長否定」は問題を解決するどころか悪化させます。適切な政策による「経済成長」こそが、問題解決のマスターキー(万能カギ)です。

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「経済成長否定~脱成長」論

「経済成長なんて不要だ」あるいは「経済成長を目指してはいけない」「脱成長だ!」という意見があります。代表的な論者は、『人新世の資本論』の斎藤幸平氏でしょう。彼らの意見を端的に言えば、以下のようになります。

1 経済成長すると環境が破壊される

2 経済成長すると共同体(コミュニティ)も解体される

環境破壊の問題

 まず問題視されるのは二酸化炭素排出量増加による温暖化やオゾン層破壊、大気汚染、乱開発による森林減少などの環境問題。

 利潤追求/資本蓄積を至上命題とする資本主義が経済成長を目指す限り、環境問題はないがしろにされる。「SDGs」が注目されるものの、結局は片手間の「やってます感」ばかりのごまかしで済まされる。そういう懸念があるといいます。

資本主義は共同体を破壊する

 また、資本主義は「人間を計算可能・置換可能な金銭的価値としてのみ見る」ため、地域共同体のつながりを破壊して、人々をバラバラの労働者/消費者にする。人々の共有財産を解体して、利潤のための道具にしてしまう恐れがあります。

資本主義には希少性を創造するメカニズムが組み込まれているからです。つまり、人々が無償でアクセスできた共有財を解体して、人工的に希少性を作り出すことで、資本は増えていくのです。そこでは、生活の「質」を犠牲にしても、とにかく資本の「量」を増やすことが重視される。資本の量が増えるのであれば、それによって環境が破壊されようが、多くの人が不幸になろうが、関係ない。

斎藤幸平×白井 聡 未来をつくる選択肢は脱成長しかない

技術が環境問題を解決する

 もっとも、1の環境問題については、技術の発展が解決します。より少ない資源で、より良いものをより多く作ることが可能になります。

参考:経済成長を諦めなくても温暖化対策は進められる

 この技術発展をもたらすものは、研究開発投資に他なりません。
 そして、政府によるものであろうと、民間によるものであろうと、「投資」がなされれば必然的に経済は成長します。
(ここでの「投資」は株を買ったり、債券を買ったりする金融投資でなく、研究員の人件費や設備などのために実際におカネを使うことです。ダムや堤防建設などの公共事業は、この「投資」に入ります。)

経済成長=GDP増

 ここでの経済成長はすなわちGDP増です。GDPとは、国内総生産であり、国内総支出、国民所得でもあります。

GDP=民間が消費・投資したおカネ+政府が消費・投資したおカネ+(輸出額-輸入額)

 上記の公式でも明らかなとおり、「投資」がなされればGDP増、経済成長せざるを得ません。経済成長は環境問題解決の友です。

 一方、「投資」により支払われたおカネは当然、受け取った国民の所得となります。
 所得、おカネが増えた国民はどうするか。もちろん、欲しいもの、必要なものを買う。
 
 すると「消費」が増えて、さらにGDPが増えてしまいます。
 これを乗数効果と言いますが、投資額以上に経済は成長してしまうのです。

「消費」を抑えるとどうなるか?

環境回復のために消費を減らせ、という意見

ここで、
「消費が増えると、二酸化炭素排出が増えて温暖化、大気汚染もひどくなり、森林が消滅~」という反論もあるかと思います。「環境回復のための「投資」は仕方ないとしても、「消費」は減らすべき!」という意見ですね。

 そういう環境破壊につながる「消費」を減らすべく「炭素税」などが議論されることがあります。 
 問題となり得る「消費」を抑制するために、税制は確かに有効な手段の一つでしょう。ガソリン税やたばこ税、酒税を考えれば納得です。

