日本でニュークリア・シェアリング(核共有)の実現可能性は?

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 ロシア・ウクライナ戦争の影響で、日本でもニュークリア・シェアリング(核共有)の議論が出てきています。
「ニュークリア・シェアリングで国防だ!」
「核共有で核抑止力を日本も持つのだ!」
「北朝鮮や中国への抑止力だ!」

 なんとも勇ましい議論です。
 ですが、大本のニュークリア・シェアリングへの正しい理解が必要です。

 ニュークリア・シェアリングは核抑止力にならないのみならず、自国内で戦術核を使用する想定すらあり得る協定です。

 今回の記事では、ニュークリア・シェアリングに対する誤解と幻想について解説します。
 くわえて、日本でニュークリア・シェアリングが実現するかどうかも議論しましょう。

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ニュークリア・シェアリング(核共有)とは

 ニュークリア・シェアリングとは日本語で核共有のことです。
 日本でのニュークリア・シェアリングのイメージは、アメリカと核を共有し、何かあったときには日本も核抑止力を発揮できる! というもの。
 しかし、このイメージは大きな間違いです。

 ニュークリア・シェアリングで実際に運用されている兵器は、戦術核B61です。
 戦術核B61とは航空機に搭載可能な戦術核で、ミサイルとは異なり、自力で目標まで飛んでいきません。
 したがって、戦術核B61は目標地点の高空から投下する運用方法となります。

 ニュークリア・シェアリングは、日本人がイメージしているように、ミサイルで敵基地に核攻撃を行うことではありません。
 むしろ、敵軍に侵攻されて、自国内で戦術核を使用する想定なのです。

 もともと、ニュークリア・シェアリングは核戦争が勃発して、戦術核に対して戦術核で対応することを想定して作られました。
 その場合、NATO奥深くまで入り込んだ敵軍に対し、戦術核を使用しなければなりません。
 同盟国領土で戦術核をアメリカが使用するには、同盟国による許諾が必要です。
 だからこそ、ニュークリア・シェアリングという仕組みが作られました。

ニュークリア・シェアリング(核共有)と核不拡散条約(NPT)

 核不拡散条約、通称NPTと呼ばれる条約に日本も加盟しています。
 ニュークリア・シェアリングはNPTに違反しているのではないかとの疑義もあります。

 なぜなら、ニュークリア・シェアリングは核保有国と非保有国で核兵器を移転、受け入れしているからです。
 そこで、アメリカ政府は以下のような解釈をしています。

  • 核弾頭や核兵器のコントロール権の移転は許されない
  • ただし、戦争が勃発すればその限りではない
  • したがって、ニュークリア・シェアリングはNPTに違反していない

 かなり無茶苦茶な解釈です。
 無茶な解釈になった理由は、NPT交渉時にニュークリア・シェアリングは秘密事項だったからです。
 NPTの採択は1963年であり、調印は1968年でした。
 このとき、ニュークリア・シェアリングは公開されていませんでした。

ニュークリア・シェアリング(核共有)のメリット・デメリット

 ニュークリア・シェアリングによるメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット①核保有した気になれる

 ニュークリア・シェアリングの一番のメリットは「核保有した気になれる」です。

 安倍晋三元総理や自民党内から、ニュークリア・シェアリングの議論が噴出しています。
 しかし、誰もニュークリア・シェアリングが「どのような兵器を使い、どのような想定で、どのように実施されるのか」について興味を払っていません。

 つまり、日本国内におけるニュークリア・シェアリングの議論とは、核保有した気になって安心したいがための議論です。
 だから、誰も実際の運用や具体的な兵器には興味がないのです。

デメリット①国内で使用する覚悟が必要

 ニュークリア・シェアリングは、敵国が侵攻してきたときに核兵器を「自国内」で使用する想定です。
 なぜなら、戦術核B61は航空機に搭載し、自由落下による投下しかできない代物なのですから。

 反論としては、「航空機で敵基地まで行って落とせばよい」などが考えられます。
 しかし、戦術核の管理・使用権どちらもアメリカが握っています。
 はたして、アメリカがアメリカ本土への核攻撃を覚悟して、同盟国のために核兵器を使うでしょうか?

