政府が為すべき経済政策は極めてシンプル

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TVやネット、雑誌などで経済論議に見るにつけ、増税緊縮脳の連中が、「日本は十分に財政出動しているけど、借金が増えるばかりで全然成長できなかった。これ以上のムダ遣いは次世代へのツケ回しにしかならない。これからは成長戦略に基づく構造改革しかない!」と威勢のよい妄想を振りまく姿をよく目にします。

 

彼らは、単に生理的嫌悪感から財政出動を忌み嫌っているだけで、そこに論理的な一貫性や合理的理由は存在しません。

 

私は、彼らの妄想や幻覚の発露を見るたびにいつも思います。

「なぜ日本では財政出動が効果を発揮しないのか?いやいや、そもそも日本ではまともな財政出動が為されていないだけのことでしょ? カネが使われていないのに乗数効果が起きるはずないだろ! 政府が増税や社保負担を際限なく国民に押し付けるという「フリーランチ体質」が染みついた政治体制下で国民の貧困化は深刻化しているんだが? カネを持っていない国民が懸命に消費に勤しむなんていう“打ち出の小槌”も“カネのなる木”も存在しないぞ!」と…。

 

『米国が100兆円インフラ投資へ、世界に逆行する日本の悲しき現実~なぜ日本では財政出動が効果を発揮しないのか?』(加谷珪一/経済評論家)

米国が100兆円インフラ投資へ、世界に逆行する日本の悲しき現実 なぜ日本では財政出動が効果を発揮しないのか? | JBpress (ジェイビープレス)
日本国内からは大型インフラ投資に関する声はほとんど聞こえてこない。主要先進国では日本だけが次世代大型投資を実施しない方針だが、なぜ日本ではインフラ投資に関する議論が活発化しないのだろ(1/5)

「バイデン政権はコロナ対策と次世代の成長促進を目的に、発足当初から超大型の財政出動を提唱してきた。(略) 総額1兆ドルのインフラ投資は、過去数十年間では最大規模であり、金額の計算方法にもよるがF・ルーズベスト大統領が実施した「ニューディール政策」にも匹敵する水準だ。今回の計画には、道路や橋梁、鉄道、港湾など従来型インフラの刷新に加え、EV(電気自動車)やAI(人工知能)といった新技術への投資が含まれている。(略)

 一方で、日本国内からはこうした大型インフラ投資に関する声はほとんど聞こえてこない。主要先進国では日本だけが次世代大型投資を実施しない方針だが、なぜ日本ではインフラ投資に関する議論が活発化しないのだろうか。(略)

 もっとも大きな理由は、日本経済の貧困化によって先行投資よりも国民に対する生活支援の優先度が圧倒的に高くなったことである。(略)

 国内では日本は緊縮財政によって成長が止まったとの指摘があるが、それは事実ではない。日本は1990年代以降、むしろ政府支出を拡大しており、主要先進国との比較では、日本はむしろ積極財政の国に分類される。(略)

つまり日本は緊縮財政で成長できないのではなく、成長できなくなったので財政出動を強化したものの、十分な効果を発揮していないという状態である。(略)

では、なぜ日本では財政出動が効果を発揮しないのだろうか。これには多くの要因が絡んでおり単純化はできないが、経済の貧困化に伴う消費低迷が影響していることだけは間違いない。(略) 現状、国民は消費に対して極めて慎重なスタンスなので、ここで財政出動を強化しても支出分しかGDPは増えず、それ以上の効果はもたらさない。(略)

ロジカルに考えれば、まずは国民の所得を増やし、消費を拡大してから次世代投資を実施するというのがスジということになるが、そもそも成長できなければ所得を増やせないというジレンマがある。(略)

ITやAIが新しい時代における成長エンジンであることを否定する人はもはや少数派だろう。だがビジネスや社会のIT化を進めていくためには、資金面だけではなく、人材というソフト面での強化が必須となる。所得再分配と新時代に対応できる人材育成を兼ねて教育や職業訓練に資金を投じ、新産業に人材を移動させれば、産業シフトはよりスムーズになる。(略)」