消費そのものを減らす「消費税」の結果

 一方で、この「消費」そのものを抑制する効果があるのが消費税です。
 政府は福祉目的がどうとか言ってますが、そんなことはごまかしです。

 その名の通り、消費を大規模に抑制する罰金が消費税。
 それどころか、人件費抑制~雇用環境悪化機能もあるという。

 おまけに我が国は緊縮財政を続け、政府は投資も消費もずっとケチっている。

 これらによって、日本経済はどうなったか。

 ほとんど成長していません。各国が順当に成長を続けているにも関わらず。
 消費税開始前をピークに、それ以降、日本人の実質賃金は下がり続けています。
 どんどん必要なもの、欲しいものが買えなくなっているということ。こんな国はほかにない。

貧困層が増え、格差が拡大

 消費が減れば、民間企業はもうからないので投資をしない。より良い技術のための研究開発も減らす。政府も緊縮財政で公共投資を減らすし、大学などの研究機関へのおカネもケチる。ますます国民経済は委縮し、経済成長が抑制される。

 その結果、貧困層が増え、格差が拡大しています。

 これによって、共同体(コミュニティ)の破壊が進んでしまう。
 生活に余裕がなくなり、女性も高齢者も賃労働に駆り出される。
 稼げる仕事の少ない地方から人が出て行き、東京など大都市へ集中する。
 地域共同体のつながりは断ち切られ、地域独自の文化・産業も失われる。

「脱成長」の方が共同体を破壊する

「2 経済成長すると共同体(コミュニティ)も解体される」……
 確かに、資本主義的利潤至上・野放図な経済成長にはそういった弊害があるかもしれません。

 しかし、順当に経済成長していた昭和の日本では、一億総中流と言われる分厚い中間層が形成され、格差が意識されることはありませんでした。

 現実を見れば、むしろ成長しない、脱成長(=停滞~衰退)することの方が、共同体を破壊すると考えられます。

「脱成長」で機能する構造改革

 そしてこの破壊を加速しているのが、平成に入って行われ続けた構造改革です。
 消費税増税と軌を一にする法人税減税。派遣労働解禁、移民受け入れ。郵政民営化、国立大学の独立行政法人化、公共施設のPFI・指定管理など……

 一般国民(労働者)のカネと地位を奪い、多くの株を持っている投資家や経営者などの富裕層を肥えさせる「改革」です。
 言い換えれば、「経済成長せずに富裕層が収奪するシステムの構築でしょう。
 逆に考えれば、経済成長すると、このシステムは機能しにくくなる。

経済成長こそ、問題解決のマスターキー

 結局のところ、「環境破壊」「共同体破壊」いずれの問題も経済成長を伴わずには解決できないのです。

 より良い技術のための研究開発投資。ボロボロになった道路や橋、水道など生活インフラを再建する公共事業。長引くデフレ不況とコロナ禍での所得減を補う、国民一律の継続的給付金など。

 そういった政策を統合した経済成長こそ、問題解決のマスターキー(万能カギ)です。

財源は国家の資本主義

 それで、財源は? というところで役に立つのが資本主義そのものです。

 資本主義は「負債を拡大しながら、経済成長する」もの。
 国家における負債(自国通貨建て)の拡大を中央銀行制度が支えることで、無制限に近く経済成長を促せます。
 つまり、インフレ率の高騰にさえ気をつければ、我が国の政府は国債発行で通貨を作って支出できる。


正しい方向へ踏み出したアメリカに遅れるな!

 政府は、その意志さえあれば、国民を救うべくカネを使えるのです。
 国民を救う経済成長ができます。

 そして、その効果をより高めるには、構造改革の逆転が必要です。
 すなわち消費税ゼロ、雇用規制強化。郵便局、大学、インフラ企業の公営化。法人税・金融所得税増など。

 4月2日付の産経新聞によれば、アメリカは220兆円超のインフラ投資を計画しており、さらに教育・社会保障分野での投資も同額で打ち出すとか。法人税増税、グローバル(多国籍)企業の海外収益にも増税する方針だそうです。

 アメリカは正しい方向に踏み出しています。我が国も負けてはいられません。

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