ロシアによるウクライナ侵攻で、我が国の国防・安全保障問題が改めて注目されています。核兵器、憲法9条、防衛費などをめぐって議論百出。ウクライナのような目に遭わぬため日本はどうすべきか? 積極財政の立場から考えてみたいと思います。
ウクライナ侵攻で明らかになったこと
ロシアによるウクライナ侵攻でいくつかのことが改めて明らかになりました。
ア 侵攻~戦争は実際に起こり得る
イ アメリカは核兵器を持つ国と戦わない
ウ 国連安全保障理事会は無力である(ロシア、中国が拒否権を持っている)
エ 侵攻された側にダメージが大きい(インフラが破壊され、国民の命と暮らしが直接脅かされる)
ほかにも気づくことは多々ありますが、特に重要なのは上の4つだと思います。
アメリカの従属国状態で、国防を米軍やその核の傘に頼る我が国。
悪意ある国に対しても外交交渉、最終兵器は遺憾砲。
世界平和を脅かす者には、国連が厳しい制裁を加えてくれると期待してきました。
しかしその前提は崩壊しています。
先の大戦以降、「戦争放棄・平和主義・非核三原則」を金科玉条としてきた我が国ですが、今や根本から考え直すべき場面です。
アメリカも国連もあてにならない
核を備えた隣国の脅威
我が国が直面する脅威は中国と北朝鮮です。
北朝鮮は「週刊ミサイル」を撃って来ます。拉致被害者も返そうとしません。
中国は経済規模・軍事費で我が国を大きく上回る強敵。
それが尖閣諸島を我が物としようとしていますし、沖縄までも狙っています。
また、中国は「一つの中国」を主張し、台湾侵攻~併合を目論んでいますが、これも我が国にとって大いなる危険。大切な友好国が失われる上に、我が国の海上輸送の道を押さえられることにもなるからです。
この2国は、いずれも核兵器を備えています。
アメリカと国連は動くか
いざという時、アメリカは動いてくれるか?
軍を出して、日本や台湾のために若者の命を犠牲にしてくれるか?
核攻撃を受けるリスクをおかしてくれるのか?
日米安全保障条約、日米同盟がありますので、NATO未加盟のウクライナよりは、動いてくれる可能性は高いかもしれません。
とはいえ、ゼロでないという程度。動いてくれる保証はありません。
「アメリカは動かない」という前提で対策を考えるのが、大人というものでしょう。
国連についても、安全保障理事会で中国が拒否権を持っている以上、まるで当てにはなりません。
自らの防衛力を高めたいが、専守防衛は危険
アメリカも国連も頼れないとなれば、「自らの防衛力/軍事力を高める」の一択です。
しかし、ここにも問題があります。
自衛できても専守防衛
戦争放棄の憲法9条があっても、自衛権は容認されています。
場合によっては集団的自衛権も認められるところですが、あくまで「専守防衛」です。
この「専守防衛」は、そもそも「本土決戦」にならざるを得ません。
ミサイルを撃ち込まれ、爆弾を落とされ、敵軍の侵攻を受けます。
今のウクライナの状態です。敵が攻撃を止めるまで、停戦合意がなされるまで、ひたすら防ぎ、迎撃しなければなりません。傷つき、消耗し、命も資産も失われ続けます。
経済制裁などで敵国が音を上げ、戦いが終わったとしても、失われたものは戻りません。甚大な被害はそのままです。まして負けてしまったら、たとえ生き永らえたとしても、自由も文化も誇りも失うことになりかねません。
最初の一発を撃たせるな
このような目に遭わないため重要なのは、最初の一発を撃たせないこと、侵攻を受けないことです。
国民・国家を守るために、ミサイルを撃とうとする敵基地などへの攻撃や、侵攻しようとする敵軍への先制攻撃を可能とせねばなりません。(外交努力が効かない場合があることは、今回証明済みです)
また、核兵器についても保有や共有(米国などとのシェアリング)を考えるべきです。
核兵器は、他国が手を出せなくなる「最強のお守り」です。
核武装と憲法9条
もちろん、核武装には憲法9条の問題が立ちはだかります。
しかし「9条~平和主義」の眼目は「戦争が起こらない」ことでしょう。
それなら、ある意味で核兵器は「最も平和に貢献する」とも言えます。
他国の侵攻を受けなくなり、我が国も自衛のために戦争しなくてよくなるのですから。
また、共産党・志位委員長は、9条は日本に他国を攻撃させないためにある、というようなことをツイートしたそうです。
だとすると、9条は「他国が自国より大切」という意味を持つことになります。
そんな日本国民にとって無意味有害な条文なら、さっさと改めたいところ。
9条2項(戦力不保持)の削除、敵基地攻撃、先制攻撃について、タブーを排して早急に検討すべきだと思います。
もっとも、改憲論議や非核三原則の見直しは時間がかかります。
賛成・反対で国民を大きく分断しないよう、丁寧に議論、合意形成を図ろうとするなら尚更です。
国防・安全保障にも積極財政を!