デメリット②核抑止力にならない

 じつは、ニュークリア・シェアリングは核抑止力ではありません。
 敵基地攻撃能力のない軍隊が抑止力になりづらいように、敵基地に届かない核兵器もまた核抑止力として機能しづらい面があります。

 核抑止力は相互破壊確証が前提です。
 相互破壊確証とは、一方が核兵器を撃ち込んだら、核兵器によって反撃されることです。
 これによって、お互いに核抑止力が働くと考えられます。

 しかし、ニュークリア・シェアリングでは、敵基地まで核兵器を運べない可能性が高い。
 よって、ニュークリア・シェアリングは核抑止力としては機能しないのです。

デメリット③日本単独の意思では使用できない

 ニュークリア・シェアリングは、「核戦争後、アメリカの同盟国が敵軍に侵攻されている想定」作られた仕組みです。。
 その敵軍を戦術核で叩くのがニュークリア・シェアリング。

 しかし、アメリカといえど、さすがに同盟国内で核兵器の使用はためらわれます。
 そこで、ニュークリア・シェアリングと称して、同盟国内で戦術核を使用できる意思決定の仕組みができました。

 もし、ニュークリア・シェアリングをしたとしても、日本に核兵器の管理権・使用権はありません。
 管理権・使用権はアメリカが持ちます。

ニュークリア・シェアリング(核共有)は日本で可能か

 そもそも、ニュークリア・シェアリングとはNATOの仕組みです。
 NATOとは北大西洋条約機構のことで、日本は太平洋の国。
 この時点で、ニュークリア・シェアリングはほぼ実現性がないと考えられます。

 また、地理的な要因がなかったとしても、NATOへの加盟には集団的自衛権の容認が必要です。
 憲法9条の改正は必須でしょう。

 さらに、非核三原則の撤廃も求められます。

 安倍晋三元総理を含め、自民党内からは「ニュークリア・シェアリングも議論すべし!」との声が上がっていますが、あまりに非現実的な想定ではないでしょうか。

まとめ

 ニュークリア・シェアリングは主に、自国内に侵攻してきた敵軍に対し戦術核を使用する想定です。

 共有される核兵器は戦術核B61です。
 自由落下型の爆弾であり、航空機で投下することで運用します。

 ニュークリア・シェアリングは戦略核の抑止力とはなり得ません。
 戦略核のように射程がなく、敵基地攻撃は困難だからです。

 したがって、核抑止力としてニュークリア・シェアリングに期待するのは間違っています。
 ニュークリア・シェアリングを正しく理解し、議論しましょう。

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3 ヶ月 前

ニュークリアシェアリングは兎も角として、核兵器の話題がついにタブーを破られたのは良いことだと思いますね。(少なくとも話題にすることで中国・ロシアへの牽制の一助にはなるかもしれませんし)

核兵器を保有するかしないかは、その時々の世界情勢を見ながら臨機応変に対応すれば良いと思います。

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日本が戦略核兵器を保有することによって、ほんとに世界に際限なく核兵器保有国が生まれてしまうかもしれませんし・・、それが嫌ならNATOみたいにアメリカと完全な軍事同盟関係を結ぶか・・、もしくはニュークリアシェアリングを一歩進んで核兵器の独自開発はしないという制約付きで、戦略核兵器の日本政府への一部譲渡をアメリカにお願いするか・・・・。(まあこれをやるくらいならNATOみたいな完全な軍事同盟の方をアメリカは望むかもしれませんが・・)

それでも情勢しだいでは独自に戦略核を保有する道を選ぶか・・・・・。

まあ面倒な話しですけど、考察とかはしといたほうが良いでしょうし・・。

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まあただし、今現在、核は兎も角としても、少なくともドイツを見習ってGDP比の軍事費2%越えはすべきですね。

その上での積極財政での国土強靭化でしょうかね・・。

戦後日本のタブーが無くなるのは良いとは思いますが、吉田茂が自衛隊創設時に自衛隊員に訓示したみたいに、そういうことがない時代というのが本当は一番幸せだったのだなあと、過ぎ去ってしまった平和(偽りの平和だったとしても)の後ろ姿を見てちょっとしみじみと思ってしまいました・・・。

それと・・、もう一つコメントしようと思っていたのですが、またあんまり長くなりましたので、短めな記事っぽいなにかにしましたので、また、進撃さんのプラットフォームから、もう少し校正しましたら送らせていただきたいと思います。

どうぞ、よろしくお願いいたします。m(__)m

当ブログは2019年5月に移転しました。旧進撃の庶民
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