「日本は1000兆円も借金があるんだから、大きな政府に違いない!」
こう思っている人は多いかもしれません。
しかし、数字を分析すると日本は紛れもなく小さな政府です。
小さな政府とは何か? 小さな政府と大きな政府の違いは? といった疑問をわかりやすく解説します。
そして、日本が小さな政府であるという根拠もデータで提示します。
小さな政府とは
小さな政府とは一般的に、政府の支出規模や国民負担の大きさといった財政規模に着目して使われます。他にも、公的規制の強さや公的企業、つまり国営企業の経済に占める割合に着目して使われることも。
以下の条件に該当するのが小さな政府です。
- 他国と比べて国民負担率が小さい
- 他国と比べて支出規模が小さい
小さな政府は政府による経済活動への介入を減らし、市場原理による自由な競争を促すことで経済成長を図ろうとする思想です。
小さな政府は一般的に、以下の政策を推進しようとします。
- 公務員削減
- 規制緩和
- 民営化
- 社会保障削減
- 公共事業削減
小さな政府の究極の姿は夜警国家です。夜警国家とは、政府が外交と警察、軍隊のみ運営する国家です。
小さな政府と大きな政府の違い
小さな政府は経済を自由競争に委ね、極力民間への介入を控えます。逆に、大きな政府は経済への介入をためらいません。
一般的に大きな政府は「高い税金」「大きな福祉」がセットと考えられています。高福祉高負担です。
一方、小さな政府は低福祉低負担が基本路線です。
今まで高福祉低負担は不可能だと考えられていました。
税金と福祉はトレードオフの関係だとされていたのです。
しかし、現代貨幣理論(MMT)の出現、コロナ禍のアメリカなどによる積極財政で上述した考え方は打ち破られつつあります。
税は財源ではなく、大きな政府は国債発行によって財源をまかなえると考えられつつあります。
この考え方をスペンディングファーストと言います。
スペンディングファーストについては以下の記事をどうぞ。
日本は小さな政府か、大きな政府か
日本は小さな政府か大きな政府、どちらでしょうか? 「1000兆円も借金があるんだから大きな政府だ!」と勘違いする人が多いです。
しかし、公務員数や国民負担率、社会保障給付の対GDP比といった数字から、日本は小さな政府であることが浮き彫りになります。
公務員比率
日本の公務員数は非常に少ないことで有名です。
OECD諸国の「雇用者全体に占める一般政府雇用者比率」は18%です。
これは、労働者の18%を公務員が占めていることを指します。
一方、日本は公務員比率がわずか6%で、OECD平均の3分の1に過ぎません。
韓国が7.6%と低いですが、北欧のノルウェーやスウェーデンは公務員比率が25%~30%にも及びます。
公務員比率から見ると日本は小さな政府だと考えられます。
国民負担率
国民負担率とは、国民所得に対する税金と社会保障負担の合計額の割合です。所得から税金+社会保障費が、どれくらいの割合で徴税されているか示すのが国民負担率です。
一般的に小さな政府は「低福祉低負担」です。
逆に、大きな政府は「高福祉高負担」になると考えられています。
日本の国民負担率は42.6%で、OECD諸国の中で低い方です。
オーストラリアやイタリアは63.7%を記録しています。
つまり、日本は国民負担率でも小さな政府と解釈できます。
社会保障給付の対GDP比
「社会保障給付費の対GDP比」とはGDPに対して、どれくらい社会保障を給付しているかを表します。
日本は22.4%となっており、OECD平均よりやや低めです。
フランスは32.2%、イタリアは29.5%です。
日本は他国より高齢化が進んでいるにもかかわらず、平均より低めの社会保障給付費比率です。
やはり、ここでも日本は支出が少なく、小さな政府であることが示されました。
小さな政府のメリット・デメリット
メリット
小さな政府であるメリットは多くありません。
一般的に小さな政府は「経済的自由が大きい」「競争力の強化につながる」といったメリットが挙げられます。
しかし、小さな政府で経済的自由が大きくなるのは、競争力の高い人だけです。
競争力の強化も換言すれば「価格の下落」「人件費の抑制」です。
他に思いつくメリットは「政治家が責任を取らなくてよい」でしょうか。
「小さな政府=権限も小さい=責任も小さい」との方程式が成り立ちます。
デメリット
一方、小さな政府のデメリットは多大です。
- 格差が拡大する
- 総需要が減少しデフレになる
- 社会保障が小さくなる
- 弱者切り捨て・自己責任社会を招来する
小さな政府は格差を拡大させます。
小さな政府とは、政府が経済に介入しないことです。すなわち、むき出しの資本主義に任せるのが小さな政府です。
トマ・ピケティは200年の統計で、資本主義は本質的に格差を拡大するとしました。
小さな政府は際限なく格差を拡大させます。
格差拡大は総需要を少なくします。富裕層の消費性向が小さく、消費性向の大きな一般層が貧困になるからです。
こうして、小さな政府路線はデフレへと突き進みます。
社会保障は抑制され、弱者切り捨てが行われます。
自己責任社会が小さな政府の将来の姿です。
実際に小さな政府である日本でも、格差拡大や自己責任社会、社会保障の削減、デフレが起きています。
小さな政府を目指している政党
そもそも論ですが、日本で大きな政府を目指してるのは共産党、れいわ新選組の2つだけです。それ以外の政党はすべて、基本的には小さな政府路線です。
小さな政府路線とは「公務員削減」「行政のスリム化」「規制緩和」「身を切る改革」などを指します。
たとえば、身を切る改革は維新の他に自民党、公明党、国民民主党なども唱えています。
政府のプライマリーバランス目標に反対している政党はほぼ皆無です。
このように、日本の政党は小さな政府路線が既定です。
中でも、日本維新の会は極めて強力に小さな政府を推し進めています。
小さな政府に対する日本の世論
日本で「積極財政か消極財政か」「小さな政府か大きな政府か」といった世論調査はあまり実施されていません。
紀尾井町戦略研究所が実施した世論調査が観光経済新聞に取り上げられました。
この世論調査はYahoo!クラウドソーシングを活用して行われました。
調査によると「コロナ禍での政府支出拡大にNO」が8割でした。
日本人の世論は緊縮・消極財政が多数です。
だからこそ、日本ではデフレにもかかわらず積極財政が行われてこなかったのです。
このことから、日本国民は小さな政府路線を支持していると類推できます。
まとめ
小さな政府とは低福祉低負担な政府です。
小さな政府は「公務員削減」「支出削減」「社会保障の抑制」「規制緩和」「民営化」などを行おうとします。
これらは、政府が経済に介入しないという名目で行われます。
「公務員比率」「国民負担率」「社会保障給付の対GDP比」で比較すると、日本は小さな政府だと考えられます。
たとえば、公務員比率はOECD平均が18%で、日本はわずか6%でした。
小さな政府には多くの弊害があります。
しかし、日本では小さな政府を志向する政党がほとんどです。世論も小さな政府を望んでいると考えられます。
世論の転換は並大抵ではありません。
大多数の国民は正しい経済知識を持つて「小さな政府」を支持してゐる訳ではありません。
古き良き道徳観「節約」に従つて、政府が節約して税金を少なくして貰つた方が有難いと考へてゐるだけです。所謂「合成の誤謬」です。
だから自称保守政治家の稲田朋美も、その価値観で飛んでもない緊縮財政を善意で主張するのです。
間違ひを首相と財務大臣が事あるごとに大きな政府を主張し、積極財政を実行して国民所得を増やせば、皆、納得する筈です。
高市早苗がその尖兵になるやう期待してをります。