本稿では「消費税増税をすると、安全保障は低下する!」という、衝撃の結論から入りたいと思います。
衝撃的といいましたが、常識的に経済を考えれば、誰でも行き着く結論でもあります。
一般的には「税収から軍事予算が出ている」とイメージされる方が多いでしょう。つまり「税金は重たいけど、安全保障のためには仕方がない」という思考回路になるはずです。
これは”完全な間違い”です。
結論は「重税によって、安全保障は低下する」のです。解説していきます。
デフレ下で税を多く取れば、安全保障は改善する?じつは低下します
最初に「重税によって、安全保障は低下する」がなぜ論理的に導き出されるのか? を解説したいと思います。
安全保障、特に軍事面での安全保障の源泉は何でしょうか? 税金? それとも技術? 自衛隊の練度?
答えを先に明かしますと、「国力」こそが安全保障の源泉です。GDPと表現しても良いでしょう。
デフレとは所得を下落させ、投資は不活発化し、国力を停滞ないし衰退させます。GDPという絶対値ではなく、「周りの国家との相対的なGDP」をです。GDPシェアと言い換えても良いです。
周りの国家が経済成長しているのに、日本だけ停滞していれば、当然ながら相対的な国力は低下の一途をたどることは明白です。
なぜ日本が停滞しているのか? デフレだからです。
デフレ下で消費税増税などの増税をするとどうなるか? 個人消費は低迷、企業の実物投資は減少します。その上に政府支出が足りないとくれば、デフレスパイラルによって、安全保障の源泉である日本の国力は、相対的に低下していくのです。
税収の原資はGDPという真っ当な事実
税収を重視したとしても、財政再建なるものを重視するとしても、なおデフレは悪です。税収の原資は何でしょう? GDPです。これは否定しようのない事実です。
したがってGDPが伸びなければ、税収は上がらないのです。
藤井聡京大教授によれば、失われた20年がなければ日本のGDPは、現在1000兆円になっていたかも知れないとのことです。
とすると消費税増税などなくても、100兆円以上の税収が存在したはずなのです。
安倍政権で数兆円の税収増加という報道がありますが、桁が違いすぎます。
財政再建については基本的には必要がないのですが、それでも重視するのならば、やはりGDPの成長が必要なのです。
なぜなら財政再建、財政健全化とは国債発行額の絶対値ではなく、GDP比で考えるものだからです。
歴史の例としては、クリントノミクスが良いでしょう。積極財政をした結果として、国債発行額は1.1倍程度で、経済成長は1.5倍を達成したのだそうです。
財政問題のない日本で、財政問題に悩まされる自縄自縛
そもそも論ですが、日本に財政問題は存在しません。自国通貨建て国債でデフォルト(財政破綻)した例は、歴史上ありません。
考えてみれば当たり前で、政府は通貨発行権を持っているのですから当然です。
もう少し突っ込んだ議論をすると、現代貨幣理論(MMT)が必要になってくるのですが、本稿のテーマは「デフレ下で増税すると、安全保障が低下する」ですので、脇に置きます。
財政問題が存在しないのに、なぜ財政問題を日本が重視するのか? 様々な観点から解説が可能ですが、緊縮財政・全体主義について言及しておきたいと思います。
緊縮財政・全体主義とナチス・ドイツ
全体主義とは、思考停止の蔓延により至ります。
ナチス・ドイツの例で見れば、第一次世界大戦で敗戦し、ハイパーインフレやナチス登場前のデフレにドイツは悩まされました。
※多額の賠償金でハイパーインフレになった後、以外なことに1930年代、ドイツはデフレに陥ったのです。このときに、失業率が4割を超えました。
参照:歴史に学ぶインフレより怖いデフレの危険性 WEDGE Infinity(ウェッジ)
ナオミ・クラインはショック・ドクトリンという概念を提唱しました。例えば東北大震災のような、もしくは戦争や敗戦、失業率の高騰などで人々がショック状態に陥ったとき、極端な政策が通りやすいというものです。
ショック状態とは思考停止です。
