無税国家論やベーシックから逃げ回る積極財政論者は、ご飯ものを出さない大衆食堂みたいなもの

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先日近くの本屋で地元のグルメ紹介本を立ち読みしていたら、学生街の定食屋さんが紹介されていました。

紹介文に登場する店主は、「うちは昔から学生相手の商売でね。腹を空かせた学生さんたちに腹いっぱい食わせたくてね…」と答えており、さぞや大盛り大サービスの店なのかと期待しておススメの唐揚げ定食の写真を見てガッカリ。

ご飯はどう見ても普通レベルの盛り付け、唐揚げも普通サイズのもの4個にサラダとみそ汁、新香付きで値段は1,000円(税別)、しかもご飯のお代わり有料(100円)ときた日には、「こんなものを出しておいて、よく学生向けの大衆食堂を名乗れるな!」とツッコミを入れたくなります。

さて、近頃この界隈でもちょっとだけスパーリングが過熱気味の無税国家論&ベーシックインカム論ですが、自称MMTerが提案する積極財政策のサービスの悪さに失望しています。

積極財政論者とは対極にある増税緊縮派の連中は、

・消費税率15~30%への引き上げ

・少子高齢化社会を理由とする社会保障費の削減

・関税撤廃と資本移動の完全なる自由化

・雇用の流動化

・環境保護コストの国民への転嫁

等々、彼らは“内需不足型の長期不況”という時勢をガン無視した真逆の大暴論を積極的にブチ上げて世論誘導の先手を打ち、散々批判されながらも、

・消費税率引き上げ(3%→5%→8%→10%)と法人税率の引き下げ

・社会保障の劣化(年金支給開始年齢引き上げ、医療費負担割合UP、介護保険負担UP)

・TPPやEPAといった野放図な市場開放

・労働分配率の長期低迷、労働規制緩和や経団連主導の新卒採用制度

・家庭ごみの処理コスト負担、レジ袋有料化

という成果を勝ち取ってきました。(国民にとっては迷惑でしかありませんが…)

なぜ、彼らが逆噴射政策に等しい増税改悪政策を断行できたのか?

私は、彼らが「国民の批判を恐れず、議論のボールを思い切り遠くに投げて世論誘導の主導権を握ったから」だと思います。

要は言ったもの勝ちが罷り通ってきたわけです。

自称MMTerの方が大昔に自慢げに吹聴していたとおり、“議論のボールを大遠投する”のは、議論の方向性を自身に都合のよい方向に誘導する、いわば、先手を打ち自分の得意な陣形に誘うことでもありますから、論争の主導権を握るうえでとても重要なキーポイントなのです。

私が思うに、経済論壇の超少数民族に過ぎない積極財政派が決定的に足りないのは、積極的に政策を提言し、議論のボールを大遠投する姿勢です。

超マイナー論者の集団が、「国民の眼や批判を気にしてどうするんですか? 尖がった提言をしなくてどうするんですか?」と言いたいですね。

我々は、これまで、増税緊縮派やリフレ派、構造改悪派といった低レベルな連中が次々と繰り出す愚策・愚論に振り回され、それらを批判することにエネルギーを使い果たしてきました。

消費税然り、TPP然り、金融緩和政策一本足打法然りです。

積極財政派は、増税緊縮派らの声の大きさや、世間の眼などものともしない図太さ、持説を吹聴する積極性、多少間違ったことでも成功だと言い張る強引さを見習う必要があると思いますよ。

「あいつらと同じレベルに堕ちたくない」なんて格好つけて正論派を気取っていると、永遠に負け続けることになります。

ルールガン無視のストリートファイトを仕掛ける相手に、非武装・非暴力の丸腰で理を説くのは、現実を顧みない負け犬の所業でしかありません。

積極財政派の論者は、妙にお行儀よく、バカ正直で大人しい方が多いせいか、やるべき政策を主張する際に、「こんなことを言うとバカにされるのでは? 世間からおかしな目で見られるのでは?」、「ここまで言うと、後で責任を追及されるのでは?」と先回りして、変に持論を自己修正しすぎる傾向があります。

