積極財政の反対語に緊縮財政ではなく消極財政を使うべき3つの理由

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 前々から主張していますが、まったく浸透しない「消極財政」。

 人間は言葉を扱う生き物です。
 言葉は正しく、厳密に扱われなければなりません。

 「緊縮財政の反対語は?」と問われたら、99%以上が「積極財政」「財政拡大」と答えるでしょう。
 しかし、どちらも間違い。
 財政拡大の反対語は財政縮小。

 積極財政の反対語は消極財政。
 では緊縮財政の反対語は?

 今回の記事ではそれぞれの財政政策の反対語と、言葉の力について解説します

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緊縮財政の反対語は積極財政?

 世の中、厳密には違うがまかり通る事柄があります。

 たとえば、緊縮財政の反対語は積極財政と言われています。
 反対語は、対義語や反意語とも呼ばれます。

 正義の反対は悪。
 正直の反対は不正直。
 行動の反対は思索。

 しかるに、緊縮の反対は積極でしょうか?
 積極の反対は緊縮でしょうか?

 何だかしっくりきませんよね。
 なぜなら、それぞれが反対語ではないからです。

緊縮の反対語は放漫

 緊縮とは「財政を立て直すため、支出を引き締めること」です。
 緊縮の反対語は「放漫」で、「デタラメで締まりのない様子」を指します。
 他にも、「浪費」が緊縮の反対語です。

 したがって、緊縮財政の反対語は放漫財政です

 なぜ、緊縮財政の反対語が積極財政と言われているのか不思議です。
 積極財政は厳密には、緊縮財政の反対語ではありません。

積極の反対語は消極

 積極とは「物事に対してはっきりした作用を及ぼし、進んで働きかける面を表すこと」です。
 積極の反対語は「消極」で、「物事に対してはっきりした作用を表さず、進んで働きかける面に欠けること」とされます。

 積極は英語で「アグレッシブ(Aggressive)」、消極は「ネガティブ(Negative)」です。

 したがって、積極財政の反対語は消極財政となるはずです
 決して、緊縮財政ではありません。

積極財政の反対語を消極財政とするべき3つの理由

 緊縮財政の反対語は放漫財政であり、積極財政の反対語は消極財政だと明らかにしました。
 積極財政派は「緊縮財政」ではなく「消極財政」と呼ぶべきです

 なぜ、そう呼ぶべきなのか?
 消極財政と呼ぶべき3つの理由について解説します。

言霊・言葉のイメージは強力

 古来、日本では言霊が信じられていました。

 言霊とは言葉に内在する霊力であり、言葉通りのことが実現すると信じられていました。
 悪いことを言うと悪いことが実現し、よいことを言うとよいことが実現するのです。

 言霊があるかどうかはともかく、言霊に近い力を言葉は持っています。
 ネガティブなことを言い続ければ、その人の行動はネガティブに変化します。
 逆に、笑い声を上げれば、その人の気持ちや行動はポジティブになります。
 まさに、「笑う門にも福来たる」です。

 故に、人は善のイメージがある言葉を好みます

 緊縮財政とは「財政を立て直すため、支出を引き締めること」であり、「放漫=悪、緊縮=善」のイメージです。

 だから、多くの日本人が緊縮財政を支持しています。
 もし、積極財政に転換したいと思っているなら、善なるイメージである「緊縮財政」という言葉を使わないようにするべきです

日本で改革がもてはやされる理由

 「改革」には積極的でアグレッシブなイメージがあります。
 多くの日本人が改革大好きなのは、世の中になんとなく閉塞感があるからです。
 閉塞感を打破するために、積極的でアグレッシブな改革を打ち出す政治家を支持するのです。

 なお、改革政治家は「規制緩和! 構造改革! 緊縮財政!」を実施し、さらなる閉塞感を世の中にもたらします。
 これはこれ、また別のお話。

 言葉のイメージは重要です。
 言葉1つでイメージが変わります。

 「緊縮財政」には節制、節約、清貧といった善のイメージがあります。
 「現状を打開するために痛みに耐えて――」と言われれば、アグレッシブな改革のイメージすらまといます。

 一方、積極財政の反対語である「消極財政」ならどうでしょう。
 消極財政という語感はなよなよしていて、改革のイメージは湧きそうにありません

 だからこそ、積極財政派は緊縮財政ではなく消極財政と表現するべきです。

消極財政こそ実態を表している

 日本は四半世紀以上、改革! 改革! と言い続けてきました。
 一度くらい、改革の成果を総括するべきだと思いますが、なぜか総括は行われません。

 勇ましく改革を唱えながら、日本がしてきたことは「節約、効率化、合理化」です。
 「投資や拡大」は行われてきませんでした。

全労連より

 実質賃金の推移を国際比較したグラフが上記です。

 投資や拡大を”積極的”に行わず、むしろ”消極的”だったことを思えば、日本の実態は「緊縮財政」ではなく「消極財政」でした

 消極財政というネガティブな響きこそが、日本の財政政策の実態をよく表しています。

まとめ

 世の中、なぜか反対語ではないのに反対語扱いされているものがあります。
 積極財政⇔緊縮財政もその1つ。

 ところが、積極財政派の人ですら疑問を抱くことが少ない。

 積極財政の反対語は消極財政、緊縮財政の反対語は放漫財政です。

 言葉のイメージは大切です。
 緊縮財政には「節約、節制」といった善のイメージがあります。

 積極財政派は「緊縮財政」ではなく、「消極財政」という表現を使うべきです

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