右も左も緊縮財政が戦争のリスクを高めている現実を直視せよ

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政治的な立場はそれぞれあるとしても、ほとんどの日本人は戦争の無い平和な社会の継続を望んでいると思う。政府の歳出の財源としての国債発行を禁止する財政法について、その起案者で当時の大蔵省主計局法規課長の平井平治氏が戦費調達の手段となりうる公債発行を禁じるという意味で憲法9条を保証するものであるという主旨のことを述べているように、旧大蔵省から現在の財務省まで財政均衡主義は平和主義の実現を目的に受け継がれてきたという側面があるようだ。この財政均衡主義が本当に戦争のリスクを低下させているとしたら、いわゆる護憲派とか左派と呼ばれる人々が財政均衡を支持するのは理解できるが、緊縮財政は現在、逆に戦争リスクを高めており、左派は本当に軍事力によらない平和を望んでいるなら緊縮財政に反対しなければならないと思う。ちなみに私は、現状では我が国の平和の維持には一定程度の軍事力による抑止力が必要だと考えているが、こちらの路線を選ぶ場合でも緊縮財政は平和を脅かす存在である。

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緊縮によるソフトパワー低下が戦争のリスクを高めている

軍事力によらず戦争を防ぐには経済力などのソフトパワーの強化以外にない。例えばA国にB国の国民が多く観光に訪れたりA国のモノやサービスを多く買って貰っているという場合、A国にとってB国は「お客様」でありA国がB国に軍事的圧力をかけるというようなことは起こりにくくなる。また、A国がB国にとって産業や国民生活など安全保障上重要な物品、例えば特殊な素材や工作機械、ワクチンや医薬品などの供給国である場合、B国がA国との間に軍事的緊張を高めるような行動をとる可能性は極めて低くなる。こういう戦争のリスク低下に資する経済力を高めるには積極財政が必要不可欠だ。にもかかわらず我が国は緊縮財政を続けた結果、経済力を低下させている一方で、中国はインフラ整備や研究開発投資など大規模な財政出動を続けることで経済力を高めており、「もはや日本に遠慮する必要は無い」とばかりに尖閣諸島周辺で日本漁船に中国海警の船が接近する事案が多発するなど、力による覇権拡大の試みをエスカレートさせている。日本人が平和を望むなら今すぐに消費税廃止などの国民の購買力を高める施策や科学技術予算増額などの積極財政に転換しなければならない。

国境の平和のために離島振興への財政出動をせよ

軍事力によらず国境の守りを強化するには、南西諸島などの国境離島で国民が生業を営み人口を維持し続けることが重要である。しかし、離島の主要産業である農業や水産業への政府の財政支援は不十分で都市部との所得格差は深刻である。また、宮古島で新型コロナの感染者が出て自衛隊の派遣が必要になるほど医療が逼迫したように、本土との医療や教育サービスの格差も深刻だ。国境離島の無人島化を防ぐために積極財政により離島と本土の間のインフラ整備、医療や教育格差是正、農林水産業への財政支援拡充などを急ぐ必要がある。

尖閣での日中衝突回避のためには日本漁船による平穏な漁業活動の常態化が必要

尖閣周辺で日本の漁船による漁が減り、中国の漁船や公船が我が物顔で活動するようになると緊張を高めることになる。尖閣周辺の平和を保つには、尖閣周辺へ行く漁業者への補助金を設けたり、安全に操業できるように島への避難港や気象観測施設などの設置をしたり、獲れた水産物を大都市圏の市場に出せるように冷凍・冷蔵設備や加工施設の整備、物流の強化などへの財政支援をするなどの財政出動が急務だ。

軍事衝突回避のために海上保安庁予算増額を

国境問題での二国間の対立を軍事衝突に発展させないためには不足の事態に対して海上保安庁のような警察機関のレベルで適切に対処できるようにし、軍対軍の対立にエスカレートするのを防ぐ必要がある。しかし、今、海上保安庁の予算不足で軍事衝突の危機が高まってしまっており、早急に予算の大幅増額が必要である。

軍事力による平和維持にも緊縮財政脱却が必要

いわゆる右派が主張しているような軍事的な抑止力強化による平和維持を選ぶにしても、緊縮財政ではそれはままならない。我が国の防衛費は最近過去最高更新が毎年報じられているが、訓練の費用や研究開発費の不足のほか、自衛隊は弾薬や部品、燃料の備蓄など継戦能力が不十分だったり、南西諸島で自衛隊の航空機が使える長い滑走路のある空港が少ないなど足りないところが多々ある。

高知沖海自潜水艦事故 財務省や緊縮派政治家の責任も問われるべき

2月8日に高知県沖で海上自衛隊の潜水艦と民間船が衝突する事故が発生したが、訓練不足が原因だとしたら海自だけでなく、緊縮財政で十分に訓練費を確保しなかった財務省や緊縮派の政治家の責任も問われなければならない。中国の軍拡が続くなかにおいては、我が国も毎年防衛費を最低でも20兆円規模にするくらいの積極財政で上記のような問題を早急に改善しないと平和は守れない。

中国の脅威に備えるためにも積極財政による防災・減災強化が必要

防災・減災対策や復旧・復興への政府の財政出動が不足するなかでの最近の自然災害の多発も間接的に抑止力低下を招いている。災害の際の自衛隊の活動はとても頼りになるが、いうまでもなく自衛隊の最重要任務は国防であり、災害派遣が頻発、長期化することで国防に支障をきたすことは避けないといけない。

住宅耐震化への補助金拡充、インフラ老朽化対策予算増額、堤防やダム等の治水事業推進などで災害派遣が必要になるような災害を極力減らしたり、ガレキ撤去や除雪など災害復旧を担う地域の土木・建設業者の供給能力を高め被害が出ても自衛隊の負担軽減を図る、「防災省」のような機関を新設し、常時公務員として一定数の人員を雇い自衛隊が行う被災地支援のうちの可能なものを代替できるようにするなど防災・減災対策への財政出動の拡大が国防のためにも急務である。

本当に平和を望むなら右も左も緊縮財政に反対せよ

今のような状況下において緊縮的主張をするのは我が国を再び悲惨な戦争へと導く行為だ。右派も左派も関係なく、平和を望む者は正しい貨幣観に基づいて政府に対して平和の実現に資する軍事、非軍事両面でのあらゆる財政出動を要求すべきである。

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