岸田政権はすべての女性を働かせ、カネを稼がせるつもりのようです(女性の経済的自立の推進)。しかしこれは、少子化をさらに加速させる愚策にほかなりません。また、親と一緒にいたいという乳幼児の願いを踏みにじるものでもあります。
出生率最低を更新 消費税増税で腰折れ?
出生率の回復と再下落
21年の出生率1.3 出生数81万人で過去最少更新 下落幅縮まらず(毎日新聞)
昨年の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子の数)は1.30と6年連続低下。出生数は81万人で過去最低を更新だそうです。
出生率は平成17年(2005)の1.26から、平成27年(2015)までは緩やかに回復、1.45まで上がりました。上記記事では団塊ジュニア世代が出産適齢期に入ったことを回復の原因としていますが、
○東日本大震災後、「家族の絆」が見直されたこと
○アベノミクス1年目の積極財政による景気浮揚
といったことも後押ししたのではないかと思います。
しかしその後の出生率はまたも下がり始め、昨年は1.30。
消費税増税と女性の高学歴化・社会進出
これはやはり、平成26年(2014)の消費税増税に端を発するのではないでしょうか。
その後も政府は「プライマリーバランス黒字化目標」に縛られ、新規国債発行を抑える緊縮財政を続けています。
十分な収入と将来の展望が持てる若者は一部に過ぎません。
逆に、結婚できず子供も持てない人が増えています。
加えて、女性の高学歴化・社会進出による晩婚化も少子化の大きな要因です。
平成27年(2015)時点で、夫婦の理想とする子供の数は2.32人にもかかわらず、子供が0~1人の夫婦が24.8%、約1/4。30代以上での出産が多くなっているためです。
男女とも低めの賃金で働け
岸田政権の女性活躍推進策
そのような中、岸田政権は女性活躍推進策をまとめた重点方針を決定しました。
岸田総理が言うことには、
「女性の経済的自立を新しい資本主義の中核と位置付け、女性の所得向上につながる施策を強力に進める」
この重点方針では、企業に男女間の賃金開示を義務付け、格差解消を図るとされています。
また、「結婚すれば生涯、経済的安定が約束される『永久就職』は過去のもの」で、女性が経済的に自立できる環境をつくるとのこと。
人手不足解消、設備投資を節約~配当金増
その意味するところは、次のようなことでしょう。
●すべての女性を労働市場へ送り出せ
⇒働き手が増えることで、個々の賃金上昇が抑制される
●女性もカネを稼いで、経済的に自立しろ
⇒家事・育児に専念し、家庭を守る女性は輝いていない
●男性は家庭を支えるほどに稼がなくていい
⇒男女とも低めの賃金で働け
財界としては労働者を増やすことで、人手不足解消、設備投資も節約でき、株主への配当金を増やせます。大企業や投資家の思惑が透けて見えますね。
これで結婚する若者が増え、出生率も上がるとは思えません。
ブレーキどころか逆噴射政策ではないでしょうか。
母親は乳幼児を保育園に預けて働け!
乳幼児保育の増加
女性のほとんどは、自身より収入の多い男性と結婚したいと思っています。
その希望を踏みにじるような政策が、婚姻増につながるわけはないでしょう。
結婚し、子を授かったとしても、賃金収入が抑えられたままではどうなるか?
早いうちから、場合によっては0歳時から、母親は子を預けて働きに出なければなりません。
乳幼児保育の増加です。
親よりも、社会が子育て
核家族の多い我が国において、両親を労働市場に出すとなれば、子供の養育責任を誰に負わせることになるでしょうか。
「社会で子育て」しようという話になります。
平成21年(2009)、政府の幼保一体化ワーキングチーム座長が雑誌「保育の友」で次のように述べているそうです。
これまで親が第一義的責任を担い、それが果たせない時に社会(保育所)が代わりにと考えられてきましたが、その順番を変えたのです
『ママがいい! 母子分離に拍車をかける保育政策のゆくえ』松居和/著 グッドブックス p.14
親は子育てより仕事だ、母親は乳幼児を保育園に預けて働け!
という政府・財界の意図が感じられます。
乳幼児の幸せはどこへ
子育ての幸せな時間を奪われる
今や半日、11時間保育が標準とされています。
「女性活躍」「女性が輝く」といった美名の下、母親と一緒にいたい子の望みは蔑ろにされ、母親は子育ての幸せな時間を奪われます。
市場経済、競争社会において「活躍」「成功」して幸せを得られるのは、ほんの一握りに過ぎません。
一方、余裕をもって幼い我が子と十分な時間を過ごせれば、ほとんどの人々は大きな幸福を得られます。もちろん、子供たちも幸せです。
「子育ては苦痛・負担」という認識
しかし、社会においては逆に「子育ては苦痛・負担」という認識が広げられています。
保育の無償化も進み、ますます親は乳幼児を預けて働きに出ます。
疲れて帰宅したところで子の世話をするとなれば、そういう認識を覚える人が増えて当然です。
もちろん、限られた時間で精一杯の愛情を子に注ぐ親も多いことでしょう。その努力は尊いものです。
とはいえ、このような状況で出生数が増えるとは思えません。幸せな乳幼児が増えるとも思えません。
積極財政で若者を豊かに
少子化対策には、結婚を増やすこと
少子化対策には、結婚を増やすこと、特に20代での結婚を増やすことが効果的です。
我が国の政府には、国債発行を通じた通貨発行ができます。
財政赤字を負うことで、国民を黒字にできるのです。
財政赤字といっても、帳簿上だけのこと。
変動相場制における自国通貨建て国債ですから、財政破綻の懸念はゼロ。
よって、少なくとも「所得が少なく、将来が不安」「結婚相手として、十分な収入を得ている人が見つからない」といった理由の解消は可能です。
公共事業や介護における労務単価増、公務員の正規雇用増、最低賃金上げ、消費税ゼロ、社会保障負担減などが考えられます。結婚や出産における奨励金支給もいいですね。
一馬力でも子供二人以上OK
とにかく、超積極財政で国民の所得を増やし、将来への展望を持たせることが肝要です。
特に、男性の年収が200~300万円増えると、女性にとって「結婚OK」な相手が増えることになります。
女性の年収も100万円ほど増えると、男性にとって「結婚OK」な相手が増えることになります。
もっとも、こちらは男性側の所得が十分に増えれば、必要な条件でなくなる場合が多いでしょう。
参考:「令和元年版 少子化社会対策白書」
目指したいのは、一馬力(片働き)でも子供二人以上を育て上げられる経済環境です。
共働きの場合も、「そうしないと暮らせないから」でなく、「働きたいから」そうする。
そのような余裕ある環境を、政府は作るべきだと思います。
「競争勝利」ばかりを礼賛する思想からの転換
しかし、その実現は、「女性活躍」という言葉に象徴される「個人としての成功」「金銭的成功」「市場競争における勝利」ばかりを礼賛・奨励する思想の下では難しいでしょう。
かつて我が国は「世界で最も子供が幸せな国」だったそうです。
それは、親が子と過ごす時間を「最高の幸せ」と捉えていたからに違いありません。
乳幼児は親、特に母親と一緒にいたいもの。
その願いをかなえてあげられるなら、それは大きな「成功」なのです。
あらゆる経済政策は、この「成功」を支えるためにある。
多くの人が子を授かり、余裕をもって我が子と過ごせるようにすることが、政治の要諦である。
それくらいの思想的転換も必要ではないかと思います。
子育ては社会のものでなく、まず第一に親のものでなければなりません。
トップ写真:Mother & child by Robert Thomson