国防予算、日本と中国
国防予算に目を転じますと、日本は世界で第9位にランクイン。
しかし、「平和主義の割に、なかなかの軍事大国」と安心するわけにはいきません。
おとなり中国はドル換算で日本の6倍、2位となっています。
経済規模(GDP)拡大と共に、どんどん軍事力も拡大させているのです。
このような国が、我が国の領土を狙って圧力をかけてくるのですから、レベルの低いところで満足しているわけにはいきません。
外交において、交渉するにも抗議するにも、「軍事力」の背景があると言葉に重みが、力が出ます。
まずはドイツにならえ
日本は国債発行などで、大いに防衛費を拡大すべきでしょう。
自衛隊員の待遇改善、人員確保、装備充実、サイバー戦力強化、国内防衛産業振興など、やるべきことは山ほどあるはず。
令和3年度(2021)、補正予算と合わせて防衛費は6.1兆円となりました。
ようやくGDP比1%の枠を超えましたが、まだまだです。このままNATO標準の2%も超えたいところ。あのドイツも2%超への大幅引き上げを決意したとのことですから、我が国にできないことはないでしょう。
国防は国民の安心・安全に直結する事項です。
それを満たすべく、積極財政で大いに予算を投じて欲しいと思います。
国防に財政出動すると、福祉がおろそかになる?
ところが、防衛費増には横槍が入ります。
地球市民的な方々、経済成長を忌避する環境至上主義の方々が反対するのはわかるのですが、意外なところからも反対の声が上がりました。
積極財政を主張する「れいわ新選組」、前回の衆院選候補であった田島つよし氏です。
「コンクリートも人も!」として、消費税廃止、公共事業増、社会保障充実の積極財政を主張していた人ですが、防衛費は抑え、経済開発や福祉に充てるべきという考えのようです。
しかしこれはちょっと承服しかねる意見。
政府は予算を使え、必要な分野すべてに!
れいわ新選組も財務省も言うとおり、我が国に財政破綻の心配はありません。
自国通貨発行、国債は全て自国通貨建て、変動相場制の「三種の神器」がそろった我が国に「国の借金」問題はないのです。
すなわち、国内の生産力・供給力が許す限り、防衛にも福祉にも教育にも国土強靭化にも大いに予算を投じ、強化することができる。
防衛費増は、自衛隊員の生活ばかりでなく、機械・建設・運輸・情報など関連産業で働く人々の生活向上にもつながります。
防衛費の件で仲違いすることなく、積極財政派は「とにかく政府は予算を使え、必要な分野すべてに!」と主張すべきです。少なくとも、他の分野の足を引っ張るのはやめた方が良い。そうでなければ、政府を覆う消極財政の壁を打破できません。
トップ写真:第7師団創隊58周年及び東千歳駐屯地創立59周年記念行事__陸上自衛隊
田島つよし氏、困ったものですね・・・。
ドイツのショルツ首相だってどちらかと言えば左派に属するものだというのに、その首相がやった防衛費増額の意味がわからないのですかね・・・・。
ウクライナの事情を見ても、まだ対岸の火事のつもりなのか・・、それとも党首さん同様、今だにアメリカが悪い、ロシアもある意味アメリカの被害者みたいな論調なのでしょうか・・?
それともこのあいだ、みぬささんが紹介してくれたれいわ支持者のブログみたいに、アメリカ嫌いがこじれて陰謀論に走ってるとか・・・・・。(それはないとは思いたいですが・・・)
もはや今回の事態で、共産党でさえ、自衛戦力の保持は完全に認めざるをえなかったのに・・。
左派に多い護憲志向の方々は、「国民の生活が第一」と考える一方で、「軍は国民を守らない、むしろ政府・権力者のためにある悪しき存在」という認識です。この誤った色眼鏡のせいで、「軍事費を削って福祉に回せ!」とやってしまう。財務省・消極財政派・親中派・構造改革派の思うツボです。
せっかく積極財政に目覚めたんですから、この色眼鏡も外してほしいものですね。
共産党も少しはマシになったかと思った矢先でこれですよ・・・・(“A`)
共産・田村氏が発言訂正 自衛隊の物資提供「賛成できない」
https://www.sankei.com/article/20220305-3D6WC47OC5PSRJO4M3QR54WXKY/
防弾チョッキが武器輸出とか、どうかしてますよ・・。
まあ、共産党の考えはそういうものでしょう。本心では自衛戦争も良くない、攻め込まれたら降参して命を守るべき、と思っているのでは。彼らに対する疑問・不信がさらに国民に広がるでしょうね。