騙されるな!財政赤字の解決策は「財政赤字を正しく知ること」

この記事は約9分で読めます。

 財政赤字は問題だ! そのように言われて数十年が経ちました。しかし日本は一向に財政破綻する気配がありません。

 財政赤字は一体何が問題で、どう解決しなければならないのか? それを考えるときに必要なことは、当たり前ですが「財政赤字を正しく知ること」以外にありません

 財政赤字を正しく知ることが諸問題を解決する一歩です。

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財政赤字がダメだと言われる理由

 財政赤字がダメだと言われる理由は4つあります。「GDP比200%以上」「財政の持続可能性」「負担の先送り」「財政の硬直化」です。

日本の公的債務残高はGDP比200%以上

 日本の公的債務残高、つまり国債発行額の残高はGDP比で200%以上に達しています。したがってギリシャのように財政破綻する! という議論があります。

 自国通貨建て100%の日本と、ユーロという外貨建て100%のギリシャを比較する議論は意味がありません
 身内の貸し借りと、萬田銀次郎からの借金を比べるようなもの

 閑話休題。

 とにかく公的債務残高がGDP比200%以上は危険なのだそうです。

財政持続可能性の信認が毀損する

 財政赤字が増えると、財政の持続可能性への信認が毀損すると言われています。

 信認が毀損すると日本国債は売り一色になり暴落、長期金利が高騰してハイパーインフレになる! のだそう。

 ――日本の長期金利は下がり続けています。持続可能性への信認は高まるばかり

 どうしてでしょう?

将来世代への負担の先送り!

 財政赤字は将来世代への負担先送りだそうです。なぜなら「財政赤字は税金で返済されるべき」だからだそうです。

 自国通貨建て国債で発行しているのですから、通貨発行権を使って返済してはいけないのでしょうか? 実際にはすでにそうしています。

 果たして将来世代に負担は残るのか? 疑問です。

国債費が増えて財政が硬直化する

 国債費とは「国債の新規発行や借り換え、利払いに必要な予算全般」です。

 国債費が増えることで余裕がなくなり、財政が硬直化するのだそうです。しかし現在、長期金利は0.1%以下です。

 そして多くの国債は固定金利です。つまり今のうちに借りるだけ借りておかないと、むしろ損です。借りるだけ借りられれば柔軟な財政政策が可能です。

とにかくダメだからダメ!

 「理由はどうあれダメなものはダメ!」と言われて、納得する人はいません。財政赤字がダメな理由は基本的に「財政赤字はダメだから、財政赤字を出すべきではない」という無限後退です。

 無限後退とは無限ループのようなものです。
参照 無限後退 – Wikipedia

 「ダメだからダメ」では、財政赤字を正しく知っているとは言えません

財政赤字は解決されるべき問題か?

 財政赤字をまずは正しく知りましょう。そのために「本当に財政赤字は解決されるべき問題か?」を解説していきます。

日本で財政破綻の可能性はゼロ

 日本が財政破綻する可能性はゼロです。これは単なる事実であり、経済学者たちも認めるところです。

自国通貨建て国債ではデフォルト”できない”

 日本の国債は100%、円建てです。円の発行権は誰が持っているのか? 日本政府です。

 日本政府は民間銀行を通して円建て国債を借り入れ、最終的には日銀が引き受けることでファイナンスしています。

 超簡略化すると「自分で自分に貸している」と言えます。自分で自分に貸しているのに、債務不履行デフォルトで倒産できますか? 絶対無理です。

 日本はどうやってもデフォルトしません

 通貨を発行して日銀に国債を引き受けさせれば、返済は終わりです。このオペレーションは一般的に、金融緩和と呼ばれています

財政破綻しないのに財政の信認は毀損するか

 財政破綻とはデフォルトのことです。日本はデフォルトしませんし、できません。

 では財政破綻しないのに財政の信認は毀損するでしょうか? するはずがありません。その証拠に財政への信認を示す長期金利は0.1%以下です。

財政破綻しないなら公的債務残高の多少は関係ない

 「公的債務残高がGDP比200%以上!」という主張も、財政破綻しないなら何の問題にもなりません。問題でない以上、解決する必要もありません

赤字国債の増加は負担を増やさない

 では赤字国債増加は、将来世代への負担を増やすのでしょうか。将来世代は1000兆円を超える莫大な赤字を、税金で返す必要があるのでしょうか。

 当たり前ですが答えは「ノー」です。

返済の必要性がないなら負担はゼロ

 そもそも返済は通貨発行権で事足ります。日本の国債は税金に依存せずに返済できます。なぜなら「自分で自分に貸しているだけ」だからです。

 したがって将来世代への負担はゼロです。

 なおこれは自国通貨建て国債のケースです。外貨建て国債の場合はその限りではありません

赤字国債は仕事を増やす

 赤字国債の増加は民間の仕事を増やします。社会保障など所得移転系の政策であれ、インフラなど公共投資であれ。

 赤字国債による政府支出の拡大は需要を増加させます。需要が増加するとは、仕事が増えることです。

 仕事が増えることを負担だとするなら、なるほど確かに赤字国債は負担を増やします。「現役世代の」ですが

インフラや治水など将来世代への資産を残す

 赤字国債で建設された道路や橋梁、水道、治水、鉄道などは将来世代への負担でしょうか? むしろ将来世代へ資産を残す行為です。

 逆説的に赤字国債を恐れて公共投資を減らすことは、将来世代に残すべき資産を減らしていることになります。

資本主義下で健全な国家は財政赤字

 そもそも我々が生きている世界とは、どのようなものでしょう。ざっと考えても「資本主義」「民主主義」などが浮かんできます。

 じつは資本主義国家において財政赤字は健全です。

資本主義とは何だろうか?