大きなアドバルーンを上げる勇気や度胸がなく、世間に披露する段になると水風船やシャボン玉並みの小ささに萎んでいますよ。

これでは世論に積極財政論を問うなど夢のまた夢。百年経っても無理でしょうね。

 “年間50兆円の財出だ”、“いや、社保負担全廃で120兆円だ”、“もっと大胆にBIだ、最終的に無税国家を目指そう!”と議論を膨らませ、ボールを大遠投するどころか、一部の自称積極財政派の連中に至っては、“いやいや、社会保障費全廃なんて無理だから”とか、“無税国家なんて言うと、国民に引かれるよ”と議論に冷や水を浴びせるのに必死で、ボールを遠投する素振りすら見せません。

逆に、キャッチボールはもうお終いとばかりに、ボールをベンチに投げ返そうとするありさまです。

こんな姿を見た国民は、

「あいつらの言いたいことって、結局何なの?」

「積極財政派って言ってるけど、安倍ちゃんたちと何が違うんかな?」

「あいつらって、言うほど“積極財政”か? ただ、インフラ投資を増やせって言ってるだけだよね?」

「よく解らんけど、山本太郎のお仲間かね?」

と冷笑を送るだけで終わるでしょうね。

国民が驚き二度見するほどの超積極財政策を言わぬ(言えぬ)腰抜け論者なんて、ご飯の盛りが少ない学生食堂やご飯もののメニューがない大衆食堂みたいなもので、まさに「看板に偽りありの詐欺論者」ですよ。

四半世紀もの不況で腹を空かせた国民に、腹いっぱい飯を喰わせられないようでは、積極財政派を名乗り、経世済民を説く資格などありません。

ここで叱咤激励の意味を込めて、積極財政論者を騙る輩の無税国家論やBIに対するアホな批判を採り上げ、その論拠の杜撰さを指摘しておきます。

【税と社保負担合わせて180兆円もの国民負担をゼロにするのは無理】

・まず、180兆円が無理なら、120兆円なら可能なのか、80兆円なら可能なのか、はたまた50兆円ならOKなのか、国民負担を極限まで引き下げる意欲を示し具体的に提言すべきです。

・「税と社保で180兆円も掛かるんだよ? こんなものゼロにできないでしょ。ハイっお終い」で済ませて後は知らん顔でいいんですかね?国民が期待しているのは、「積極財政派は俺たちの負担を何十兆円くらい減らしてくれるんだろう?」ってことですよ?

・「180兆円の国民負担をゼロにするとインフレ率が10%くらいになるし、税理士や社労士もおマンマ食い上げになっちゃうから、それはマズい。始めは100兆円くらいから行きますか」という提案をせず、無税国家論に文句を言ってドヤ顔で悦に入るだけでは、質の悪い内ゲバとしか見られませんよ。

・できない言い訳ややりたくない言い訳を聞いている暇はありません。そんなものは見苦しいだけ。重過ぎる国民負担は、実質所得の低下→消費や投資の低迷→不況の常態化を招く病根であり、早急に除去すべきです。

・いま必要なのは、言いっ放しの批判ではなく、国民負担を極限まで下げようと挑む気概です。

【(なんだかよく解らないけど)無税国家論=非武装国家論だぞっ!】

・これを唱えるアホは、「無税国家論は非武装国家論に似ている。憲法9条万歳のお花畑サヨクの“軍隊が無くても平和が維持できる”と同じ」なんて言ってますが、正直何を言いたいのかさっぱり理解できません。

・税がなくとも、国家運営に必要な貨幣さえ調達できれば、政治経済は問題なく廻ります。貨幣調達なら、貨幣製造や国債発行など、税を遥かに凌ぐ量の調達手段がいくらでもありますから、税がないと国家運営が成り立たないなんてのは、時代遅れの妄想に過ぎません。

・税がないのは武装解除に等しいと怯えるなら、いっそのこと増税緊縮派の靴でも舐めて、“増税こそ日本の経済防衛力の強化につながる。消費税率を30%に引き上げろ”と叫んできたらどうですか?

