「日本人の所得は下落している!」
「安いニッポン!」
「海外と比べて日本の賃金は安い!」
最近、マスコミがようやく報じ始めました。
個人的な感想を言わせていただければ、10年遅いです。
日本の所得減少を突きつけるのが以下のグラフ。
我々はこのグラフを見て「大変だ!」と感じます。
しかし、所得減少の内容まで言及している記事はほとんどありません。
じつは、所得減少=賞与(ボーナス)減少でした。
一般労働者の月収(平均賃金)は減少しておらず、むしろ、微増です。
今回の記事では、所得減少=賞与減少である事実を提示するとともに、賃金の男女格差などの問題を浮き彫りにします。
くわえて、海外との比較や、都道府県別の平均賃金も紹介。
所得とはそもそも何か?
所得は収入とどう違うのでしょうか?
収入は「会社からもらった給与」「店舗の売り上げ」「バイト代」などです。
一方、所得とは収入から必要経費を引いた金額のこと。
店舗なら品物を売った金額が「収入」、原価や必要経費を引いた金額が「所得」となります。
会社勤めの場合、給与所得控除が引かれる前の金額が収入、引かれた後の金額が所得です。
必要経費を引いた後のものが「所得」と覚えておきましょう。
日本国民の平均所得とその推移
日本国民の平均所得と、その推移についておさらいしておきましょう。
2020年の平均所得
2020年の平均所得は433万円でした。
月収に計算し直すと36万円です。
※ボーナスは考慮していません。ボーナスを抜いた月収は約30万円です。
フルタイムで働いているとすると、時給2400円が平均となります。
手取額は約28万8000円です。
一人暮らしの平均生活費は16~17万円ほどですから、一人暮らしとしては十分な収入でしょう。
一方、2人世帯で1人が専業主婦だった場合を考えると、やや物足りない金額です。
1997年からの平均所得の推移
厚生労働省によれば、1997年の470万1000円をピークに日本の平均所得は下落しています。
2007年までは454万円をキープしていましたが、リーマンショックの影響で2009年は421万1000円に滑落。
その後、420万円弱~430万円強の間で推移しています。
改めて見ると、リーマンショックを境に賃金が回復しきっていない様がわかります。
くわえて、団塊世代の退職の時期ともかぶります。
給与の高い団塊世代が一斉に退職したことも、平均所得下落の要因の1つです。
1997年からの世帯所得の推移
世帯人員数も小さくなっているものの、世帯あたりの平均所得は大きく下がっています。
1997年の623万円をピークとして、2018年には514万円と100万円以上の下落です。
なお、平均世帯人員は1997年が3.0、2018年が2.5でした。
世帯人員あたりの所得にすると1997年が207万円、2018年が205万円となります。
したがって、平均所得の下落以上に、世帯人員数の減少が大きな影響を与えていると考えられます。
なお、世帯人員数で割ってみても、所得は下落ないし停滞でした。
一般労働者の平均賃金で比較
一般労働者の平均賃金が厚生労働省で公表されていました。
参照 令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
一般労働者とは、短時間労働者以外を指します(※1)。
つまり、フルタイム労働者の平均所得が上記の統計です。
ちなみに、一般労働者の平均賃金(月収)は1997年が29万8900円、2007年が30万1100円、2017年が30万4300円でした。
意外なことに、一般労働者の平均賃金は下落していません。
厚生労働省の定義で賃金とは、6月分の所定内給与額を指します(※1)。
したがって、賃金には賞与(ボーナス)は含まれていません。
とすると、平均所得の推移が下落しているのは、主に賞与(ボーナス)の減少が原因でしょう。
男女別平均賃金
2019年のデータを比較すると、男性の平均賃金は33万8000円に対し、女性は25万1000円でした。
男女の賃金格差は男100として女性74.3です。
1997年は女性が63.1でしたから、徐々に男女格差は縮小しています。
OECD平均の男女格差は13.6%ですから、日本の男女格差(25.7%)は他の国と比べて大きいです。
男女格差の是正は日本のこれからの大きな課題でしょう。
都道府県別平均賃金
都道府県別平均賃金では、東京都の賃金の高さが目立ちます。
2020年の全国平均賃金は30万7700円でしたが、東京都は37万3600円と7万円近く高いです。
そのほかに、高い都道府県は神奈川(33万5200円)、愛知(31万4100円)、京都(31万800円)、大阪(32万400円)でした。
逆に、低い都道府県は青森(24万500円)、岩手(24万5900円)、宮崎(24万8500円)、秋田県(24万6700円)などでした。
海外の平均所得の推移を日本と比較
海外と日本の平均所得を比較します。
日本の平均所得は転落しており、現在はOECD平均よりかなり下です。
OECD平均が4万9200ドルに対し、日本の平均所得は3万8500ドルでした。
国名 | 平均所得 |
OECD平均 | 4万9200ドル |
アメリカ | 6万9300ドル |
カナダ | 5万5300ドル |
ドイツ | 5万3700ドル |
イギリス | 4万7100ドル |
フランス | 4万5500ドル |
韓国 | 4万1900ドル |
日本 | 3万8500ドル |
まとめ
平均所得についてさまざまな公式発表からデータをまとめました。
平均所得が激しく下落している一方、平均賃金(月収)は下落していませんでした。
このことから、賞与(ボーナス)が1997年に比べて減少していると考えられます。
賞与が減少している原因は、デフレや非正規雇用の増加でしょう。
一方、平均賃金の男女格差は徐々に狭まってきています。
とはいえ、OECD平均の2倍ほどの男女格差があるため、是正は急務です。
賞与を含まない平均賃金は減少していませんが、1997年からすでに3回にわたる消費増税が行われました。
そのため、実質賃金や可処分所得は減少しています。
今回のデータ分析では「平均所得減少=賞与減少」「日本の男女格差は大きい」「実質賃金や可処分所得は下がっている」といったことがわかりました。