コロナ禍はいったん落ち着いたように感じる現在、しっかりと訪れるであろう未来を見据えることは重要です。
結論から言えばコロナ禍で、第二の就職氷河期が到来する可能性は高いと言わざるを得ません。
本稿では衝撃的な数字も交えつつ、その可能性について議論します。
就職氷河期とは?
まず就職氷河期について、復習しておきましょう。
就職氷河期とは一般的に、1995年から2005年までを指します。1991年のバブル崩壊、そして1998年からデフレ突入したこの時期は産業構造の転換も伴い、新卒採用が絞られました。
フリーターという言葉が定着したのも、就職氷河期の少し前からです。フリーターという生き方が、自由で素晴らしい! フリーターを選択しよう! という風潮は、2000年頃にかなり盛んでした。
新卒採用が絞られた結果、当然ながら非正規雇用は増加しはじめます。総務省統計局のグラフを参照しまます。
1995年を起点に、非正規雇用の割合が増加しはじめたことが理解できます。
非正規雇用の割合が2009年に一旦、上げ止まっているのはリーマンショックの影響です。非正規雇用を景気の調整弁として解雇したので、割合が一時的に減少しました。
非正規雇用は現在、労働者の4割に達しています。この潮流は1995年の就職氷河期から始まりました。就職氷河期に新卒だった世代を、就職氷河期世代と言います。筆者も就職氷河期世代の1人です。
非正規雇用の就職氷河期世代は現在、100万人以上いるとされます。30代後半~40代後半になるのに、未だに非正規から抜け出せない世代です。
就職氷河期は、生涯未婚率の上昇や少子化の一因にもなっています。
労働市場の実態とコロナ禍
第二就職氷河期が来るかどうか予測するには、コロナ禍の労働市場への影響を計る必要があります。
4月の失業率は2.6%と、前月比で0.1%の悪化にとどまりました。失業率を見る限り、コロナ禍の影響は軽微に思えます。
しかしその裏で、休業者数が前月比で420万人増加し597万人となりました。
通常の休業者数は150万人から200万人です。日本の就業者数は現在、6700万人ほどです。420万人の休業者増加という数字が、どれだけインパクトのあるものか理解できます。
参照 日本の低失業率背後に大量の「隠れ失業者」、コロナで休業者数急増 – Bloomberg
また調査によれば非正規雇用の5割が、コロナ禍で収入減などの影響を受けています。
参照 ニュース:非正規の50%、フリーランスの65% コロナ禍の仕事への影響、JILPT調査 | アドバンスニュース
休業者を従業者に転換できるかどうかは、コロナ禍と経済によって左右されます。ではコロナ禍の第二波が、来るかどうかを検討してみましょう。
コロナ禍第二波はくるのか?
コロナ禍の第二波は来る可能性が高いでしょう。一時期に比べて新規感染者数微増が続いていますが、このまま抑制し続けられるかどうかは微妙です。
というのも現在の新規感染者数は、緊急事態宣言を出していなかった3月後半と同程度だからです。
店頭にアルコール消毒液を置き、9割以上がマスクをしていても「何の対策もしてなかったときと一緒」です。とすれば緊急事態宣言で感染爆発は抑えたものの、いつまた感染爆発が起こるかわからない状態が現在です。
これで「いやいや、大丈夫だよ」と言えるほど、筆者は楽観的になれません。
危機管理の要諦は、最悪の事態を想定しておくことです。コロナ第二波は来ると想定しておく方が無難でしょう。
第二就職氷河期の可能性
コロナ第一波は、4月の労働市場統計を見る限り大きな影響を残しました。そして現在の休業者が従業者に転換できるかどうかが、第二就職氷河期到来の分かれ目でもあります。
コロナ第二波の可能性は高い。とするとまたしても緊急事態宣言で、経済が止まる可能性があります。こうなると600万人の休業者が、失業者に転換するかもしれません。
実際の、経済の数字を参照しましょう。
新型コロナ:世界経済、2年で損失1300兆円 20年はマイナス4.9%:日本経済新聞ではIMFが、世界経済の成長率を予測しています。これによると2020年の世界経済はマイナス4.9%、日本はマイナス5.8%の経済成長率です。
日本のマイナス5.8%という数字は、リーマンショック翌年の2009年(マイナス5.4%)を上回ります。
このような状況の中で、新卒採用はどうなるでしょうか? 第二の就職氷河期作らず 雇用最優先、経団連が緊急提言―新型コロナ:時事ドットコムによれば経団連は、第二の就職氷河期を作らないために雇用を優先するそうです。
しかし企業は売り上げが下がれば、採用を絞るどころかリストラにまで手をつけなくてはならなくなるかもしれません。
景気が悪くなったときに、企業が努力してもなんともならないこともあります。
諸々の状況を整理していくと、第二の就職氷河期が訪れる可能性は非常に高いと言わざるを得ません。
就職氷河期世代支援対策はどこに行った?
2019年末に、就職氷河期世代支援が話題になりました。……あれはどこに行ったのでしょうか?
第二の就職氷河期が到来すると、政府や企業はそちらに注目するでしょう。もしかして我々就職氷河期世代は、またもや放置されるのでしょうか。その可能性は非常に高い、と筆者は判断します。
コロナ禍で、非正規雇用の不安定性が際立ちました。一方で就職氷河期を境に、正規雇用は減少の一途をたどっています。
正規雇用というパイは減少し、限られ、減り続けています。遠くない未来に「非正規雇用が労働者の5割を超えた!」なんてニュースも流れるかもしれません。
コロナ禍が来たことで、問題点が表出しました。日本はどうするのか? このままだと、明るい未来はあまり見えない気がします。
まとめ 第二就職氷河期世代の可能性と今後の日本について
本稿は数字ベースに、現状を整理する目的で書きました。しかし最後に筆者の、個人的見解を申し上げたいと思います。
最近、ネカフェ難民やUber EATSで生活する若者などの報道、特集を見ました。「欲しいものがない」「自由だから幸せだと思う」などが若者の意見として捉えられていました。
これ、逆なんですよね。諦めてるから、諦観しているから「欲しがらない」だけです。「どうせ稼げない」「稼ごうと思うと仕事がきつすぎる」という現実が、「欲しがらない代わりに無理しない」という生き方へ直結するわけです。
日本はどこへ向かうのか? このまま貧困化し、衰退途上国化していくのか? その可能性は大いにあると思います。