小池晃の国会質疑動画と年金問題・マクロ経済スライドのMMT的見解

この記事は約5分で読めます。

 現在、小池晃議員(共産党)の年金問題での国会質疑が、話題になってます。

 上記の動画は1週間もたたずに、300万回近い再生数です。
 なぜこれほど再生されるか? もちろん拡散している人たちの影響も大きいのですが、原因は「国民の年金不安」でしょう。

 年金不安で「消えた年金」「老後に2000万円必要」などが話題になりました。年金不安の原因は、マクロ経済スライドにあるのではないか? と私は睨んでいます。
 マクロ経済スライドをまず解説します。また現代貨幣理論(MMT)の観点から、年金と小池晃議員の国会質疑も解説します。

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マクロ経済スライドで55歳以下は、年金を損する?

 年金問題では「現役世代が少なくなり、高齢層を支えきれない」などの議論が聞かれます。後述しますが、これは間違っています。

 マクロ経済スライドは、マクロ経済スライドってなに? | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省が詳しいです。
※以下、マクロ経済スライドの画像はすべて上記から引用してます。
 要点のみ解説します。

年金の給付費と保険料収入のバランス

 上記ページからですが、年金とはこのようなイメージで語られます。マクロ経済スライドとは、端的にいえば「現役世代から徴収する保険料と、年金給付比をバランスするために『年金額を削る制度』」です。

 一気に削ると不満が出ますから、以下のように時間をかけながら削ります。

マクロ経済スライドの期間

 現役高齢層の年齢と人口ピラミッドから計算すると、2030年代中盤には人口減という形で、人口ピラミッドはある程度バランスが取れます。
 調整期間とはおそらく、それまでの間であろうと思われます。

 この調整期間中は、現役世代は損をし続けます。詳しくは60歳以上は年金の「納め得」で、55歳以下は「納め損」。世代間格差に見る社会保障費の問題とは?|みんなの介護ニュースが、良いと思います。

マクロ経済スライドはどういう仕組み?

マクロ経済スライドの図

 上記が厚生労働省の記事の画像です。
 賃金が上がる(好景気・インフレ)の場合、そのまま年金額も上がると少子化に対応できない。したがって「実質の年金額を減少させる」という理由で、マクロ経済スライドは存在します。

 例えば名目で賃金、GDPともに5%増加しても、年金は2.5%改定に留められるわけです。名目の年金額は「変わらない」「もしくは上がる」ので、不満は出ないだろうということでしょう。

マクロ経済スライドの新自由主義観点

 「お金のプールがあると思っている©三橋貴明さん」はなかなか名言です。主流派経済学の貨幣観の話です。

 「徴税して予算を組む」が一般的イメージでしょう。これは完全に嘘っぱちです。
 2018年度の所得税の徴税はいつで、2018年度の予算執行はいつですか? 徴税は2019年の3月の確定申告です。しかし2018年の予算は執行されますよね?
 「政府が先に支出する」現象を、スペンディングファーストといいます。

 マクロ経済スライドは、「徴収して使う」というイメージから生まれました。これは均衡財政主義・小さな政府・緊縮財政の思想に基づいています。
 なにせ、「保険収入が足りないから、年金給付を減らす」が目的です。

マクロ経済スライドは現代貨幣理論(MMT)では必要ない

 マクロ経済スライドに対して、現代貨幣理論(MMT)でいくつかの論点を示します。

  1. 社会保障費は公共事業ほど、経済波及効果が高くない=インフレ効果が少ない
  2. よって、社会保障費を潤沢に使っても大丈夫なはずだ

 現代貨幣理論(MMT)の説明は省きます。おおよそはMMT(現代貨幣理論)とは?世界一わかりやすく解説【MMT初心者向け】 – 進撃の庶民でまとめていますので、ご参照ください。

 現代貨幣理論(MMT)では「(過度の)インフレにならない限り、自国通貨建て国債はいくらでも発行できる」となります。
 したがって少子高齢化だの、保険料が現役世代から足りないだのは、関係ありません。
 論点は「社会保障費を潤沢に使えば、インフレ加速するかどうか?」だけです。

社会保障費は公共事業ほどに、インフレにする効果はない

 消費性向、という言葉をご存知でしょうか? 簡単にいえば「いくらもらったら、いくら使うか? いくらを貯金するか?」です。
 もらった額を1として、定額給付金ではおよそ0.4~0.7でした。消費税増税の軽減税率では、藤井聡京大教授が0.5以下だろうと試算してます。

 では公共事業はどうでしょう? 使う=消費=需要です。公共事業は政府が、お金を使います。したがって消費性向は1になります。

 ここに経済効果を生み出すものとして、乗数効果が加わります。簡単な言葉でいえば、経済波及効果です。これはおよそ2~4ほどではないか? といわれます。
※財務省は1.1と強弁してます(笑)

 経済効果(インフレ加速効果)は「消費性向x乗数効果=名目GDP増加」で表されます。

 したがって社会保障費は、公共事業よりインフレ効果が「低い」のです。

 現代貨幣理論(MMT)では、国債発行はインフレ制約がついて回ります。社会保障費はインフレ効果が少なめです。
 つまり抑制する必要があまり、ありません。イコールで「国債発行をして、年金を支給する」ことだって、全くOKなのです。

 マクロ経済スライドは「保険料から、年金を払わなきゃ」というモデルでした。現代貨幣理論(MMT)的には、そのようなことはありません。
 年金不安を解消したいなら、日本は現代貨幣理論(MMT)を採用するべきでしょう。

小池晃議員の正しいことと、正しくないこと

 冒頭の小池晃議員の主張は、端的にいえば「大企業や金持ちから、取って年金に使え」です。

 私は共産党に少し詳しいのですが……そのロジックは、消費税廃止でもいってるぜ(笑)
 つまり、財源として示したものを「年金に使え」「いややっぱり消費税廃止の財源」と使いまわしています。

 年金を心配したり、弱者を応援する共産党や小池晃議員に、私は好印象を持っています。が、理論的には間違いです。
 堂々と「国債を発行して、年金に当てたらいいじゃないか!」と主張するべきではないか? と思います。

 年金問題をMMTに落とし込んだ議論など、してみてはいかがでしょうか?

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