9月9日に千葉県を襲った台風15号は、最大瞬間風速が千葉市で秒速57.5m、最大停電件数は約93万軒にも及び、千葉県君津市では送電線鉄塔が2基も倒壊するという大惨事を惹き起こしました。
(秒速57.5mという記録は日本歴代風速ランキングで5位にランクするほどの強さ)
風速60mといえば、スカイダイビングの落下速度(約200km/h)や、新幹線「のぞみ」の平均速度(約220km/h)に匹敵するスピードだそうで、上から4番目に強い(JEF2)竜巻の風速にも匹敵し、
・鉄骨造倉庫において、屋根ふき材が浮き上がり、飛散する。
・普通自動車(ワンボックス)や大型自動車が横転する。
・鉄筋コンクリート製の電柱が折損する。
・カーポートの骨組が傾斜し、倒壊する。
・コンクリートブロック塀の大部分が倒壊する。
といった被害が起きる強さだそうです。
【参照先】
私も昨年、北海道に出張中に胆振東部地震に遭い、大規模な停電を経験しましたが、北海道は、その前々日から前日にかけて台風21号の直撃も受けており、地震後に宿泊先の周辺を歩いた時に、鉄道林と思われる大木が数十本もなぎ倒されていたのを目にしました。
後で調べると、その際の暴風は秒速30~33mだったようですが、千葉県で吹き荒れた暴風はその時の1.7倍もの強さでしたから、鉄塔がへし折れたのも頷けます。
今回も、停電発生当初に、反原発ゴロのバカどもから、「東電は想定外という言い訳をするな」という心無い批難が沸騰しましたが、全社挙げて停電の復旧工事に取り組む東電や下請け業者職員に対して、礼や思いやりを欠く卑劣な発言としか思えませんね。
無責任なゴロツキどもには、「安全地帯から偉そうに文句を言うな!」、「無駄飯を食っている暇があるなら、現地に行ってゴミ拾いでもして来い!」と怒鳴りつけたくなります。
気象庁のデータによると、千葉県で起きた最大瞬間風速は1985年の秒速48.6mだそうですから、今回の暴風がいかに規格外の規模だったか解ります。
なにせ、東京や神奈川、千葉では過去に秒速50mを超える暴風は吹いたことがなかったそうですから、“想定外”以外の何物でもありませんよね。
危険や困難に立ち向かう苦労も知らない幼稚なゴロツキどもには、公共インフラがあらゆるリスクに対応できる、つまり、インフラ強度を“想定内化”するために必要な費用を自費で負担させるべきです。
さて、千葉で起きた大規模・長期停電の反省を踏まえて、マスゴミ各社でも電柱地中化の話題が採り上げられるようになりました。
電柱地中化(無電柱化)の問題は、かなり以前から指摘されていたようですが、メリットやデメリットもあり、議論が具体化することは無かったように思います。
さて、電柱には、電力会社が送電・配電を目的に設置する電力柱と通信会社が通信用ケーブルを支持することを目的に設置する電信柱があるそうで、全国で3,600万本近く設置されています。
私自身初めて知ったのですが、柱の数が最も多いのはNTT東日本の618万本だそうで、東電より37万本も多いそうです。(2010年度データ)
肝心の我が国の電柱地中化率は、全体で1~2%程度、最も進んでいる東京都でも8%と、諸外国と比べて大きく後れを取っています。
国内の道路総延長距離約120万kmを年間の平均整備距離440kmで割ると、地中化が行き渡るのは2,700年も先になると推測されています。(もはや、歴史の世界ですね…)
ちなみに、海外では、ロンドン・パリ・香港100%、台北95%、シンガポール93%(台北とともに最近100%に達したとも)、ニューヨーク83%、リマ57%、ソウル46%、マニラ40%、ジャカルタ35%等々、日本とは雲泥の差があります。
【参照先】
地中化のデメリットとしてよく言われるのは、
①コストの高さ(電柱設置の約10倍、km当り3.5億円)
②工期の長さ(半年~1年)
③損傷後の普及に時間がかかる(破損個所の特定困難)
④地震や浸水リスクに対する懸念
⑤変圧器の設置場所確保
といった点ですが、機能的財政論やMMTに基づく財源無限論を唱える論者なら、①のコストに文句を言う者はいないはずです。
②の工期短縮については、土木工事業者が絶滅の危機にある現状を踏まえると、大きな懸案事項ではありますが、政府が電柱地中化促進長期計画を打ち立てて必要な財源の支出を確約し、10~15年程度の長期的投資により、産業育成と技術者養成、工期・工法のレベルアップに対する補助制度を充実させることで、ある程度促進できると思います。
政府が率先して確度の高いビジネスチャンスさえ創ってやれば、企業たるもの長期投資を厭わないものです。
なにせ、電柱をすべて地中化するともなると、累計で300~400兆円近い超ビッグプロジェクトですから、政府も旗の振りがいがあるでしょうし、新規参入の事業者も大挙して押し寄せる甲斐がありますよね。(資材取扱業者も大喜び!)