・税なんてものは、国家運営に必要な財源調達の手段ではなく、社会的不公正の是正や、国家として需要拡大を望まぬ物品やサービスを抑制するために用いる懲罰手段・権力の恣意行動でしかありません。

・通貨発行権という大権を有する国家は、そもそも財源としての貨幣を“税”という形で家計や企業から収奪する必要がなく、要る分だけ造幣・発行(製造)すればよいのです。あるいは、運用先に困る貯蓄に利子という果実をプレゼントする名目で国債を発行してやればよいのです。

・税という存在を、失くしてはならぬ不可侵なもの、国家運営と不可分なものと誤解し、「無税国家論=非武装国家論」などという妄想に駆られるバカの頭の中はいったいどんな靄がかかっているのかと失笑を禁じ得ません。

【BIは雇用を流動化させ、新自由主義者を歓ばせる】

・「BIで所得UPした労働者は経営者に待遇改善を要求し、それが叶わなければ簡単に離職してしまう。中小零細企業には離職者を引き留める財源がないが、賃上げや新規雇用が容易な大企業ならそれらを吸収し、大企業が益々肥え太ることになる」といった趣旨の主張を目にしましたが、BIが中小零細企業の従業員たちの実質所得を引き上げ、超ブラック労働の改善を要求できるなんて素晴らしいことじゃありませんか。

・それとも、40過ぎても年収300万円にも満たず、年間休日は70‐80日、毎月の残業時間は半分がお召し上げなんて奴隷労働が罷り通るのを黙って見ていろというわけですかね?

・それと、大企業にとって賃上げや新規雇用などわけもないというのも素人臭い言い草です。大企業ともなると、数万人もの従業員を抱えていますから、特定階層の賃金レベルを数万円上げるだけで済ますわけにはいかず、その前後左右の階層や役職の賃金も同時に上げねばなりませんから、全体に波及すると数十億~百億単位の支出増となり、言うほど簡単に上げられません。また、雇用計画も次年度を相当以前から睨んで練られるのが通常ですから、経営者の思い付きで新規雇用を増やせるわけありません。

・また、BI発動が雇用流動化を誘発するとの妄想ですが、日本の労働移動率の推移をみると、年によって上下しており一貫した論旨を立てにくいのですが、おおむね不況期には高く、好況期には低い傾向が見て取れます。ちなみに、2010年代は29~33%、1980年代は15~18%ほどで推移しています。BIにより国民の実質所得は増え、景気は好況へと向かうでしょうから、過去の例に照らせば労働移動率は低下するとみるのが自然ではないでしょうか。

(参照先)

http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2018/ito180919.pdfhttps://www.cao.go.jp/zei-cho/shimon/27zen28kai21.pdf

・新自由主義者を歓ばせるポイントは、

  • BIを隠れ蓑にして既存の社会保障制度を全廃すること
  • 雇用の質の劣化につながる形で雇用流動化を推進し、労働コストを下げること

ですから、現行の社会保障の改善を図りつつBIを付加する真のBI論や、それに伴う労働者の実質所得の向上は、新自由主義者をイラつかせる効果こそあれ、その逆ではないと思いますよ。

以上、長々と述べてきましたが、超少数民族である積極財政派は、

・無税国家論

・BIの実施

・消費税廃止

・社会保障費負担の大幅削減(国庫負担増)

・老朽化した公共インフラの刷新

・防災・減殺に向けたハード整備費の大幅拡充

・地方交付税交付金の大幅増(地方への投資の促進)

・三大都市圏や政令指定都市以外の地方の固定資産税廃止による地方への移住促進 etc

といった大胆な政策提言を増税緊縮派より素早く、大きな声量で、積極的に発信すべきです。

国民からの批判を恐れて縮こまっているようでは、増税緊縮派に対する永続敗戦は決定です。

負け犬根性や万年野党根性を棄てぬ限り、我々が陽の目を見ることはありません。

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