現在、世界的にコストプッシュインフレだと騒がれています。
それに伴い、日本もコストプッシュインフレになっていると主張する記事やニュースも。
しかし、本当に日本はインフレなのでしょうか?
今回の記事では、コストプッシュインフレの仕組みや原因についてわかりやすく解説。
くわえて、日本のインフレの現状についてもお伝えします。
コストプッシュインフレとは
インフレには2種類あります。
ディマンドプルインフレとコストプッシュインフレです。
ディマンドプルインフレは、需要増加に伴うインフレです。
通常、ディマンドプルインフレは需要増加に伴って供給が牽引され、好景気と雇用増加、所得の向上が発生します。
それに対し、コストプッシュインフレとは、原料価格などの高騰によるインフレのことです。
原油価格の高騰などの外部要因で起こることが多く、解決策がないことも珍しくありません。
代表的な例は1970年代のオイルショックです。
そのほかに、現在の世界的なインフレもコストプッシュインフレだと考えられています。
日本のコストプッシュインフレの現状
多くのニュースや記事が「日本はコストプッシュインフレだ」と書いています。
まず、それが本当かどうか確かめましょう。
インフレかどうかを確かめるためには、消費者物価指数を見ます。
消費者物価指数とはCPIと呼ばれており、食品やエネルギーを含むCPI、食品を除くコアCPI、食品とエネルギーを除くコアコアCPIの3つがあります。
基本的にコアコアCPIが物価動向です。
統計局のWebサイトによれば、コアコアCPIの3月の数字はマイナス0.7%でした。
月次では1月がマイナス1.1%、2月がマイナス1%、3月がマイナス0.7%となっています。
なお、CPIでもそれぞれ1月が0.5%、2月が0.9%、3月が1.2%とたいした数字ではありません。
参照 統計局ホームページ/消費者物価指数(CPI) 全国(最新の月次結果の概要)
日本の現状をニュースや記事は「コストプッシュインフレだ!」とあおり立てますが、有り体に言えばデフレです。
じつは、日本はまだ「インフレだ!」と言えるほどインフレではありません。
マスメディアも有識者も、数字を見ずに騒いでいるとしか思えません。
なお、タマネギやジャガイモの値段高騰は北海道の干ばつが原因だそう。
タマネギやジャガイモの8割を生産している北海道では、急激な干ばつが起きています。
そのため、当面の間はタマネギやジャガイモの値段の高騰は避けられません。
原油と関係のないところでも値段の高騰が起きており、それが余計に我々に「インフレだ!」と印象づける結果になっています。
コストプッシュインフレの原因
世界的なコストプッシュインフレの原因は3つ考えられます。
- 原油価格の高騰
- コロナによるサプライチェーンの寸断
- ロシア・ウクライナ戦争における世情不安
たとえば、アメリカでは5%近いインフレが起きており、一向に収まる気配を見せません。
2022年の世界のインフレ率は7.4%に達するとの報告もあります。
繰り返しますが、日本は未だにコアコアCPIで見るならデフレです。
したがって、「インフレ対策をしなくては!」という段階ではありません。
むしろ、日本は現段階でインフレ対策をすることで、さらにデフレを加速させることになるかもしれません。
コストプッシュインフレへの対策
コストプッシュインフレへの対策は、国内の供給能力を投資で伸ばす以外にありません。
コストプッシュインフレとは、何らかの原料がボトルネックとなって起きるインフレです。
原油や天然ガス、小麦、トウモロコシなどの原料が原因になります。
これらの供給を改善することが、コストプッシュインフレの一番の対策です。
それができないなら、国内産業に投資して供給能力を伸長させるしかありません。
国内産業への投資は、さらなるインフレを招く恐れもあります。
だからといって、国内需要の削減(国民の貧困化)を行ってよいわけがありません。
日本でも一部で利上げが主張されています。
長期金利を利上げすることで投資需要を削減し、コストプッシュインフレを避けようとの狙いです。
しかし、コストプッシュインフレを避けるために国民を貧困化することは本末転倒。
決して利上げによるコストプッシュインフレ対策を許してはなりません。
まとめ
記事やニュースでは「コストプッシュインフレ!」と騒がれていますが、日本の現状はまだインフレではありません。
むしろ、デフレに近い状況です。
もし、コストプッシュインフレが昂進したとしても、金利引き上げなどの対策は愚策。
需要削減や国民貧困化を引き起こすからです。
コストプッシュインフレへの対策は、国内投資による供給能力向上しかありません。
今回はコストプッシュインフレについて解説しました。
数字によって正しく現状を認識しましょう。