次に③の損傷リスクですが、阪神淡路大震災におけるケーブルの被災率を比べると、地中線の被災率は架空線の80分の1で電線地中化(無電柱化)は地震に強い、あるいは、東日本大震災でも、地中線の被害率は電信柱の1/25に過ぎなかったというデータもあります。
【参照先】
また、④の地震や浸水リスクについても、参照先の記事で、地中化は災害の多い日本には向かないのではという問いに対して、東京都 建設局道路管理部 安全施設課の担当者は、「逆だと思っています。電線、電柱の乱立する状態では、突風や台風で断線や倒壊の危険があります。昨今はゲリラ豪雨、竜巻などの風水害が東京や首都圏でも多発していますが、無電柱化を進めることで、電柱の倒壊や電線の断線トラブルをなくすことができます。
地中に埋められた設備は耐水性があるため、水に浸かっても大丈夫。無電柱化により、風水害の防災力も高まるんです」と答えています。
【参照先】
私見ですが、我が国同様に地震や風水害被害を受けている台湾やフィリピン、インドネシア、ペルーといった国々で地中化が進められている現実を踏まえると、電柱地中化は、むしろ災害に強いという答えにも納得できます。
この辺りは、地震や台風被害が頻発する台北での現地事情をつぶさに調査し、ヒアリングすれば、地中化のメリットが理解できるのではないでしょうか?
⑤の変圧器の設置場所については、現在都市部でも多く見られる路上変圧器のような形状になり、これが今よりも多数出現することになると思われますが、ただでさえ狭い都市部の道路の通行を邪魔する既存の電柱が無くなると思えば、大した弊害にはならないはずです。
我が国において地中化の進展を妨げる最大の要因は、被災リスク云々よりも、単にコストの問題に集約されるでしょう。
「日本は財政危機」、「公共事業は利権と無駄の温床」、「コンクリートから人へ」というレベルの低すぎる雑音こそが、最大かつ最強の壁や弊害になりそうです。
こうした雑音を一蹴することこそが、我々積極財政派に課された使命でしょう。
機能的財政論を使っても善し、MMTを駆使しても善し、とにかく、政府や財務省の連中に、日本の防災力を強靭化するための支出を出し惜しみさせぬよう、超長期かつ大規模な公的支出を強力に訴えるべきです。
電柱地中化については、公共事業が大嫌いなあの朝日新聞でさえ、社説を使い推進を訴えています。
『(社説)停電の長期化 「想定外」ではすまない』
「(略)昨年は北海道地震でブラックアウトが起き、台風21号でも関西でのべ約220万戸が停電した。長期的には電線の地中化が有効な対策である。コストはかかるが大規模停電の影響と復旧費用を考えれば、国も電力会社も無電柱化に力を入れる時だ」
公共事業カットと歳出カットしか言わなかった朝日新聞すら、コストをかけても無電柱化を推進せよと主張するようになったのは半歩前進です。
あとは、“○○費を削って無電柱化の経費に充てよ”と、つまらぬ選別論にならぬよう積極財政派の論者が適切な方法論を教示する番です。
不幸にして起きた災害の教訓を無にしてはなりません。
“人命より大切なものはない”、“安定的な社会生活を確保するためのインフラ投資を惜しむな”と国民に訴え、政府が積極財政へと舵を切るよう尻を強くぶっ叩きたいものです。
ついでに雪国の道路はほぼロードヒーティングにしてみるの。
思いつきですが、暴論でしょうか?
雪は定期的災害だと思います。
御提案に賛同します。
私も出張で真冬の北海道を運転したことがありますが、恐怖の一言ですね。
せめてスリップしやすい交差点とか、登り坂だけでもロードヒーティングして貰えると、現地の住民の方々も安心かと思います思います。