 そもそも資本主義とは何でしょうか? 正しく定義できている人は少数です。

 資本主義とは「負債を拡大しながら経済成長していく経済形態」です。

 イギリスの産業革命以前、世界はほとんど経済成長していませんでした。なぜなら中央銀行制度が整っておらず、負債を拡大することができなかったからです。

 イギリスの産業革命以降、世界は爆発的に資本主義で経済成長しました。それは中央銀行制度が整い、負債を拡大できるようになったからです。

赤字を増やすべきは民間か国家か

 「負債拡大は国家ではなく、民間でもいいじゃないか!」という意見もあるでしょう。

 しかし民間が負債を増やした結果、起こることは自明です。バブルと金融危機、景気悪化です。ならば国家が負債拡大した方が、賢明であることは言うまでもありません。

アメリカの赤字は1900年比で3000倍以上

 実際にアメリカの公的債務残高は、1900年と比較して3000倍以上に膨れ上がっています。しかし、アメリカが財政破綻したと聞いたことはありません。

 これは資本主義下で財政赤字は健全である、という何よりの証左でしょう。

財政赤字を解決した後に起こること

 ここまで読んでもまだ、財政赤字を解決したいですか? では実際に財政赤字を解決するとどういったことが起きるのか、シミュレーションしてみましょう

①財政赤字ゼロ=民間赤字増大

 「誰かの負債は誰かの資産」であり「誰かの赤字は誰かの黒字」です。この原則は絶対です。

 では政府が財政赤字をゼロに縮小したとします。経済規模をそのまま保ちたいなら、他の誰かが赤字を増やすしかありません。

 政府以外の経済主体は個人か企業、つまり民間です。

 政府の財政赤字を解決すると、民間の赤字増大が問題になります

②民間赤字増大でバブルと金融危機発生

 民間の赤字増大は何をもたらすか? バブルとそれに伴う金融危機です。

 民間の増大した赤字の多くは投資や投機に向かいます。よってバブルが発生してはじけ、金融危機が起こります。

③景気が悪化して税収が低下

 金融危機が起きると景気は悪化します。

 税収の原資はGDPです。景気悪化でGDPが縮小すると税収も低下します。

④税収の低下の穴埋めに歳出削減

 税収が低下すると予算規模を維持できません。つまり赤字国債を出さないようにするなら、歳出削減が必要です。

 ――だんだんイヤな予感がしてきましたよね。

⑤①か③に戻る無限ループ

 歳出削減は景気を悪化させるか、民間赤字を増大させます。

 よって①か③に戻って無限ループが繰り返されます

アルゼンチンは真面目に財政赤字を解決しようとした

 じつは上述した循環は歴史上、実際に発生しています。アルゼンチンはデフォルトした後にIMFの管理下に入り、真面目に財政赤字ゼロ・プライマリーバランスの黒字化を目指しました。

 その結果どうなったか? 再度デフォルトしました

 急激な歳出削減は民間の負債増加すらもたらせず、③の景気悪化に一直線。景気が悪化して税収が下がり、さらに歳出削減をするという悪循環です。

 その結果……デフォルト! 圧倒的デフォルト!!
 ――すいません、やってみたかった。

財政赤字の解決は日本を凋落させる

 財政赤字を本気で解決しようとすると、金融危機や景気悪化が確実に起きます。結果として税収が減少し、さらなる歳出削減が求められ景気が悪化。これに対して税収が減少しさらなる歳出削減が……と無限ループします。

 日本が凋落するのは明らかです。

これでもまだ財政赤字を解決したい?

 今回の記事で言いたかったことは「財政赤字は解決するべき問題ではない」です。

 財政赤字がダメだとする主張の、曖昧でよくわからない論拠を紹介しました。そして実際に財政赤字は誰の負担にもならず、解決するべき問題が存在していないと示しました。
 さらにはもし解決しようとすると、とんでもない事態が引き起こされると解説しました。

 これでもまだ、あなたは財政赤字を解決したいですか?

 「財政赤字を正しく知ること」は「財政赤字は解決が必要な問題ではない」と知ることです。

まとめ

  1. 財政赤字がダメだと言われる根拠は意味不明
  2. 財政赤字は解決されるべき問題ではなかった
  3. 財政赤字を解決しようとすると、もっと深刻な問題が起きる
  4. それでも財政赤字を解決したいですか?

 この箇条書きが本稿のまとめです。財政赤字を正しく知ることで「財政赤字に問題がないのに問題視されているという問題」が理解できます。

 しっかり知って賢く考えてくださいね。

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