こうしてドイツは、ワイマール憲法という先進的な民主的憲法を持ちながら、ナチス・ドイツという全体主義に突き進んだのです。
日本もまた同様です。バブル崩壊というショックと自信喪失の状態で、日本に新自由主義が輸入されたのです。
新自由主義では「小さな政府=善」ですから、1997年以降の日本は緊縮財政が正しいと思い込み、有りもしない財政問題に言及して20年が失われたのです。
私は上記の状態を、緊縮財政・全体主義と定義しています。
余談ですが、今度の参院選は自民党は消費増税公約に、立憲民主は消費増税凍結と廃止を掲げるで書きましたとおり、野党が消費税増税凍結を求めるようです。
ようやく、緊縮財政・全体主義が超克されるのかも知れません。
消費税増税で凋落する、技術立国日本とイノベーション
消費税増税は個人消費を停滞させ、企業の実物投資を減少させます。そしてデフレ圧力を強める経済政策です。
「デフレ脱却!」といいながら「デフレ圧力を強める」のですから、かなり狂った話です。
企業はデフレ下でコストカットに走り、人件費は研究開発費などを減少させます。利益は内部留保に優先的に回します。
なぜなら、デフレは物価下落=貨幣価値上昇なので、合理的には現金や預貯金で貨幣を所持しているのが得だからです。
したがって技術開発への民間予算は減少し、当然ながらイノベーションは起きにくくなります。端的にいえば、技術立国が失われ、技術の優位性が失われるのです。
技術の優位性が失われるとどうなるか? 当然ながら、安全保障でも重大な影響が出ます。軍事だけに限定しても、現代の軍事力は技術的優位性がかなり重要な要素だからです。
出口のない迷路の”財政再建”
最後に財政健全化、財政再建議論について触れたいと思います。
結論からいえば、財政健全化を至上命題とすると、財政健全化は遠ざかります。
財政健全化と唱える人たちが推し進めようとするのは、緊縮財政にほかなりません。増税や赤字国債の削減などでしょう。
しかし先述したとおり、税収の原資はGDPです。そしてデフレとは供給>需要の状態です。
デフレの状態で政府需要を削減したらどうなるか? もっとデフレが進むに決まっています。もしくは消費税増税などで、貨幣を回収、消滅させたらどうなるか? 民間需要が削減されるので、こちらもデフレを加速させます。
したがってGDPは停滞ないし減少します。
安倍政権でのGDPの増加の最大要因は、内需ではなく世界経済の拡大による外需です。しかしその外需も1~3月期GDP速報で外需ズタボロ・民需も減少 消費税増税など論外で書きましたとおり、不透明さを増しています。
仮に日本が1997年に緊縮財政にかじを切ることなく、経済成長を続けていたらどうなっていたか? 藤井聡京大教授の試算によれば1000兆円のGDPになっていたのだそうです。
逆説的に、財政再建や財政健全化を至上命題としたからこそ、GDPが増えず、対GDP比での赤字国債が累積したのです。
安全保障を重視する”保守”ならば、消費税増税反対こそが真っ当
様々に解説してきましたが、消費税増税が日本の国力を毀損し、イノベーションを低下させ、国民を貧困化し、安全保障すら毀損するとご理解いただけたかと思います。
現在のところ、立憲民主党や共産党、れいわ新選組といった「どちらかというと左派」の政党が、消費税増税に反対をしています。私は上記をかなり好意的に捉えています。
一方で報道では日本維新の会も消費税凍結を掲げるようですが、私は維新の会だけはどうしても支持する気になりません。
消費税増税反対の理由が「身を切る改革に反する内容が含まれるから」という、バカバカしいものだからです。
自民党は報道を見る限り、公約でも消費税増税を掲げて参院選を戦うようです。保守と呼ばれる政党が、日本の安全保障を危うくする政策を公約にするのです。
なんとも狂った状況ではありませんか。
ぜひとも「保守」を自認する有識者には、「消費税増税なんてとんでもない!」と声を上げてもらいたいものです。
※9割以上は「どうせビジネス保守、安倍政権の提灯持ちなので無理だろう」と理解しております。