 

加谷氏の言い分をまとめるとこんなところでしょうか。

①米国バイデン政権は従来型インフラ投資に加えてEVやAI、再生エネといった次世代型テクノロジーに積極投資しようとしている。

②一方、日本ではこうした大型インフラ投資を行おうとする機運が盛り上がらないが、その原因は経済貧困化により、国民の生活支援に多くの予算を割かざるを得ないからだ。

③日本の政府支出は他の先進諸国と比べてもかなり増えており、むしろ積極財政と言えるが、国民所得の長期低迷から消費意欲が減退しており、財出の乗数効果が出にくい体質になった。

④国全体の構造を改革するためにITやAIへの投資を促進するとともに職業訓練を強化し、新産業の人材育成と人材流入を加速させ経済成長を図るべき。

 

彼は日本経済の貧困化やそれを原因とする消費低迷を認めながらも、なぜか結論を先進産業に的を絞った投資と職業訓練(人材育成)に誘導し、「構造改革こそ最適解」という改革思想を押し付けようとしています。

 

こういった「最後は“改革”に答えを導いときゃ、偉そうに見える」的な発想は、高校生の壁新聞とか大学生のレポートによくありがちですが、カネをバラ撒かない上っ面だけの改革ごっこに社会を改善する力などありません。

 

まず、米国と比べて我が国のインフラ投資意欲(従来型&新産業型のいずれも)が著しく劣るという指摘はごもっともです。

 

先日も、政府が経済安全保障強化の一環として、AIや量子技術、宇宙開発向けに5000億円規模の基金を創設するとドヤ顔で公表しましたが、ニュースのコメ欄には「アホか?桁が一つ、いや二つ違うだろ!」という批判が相次ぎました。

「アメリカが100兆円なら、こっちは200兆円出すぞ!」くらいの気合いが必要なのに、政府の提示した額はたったの5000億円ですからお話になりませんよね。

政府は、念仏を唱えていればAIを始めとする先進テクノロジーが発展すると勘違いしているのではないでしょうか?

 

さて、加谷氏は「日本は1990年代以降、むしろ政府支出を拡大しており、主要先進国との比較では、日本はむしろ積極財政の国に分類される」なんて寝とぼけたことを抜かしていますが、こういう低次元な嘘に騙される人が結構多いんですよね。

 

ちなみに、先進諸国の歳出規模の推移を簡単に示しておきましょう。

・アメリカ:2001/3470B$→2021/9625B$(2.77倍)

・イギリス:2001/396B£→2021/1067B£(2.69倍)

・フランス:2001/795B€→2021/1493B€(1.87倍)

・ドイツ:2001/1030B€→2021/1882B€(1.82倍)

・カナダ:2001/470BC$→2021/1212BC$(2.57倍)

・日本:2001/188831B億円→2021/240984B億円(1.27倍)

 

アレっ?日本は主要先進国の中でも堂々たる積極財政の国じゃなかったんですかね?

 

上記の歳出額は一般政府(国・地方自治体・社会保障基金)による年間支出額で比較しているので、世界に冠たる老人大国である我が日本の支出額は一般の政府歳出と比べてかなり肥大化していますが、その水膨れした数値で比較しても、歳出規模の膨張率は他国より数段低いレベルでしかありません。

“日本が積極財政の国”なんて根拠ゼロの大嘘を、いったいどの口が吐いているんでしょうか?

