日本の失業率の推移とアベノミクスの失敗-データから読み解こう

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 最近では「アベノミクスは失敗した」「アベノミクスの実態は?」と、ようやく報道され始めました。
 しかしこの報道は、事実と異なります。衝撃的でしょうが、まずアベノミクスといわれた「本来のもの」は、そもそも実行されていません。
 したがって「アベノミクスは失敗して当たり前」です。

 安倍政権は失業率の低下を、さも自分たちの手柄のように喧伝します。これは事実と異なります。せいぜい「安倍政権は民間の自立回復を、多少しか邪魔しなかった」という程度です。

 失業率のトレンド、就業者数、人口構造の変化などから、アベノミクスの失敗を読み解きます。

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日本の失業率の推移とトレンド

 まず日本の失業率の推移を見ましょう。

 2008年のリーマン・ショック以降、有効求人倍率も失業率も2010年を起点に回復してます。
 実際の銀行貸出額の推移、銀行貸出DIも2010年付近からトレンドが変化します。ただし、大企業中心にですが。

引用元:第5章 中小企業の成長を支える金融

 安倍政権は2012年末、実質2013年から発足しました。全てのトレンドの転換は2010年ないし、2011年で民主党政権下です。
 失業率や銀行貸出DI、景気のトレンド転換は「民間の自立回復」だというのは自明です。

アベノミクスの目玉である、異次元の金融緩和は失敗政策

 アベノミクスの影響はなかった、と明示しました。アベノミクスの目玉は、リフレ派の主張を取り込んだ金融緩和でした。
 金融緩和が失業率や、銀行貸出DIに影響を与えたというデータは存在しません。

 少なくとも景気、失業率などに金融緩和は影響しなかったのです。
 事実、金融緩和をダラダラと続けても、デフレ脱却も目標インフレ率も達成してません。

 現代貨幣理論(MMT)的に説明します。金融緩和とは「日銀が国債を引き受け、通貨を”日銀当座預金”に発行する」ものです。
 日銀当座預金は、市中銀行か政府しか使用できません。
 市中銀行は当座預金に頼らずとも、信用創造で貨幣を創出できます。信用創造とは「誰かが借りて使う」ことでしか働きません。

 政府、企業、個人のいずれかが「借りなければ」信用創造はされません。
 金融緩和とは「国債と通貨を交換するだけの作業」ですから、信用創造も起こりません。したがって市場の需要が増えるわけもありません。

 ここまで論じれば自明です。金融緩和は景気にも、失業率にも、インフレ目標にも無力でした。アベノミクスの失敗でしょう。

 アベノミクスの評価は「消費税増税で、民間の自立回復の邪魔をした」くらいでしょうか。

人口構造の変化に見る、若年層の失業率と非正規率の低下

 昨今、若年層の失業率の低下が取り沙汰されます。実際に若年層の失業率は、低下しています。また、若年層の非正規の割合も低下しているようです。

参照:20代前半の失業率は4.7%…若年層の労働・就職状況をさぐる(不破雷蔵) – 個人 – Yahoo!ニュース

 若年者の失業率、非正規率の低下はと、他の世代を比べると「人口構造の変化」が最も大きな要素ではないか、と思われます。

労働力調査(基本集計)平成30年(2018年)平均(速報 … – 総務省統計局

 上記ではトレンドの転換が2013年に始まっています。
 ただし業種別内訳を見ますと、社会福祉・医療が最も多くなっています。(引用元は同上)

 これも人口構造の変化をしめす、一つの証左でしょう。製造業や農林水産業は、相変わらず減っているのが実態です。
 逆説的に、介護需要の増大によって現在の景気は支えられている、と解釈可能かもしれません。

人手不足は資本主義の健全な姿であり、労働者の味方

 報道では人手不足が騒がれます。報道と一緒になって、労働者までもが「人手不足が問題だ」と考えるようです。これは大きな間違いです。

 第一に人手不足は、資本主義にとって健全であること。人手不足とは「供給能力が足りない」ということです。
 いままで「デフレ脱却だ!」といっていました。それはインフレ、すなわち需要>供給にするためです。
 すなわち「人手不足」にするためです。

 ……人手不足にいざなったら、「人手不足を解消しなきゃ!」=「デフレにしなきゃ!」ってどういうことですか。

 ちなみに、世界中でデフレが20年以上続いているのは日本だけ。以下の図のように、日本は相対的に、どんどん貧しくなっています。
 現在でも、このトレンドは殆ど変わっていません。アベノミクスの失敗だけとはいえませんが、失われた20年の失敗でしょう。

引用元:三橋貴明「国債破綻の嘘」

 人手不足は労働者の味方です。逆に考えましょう。人あまりなら、労働者の待遇はよくなりますか? それとも悪くなりますか?
 私も氷河期世代の1人ですが、当然悪くなります。労働市場の買い手市場化は、労働者にとっては1つも良いことはありません。

 人手不足こそ、労働者が良い待遇、良い所得を目指せる環境なのです。
 移民などで、この売り手市場の現在を手放すべきではありません。

アベノミクスは実行されていなかったという真実

 アベノミクスは2013年当初、「金融緩和・財政出動・成長戦略」の三本の矢と呼ばれました。これは「金融緩和で国債引受をして」「財政出動で需要創出」「そして成長戦略で重点投資する」という意味に解釈できます。

 いちばん重要なのはいわずもがな。財政出動です。アベノミクスの当初の骨格は、財政出動だったのです。
 上記が本来のアベノミクスとすると、2014年からのアベノミクスは「骨抜きの意味のない政策」だったことになります。

 アベノミクスは実行されいませんでした。
 詳しくは、アベノミクスは実行してない?嘘のアベノミクス詐欺と安倍政権の6年間をご覧ください。

 実行されていない以上、「アベノミクスの成果」などあるはずがありません。金融緩和だけに頼った時点で、アベノミクスは失敗していたのです。
 アベノミクスを成功させるなら、当初のとおりに積極財政をするべきでした。

本稿のまとめ

  1. 失業率の低下も景気も、2010年からの民間の自立回復
  2. 就業者数の増加も、労働指数が遅行指数であると考えれば民間の自立回復
  3. アベノミクスは実行されず、消費税増税で邪魔をしただけだった
  4. したがってアベノミクスは失敗した
  5. 若年層の失業率の大幅低下は、人口構造の変化によるもの
  6. 人手不足は労働者を有利にする
  7. 資本主義は適度なインフレ、人手不足こそが健全だ
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