真に若者のためになる経済政策の実現には、現状の人口比においては多くの高齢者層にそれに賛同を得ることが不可欠だ。高齢の方の大多数は若者の幸せを望んでいるとは思うが、実際には逆効果の政策を将来世代のためになると勘違いして賛同していては意味が無い。
6月17日付愛媛新聞の安藤文一氏(72)の投書「消費減税 野党の主張に疑問」はその典型例
その典型例が愛媛新聞に掲載されたこの投書である。そもそも、経済成長が止まり若者の貧困化が続き、少子化が深刻化した「失われた20年」の原因である間違った貨幣観に基づいた政府債務削減を目的とする増税や歳出カットという時代遅れの政策をコロナ禍で経済に甚大な被害が出ているなかでも未だに支持し続けているのだ。
特別定額給付金で証明された「国の借金」が増えてもデフォルトもハイパーインフレも金利高騰もあり得ないという事実
そもそも、中央銀行による買い入れで債務を実質的に無くせる日本国債や米国債のような変動相場制の自国通貨建て国債にはデフォルトのリスクは皆無であり、それを財源にすることはインフレ率が過剰にならない範囲においては全く問題無い。むしろ、不況下においては国民の所得を奪う税を減税し、国民の黒字となる財政赤字を拡大するという政策を国民のためにしなければならないのだ。10万円の特別定額給付金を全国民に配った結果、ハイパーインフレも金利高騰も財政破綻も起こらず、私達の銀行預金が10万円増えただけという現実が政府の借金がいわゆる国民一人当たりの借金ではないということを証明している。
「コロナだけが国難ではない」からこそ今すぐデフレ脱却まで財政拡大しなければならないのだ
「コロナだけが国難ではない」という点においては安藤文一氏に賛同できる。しかし、だから緊縮財政というのは明らかに間違いだ。コロナからも自然災害等のコロナ以外の国難からも国民を守るためにも積極財政によって、コロナの経済被害の早期回復、次のパンデミック発生に備えた医療体制等の強化、自然災害に備えた防災投資や復旧能力強化などを今すぐにすべきなのだ。
緊縮と増税で経済力を奪い国難への対応を困難にすることこそ将来へのツケまわしである
「お金」がどんなにたくさんあっても物やサービスを生産する供給能力が国内に十分になければ自然災害や感染症等の国難に対応することはできないのだ。災害からの早期の復興に必要不可欠な供給能力がコロナ前からの増税とコロナ不況への不十分な補償を原因とする需要の冷え込みでひどく傷ついた状態を消費税減税もやらず放置すれば自然災害からの復興は困難になってしまうし、財政赤字削減のために防災対策のための公共事業を十分にやらなければ、防げる被害も防ぐことができず、おまけに建設業の供給能力も低下して災害から国民を守ることは不可能となる。本来、インフレ率の許容範囲なら政府がいくらでも発行できる「お金」をケチることを容認することこそ将来世代へのツケまわしなのだ。
岡田紀子さんのように本当に若者を思いやる気持ちのあるご年配の方々は積極財政支持に転換していただけるはず
私達よりはるかに長い人生経験がありながらこのようなことを理解できないというのは信じ難いが、おそらく、安藤文一氏のように心では若者のことを思っていても、間違った貨幣観から脱却できず、逆効果の政策を支持してしまっている高齢者は残念ながら少なくないと思う。ただ、わずかではあるが希望もある。
安藤氏と同世代の方が真に若者のためになる反論を投稿してくださり、それが愛媛新聞に掲載されたのだ。高齢者の皆様には、岡田紀子さんを見習ってほしい。そうすれば子や孫たちに愛されながら余生をすごせ、この世を去った後も感謝され続けるであろう。