前回記事(『【悲報】経済評論家上念司さん、明石順平氏に完全論破されてしまう』)で解説したように、一部界隈で上念司が弁護士の明石順平さんに論破されたことが話題になっていますが・・・
この明石さんという方は、財政危機論者なんですね・・・なんつーか以前から危惧していたことが現実になったなー、と。
まあ、なんでこんなに積極財政派が不利な状況になってるか?については、もう散々述べているのでもはやここでは何も書きません。ただ、もう言いたいことは
全部、俺が1年前に言ったとおりになってるよね?
ということ。当たり前のことが当たり前に起こってるので、もはや特に何か言いたいことも無いです。これまでも積極財政派は負け続けたし、今後も負け続ける。それだけ。
唯一可能性があるとしたら、むしろ左派の側から積極的な格差是正と共に、国民の所得向上と、快適なインフラの強化の必要性から積極財政を唱える派閥が出てくることですが、まあ、この後説明するように、ブラック企業問題を取り扱う弁護士である明石氏が財政危機論者であったり、野党の政治家が実質的に大企業や資本家の利益を優先する実質的な自民党の2軍(白井聡の言葉を借りれば第二自民党)状態と化しているので、左派や野党から新しいムーブメントが積極的に沸き起こってくることを期待するのも困難でしょう。
理想のパターンは、左派の側から新しいムーブメントとして積極財政を肯定する一派が出てきて、既存の保守派の積極財政派と合流をはかり、イデオロギーの左右を超えて大きな流れを作っていくことでしたが、現状は左派からも新しいムーブメントは発生せず、保守派の積極財政を主張する一派は実質的な壊滅状態。先に「1年前に予言したことが実現している」と書きましたが、あえて予想の外れた点を挙げると、「まさか、ここまで酷い壊滅的状況になるとは思わなかった」というところでしょう。
で、まあ明石氏の問題に話を戻しますが、『国家戦略特区BLOG』のみぬささんも明石氏の財政危機を煽る論調を批判しています。
ここで一応私自身の立場を簡潔に説明すると、私自身以前ほどは積極財政派の主張に与してはいません。もちろん、今後すぐに何らかの形で政府の財政問題がカタストロフィーに陥るような局面は想定しておらず、性急な財政問題の改善が経済を悪化させるであろうことは認めていますが、同時にどこまでも財政赤字を拡大し続けることが健全な経済運営であるかについては疑問の余地はあると思いますし、経済が改善した時点で何らかの形で増税を行うことで政府の債務の規模は縮小させるのが望ましいのではないかと思います。
が、それを考慮してもやはり消費税の増税はオカシイと思っていて、一つは単純に逆進性の問題です。弁護士の明石氏はブラック企業問題を取り扱っているので、当然ながら労働者の待遇改善や貧困層の生活水準の向上は氏にとっても重要な課題であると推測します。そのように考えた際に、果たして財政問題を解決させる案として消費税増税は正しいのか?
例えば、戦後は99年までおおよそ一貫して所得税の累進課税の最高税率は低下し、現在では50%程度になっているようですが、コレもまだ引き上げの余地が残っているでしょう。
(『1%の富裕層・大企業のためではなく99%の国民のための政治。共産党の財源政策』)
また法人税も、近年急激に引き下げられており・・・
(『【税制改正】偏差値50になるためのH28年度税制改正論点』)
また、日本の税制でたびたび問題になるのは、株などの資産から得られる売却益や配当金にかかる税率の低さです。必ずしも消費税増税が絶対悪であるとまでは言わなくとも、これらの個々具体的な税や税率を見ていけば、まだまだ消費税を増税しなくとも改善の余地は大いにあります。
また、先のみぬささんのブログ記事では明石氏の主張の矛盾を指摘していますが、私も「消費税増税により物価が上昇し、実質賃金が低下して、庶民の生活が苦しくなり購買力が低下した」という話と「消費税を25%まで上げるべし」という主張には明らかな矛盾や齟齬があるように思います。一言で言ってしまえば、これでは安倍政権が消費税を引き上げたことを「良かった」と主張しているのか、「悪かった」と主張しているのか分からないのです。さすがに、「消費税は25%まで引き上げるべきだが、安倍政権が消費税を8%に引き上げたのは間違った判断だった」という理屈は無理があるでしょう。
また、逆進性の問題からは消費税増税には反対すべきだと思っていて、仮にブラック企業問題に力を入れて、超絶的な努力とはたらきかけにより、ブラック企業の労働分配率を1~3%高めたとしても、消費税増税を数%引き上げるだけでもほとんどその成果は飛んで消えてしまうのではないでしょうか?
ここまであからさまに「金持ちと企業に課税しろ!!」「消費税は増税するな!!」と主張するとあまりにも共産党的な発想であると思われそうですが、少なくとも財政をコレ以上極端に悪化させることもなく、なおかつ庶民や貧困層の生活水準を今より悪化させることのないようなカタチで経済を運営するにはそれしか正解はないのではないかと思います。