 

また、日本の歳出には国債費(元本償還+利払い)というGDP成長に何ら寄与しないムダな数値が加算されていますが、そうした余計なモノを省いた政策経費の推移を見ると、2001/65兆円→2020/79兆円と20年間の増加率はたったの21%、年率換算で僅か1%程度の超ローペースでしかありません。

 

こんなミミズが這ったような増え方では、国内産業の収益や生産性が向上し、国民の懐が潤うはずがありませんよね。

 

また、彼は「日本経済の貧困化によって先行投資よりも国民に対する生活支援の優先度が圧倒的に高くなった」なんて言っていますが、この記事を読んだ方の多くが、「ん? 国民への生活支援の優先度って、そんなに高くなってたっけ?」と訝しむでしょう。

 

昨今も、自公政権は新たな給付策を打ち出しましたが、“18歳以下の子供限定”かつ“年収960万円以下限定”かつ“16-18歳は挙手方式限定”なんてみみっちいタガを嵌め、国民から猛反発を喰らいました。

こんなありさまで「国民に対する生活支援の優先度が圧倒的に高くなった」なんて言えるのでしょうかね?

 

加谷氏の妄想どおり、ここ十数年の歴代政権が国民の生活最優先の政策に舵を切っていたならば、消費税の増税も、社保料の増額もなかったはずですよね。

 

こういう現実をガン無視した大嘘を、誰もが閲覧できる雑誌によく堂々と掲載できるものだと呆れ果てます。

 

彼の妄想で最も酷いのは、AIやIT、DX、ロボティクス、EV、再生エネetcといった先進的産業にカネを投じるともに、職業訓練強化によってそうした産業への人材流入を加速すれば、新しい産業に従事した人材の賃金が上昇し消費拡大につながる、という鄧小平ばりの“先富論”を唱えている点です。

 

世の構造改革論者が幼稚なのは、「AIやITみたいな先進技術は、ただ存在するだけで必ず需要を生む」と勘違いしていることです。

 

彼らは、そうした新産業の勃興を熱っぽく語り、「AI技術を抑えれば日本が世界をリードできる」と怪しげな投資詐欺話紛いの妄想を振り撒きますが、「先進技術や新産業にカネを払うのはいったい何処の誰なのか?」という根本的な疑問には何も答えようとせずに逃げ回ります。

 

AIやIT、DXなどといった先進テクノロジーは、無限の需要を生み出す打ち出の小槌ではありません。

いかなる技術や産業であっても、それを買い、対価となるカネを払う者が存在しない限り、役立たずのゴミでしかありません。

 

AIが人々の社会生活や経済活動に浸透し、確固たる地位を得るためには、AIにカネを払ってもよいと言える消費者の存在が必須なのです。

 

需要無きところに新技術や新産業は発展し得ません。

 

AIやIT,DX、ロボティクスといった先進技術を一般化させ、日本が世界をリードする技術大国たる地位を占めたいと本気で思っているのなら、それら先進テクノロジーの買い手を育てるのが最も早道であり王道なのです。

 

加谷氏が小馬鹿にしているオールドエコノミーや一般国民が、そういった先進テクノロジーに興味を示そうとせず、カネがないから別に無理して買う必要もないよね?なんてケツを捲った日には、何の価値も生まない在庫やゴミと化してしまうだけです。

 

彼も日本経済の貧困化を認めているようですから、その根源的な病巣を治癒する提言をすべきです。

つまり、「国民所得や企業収益の加速的な膨張による貧困化の克服」を目指すべきでしょう。

 

そのためには、「先進産業か、オールドエコノミーか」、「給付金か、諸費税減税か」などといった類いの無用な選択論を捨てねばなりません。

先進産業もオールドエコノミーも発展させ、老若男女誰しもの所得を増やすための超積極財政策に舵を切り、どういった予算を付ければそれが実現できるのかを真剣に考えるべきです。

 

政府が為すべき経済政策の基本は、

①間断なき需要を生み出す経済環境を創ること

②膨張し続ける需要を満たせる供給体制を構築するために技術革新や人材育成を支援すること

の二点に尽きます。

 

そこに必要なのは「貨幣(カネ)」と「国民の勤労・努力」であり、それ以外の何物でもありません。

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