外国人の生活保護はなぜMMT的に問題なしなのか

この記事は約6分で読めます。

 先日、厚生労働省が生活保護のフォローに力を入れ始めたことをツイートしました。もちろん褒める意味でです。

 いろいろな反響をいただきました。その中で「外国人の生活保護は認めるべきではない」という旨の返信があったのです。
 趣旨が全く異なりますし、キャッチボールになっていませんが――脇におきましょう。

 外国人の生活保護はさまざまな観点で考えられます。今回はMMT的な観点から考えてみましょう。

 結論は「MMT的に考えると外国人の生活保護はOK」です。

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生活保護とは

 生活保護とは憲法25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という、生存権を保障した条文を根拠としています。

 健康で文化的な最低限度の生活を国民が送れるように、4つの原理で運用されています。

  1. 国家責任の原理
    国が生存権をちゃんと保障しましょう
  2. 無差別平等の原理
    国民は誰でも生活保護を受けられます
  3. 最低生活保障の原理
    健康で文化的な最低限度の生活が国民には保障されます
  4. 補足性の原理
    生活保護は補足として運用し、できることは自分でしましょう。資産や能力がある場合は活用してください

 福祉事務所に赴き、申請の意思を伝えたら生活保護は申請できます。
 日本国民の場合は申請から2週間以内に、受給できるかどうか回答があります。

 困窮した場合は福祉事務所や生活保護支援団体に相談しましょう。

外国人が生活保護を受ける条件

 外国人が生活保護を受ける条件は「定住性のあるビザ(永住ビザ・配偶者ビザなど)」を持っていることです。

 他に特別な条件はなく、日本国民と同じ基準で生活保護が準用されます。
 なお生活保護を受けるには、外国人登録証明書に記載されている移住地の福祉事務所での申請が必要です。

なぜ外国人生活保護が問題視されるのか

 なぜ外国人生活保護が問題視されるのか解説します。

外国人の生活保護世帯数と在日外国人問題

 総務省の「生活保護に関する実態調査結果報告書(平成26年)」(P55~56参照)によれば平成24年度、生活保護を受けている外国人世帯数は4万3000世帯に及びます。
 日本国民も含めた生活保護受給世帯数が200万世帯です。50世帯に1世帯は外国人世帯ですから、割合としてやや高めかもしれません。

 中でも韓国・朝鮮系の在日外国人の割合が高く、いわゆるネトウヨや保守といった層がこの事実に反発しています。

 なお、歴史的経緯への見解は本旨から外れます。ここでは言及しません。

限られた財源を日本国民に使うべき?

 なぜ外国人の生活保護受給が問題視されるのか? 要するに財源問題が原因です。

 社会保障費は年々膨張しており、一般的に政府支出は税金でまかなわれていると思われています。
 したがって生活保護を日本人だけに限定し切り詰めるべきだ! という発想が、生活保護外国人受給問題の根本でしょう。

 近年では韓国・朝鮮系の在日外国人だけでなく、中国系の在日外国人の生活保護受給も問題になりました。
 もちろん不正な受給ならとがめるべきですが、根強く外国人の生活保護受給そのものに反対する意見もあります。

 これらの意見は根本的に「限られた税収という資源を、日本国民だけのために使うべき」という発想から来ています

MMTとスペンディングファースト

 スペンディングファースト(Spending first)とは日本語で「政府支出が先」という意味です。

 民間にお金が供給されていない、まっさらな状況を想像してください。通貨発行権は政府にあります。民間にお金が供給されておらずゼロなので、徴税は不可能です。
 徴税するためにはどうするか? まずは政府が支出してお金を民間に供給し、その後で徴税を行う他ありません。

 このモデルからわかることは2つあります。1つは「政府支出の原資は税金ではないこと」です。民間にお金が供給されていない状態では、どうしたって徴税不可能です。
 政府が支出することで初めて徴税が可能になります。

 2つめは「政府支出の原資は通貨発行権」だということです。

 通貨とは「国定(法定)流通貨幣」の略です。国家が国の貨幣として定めたお金が通貨です。しかし通貨は定めるだけでは定着しません。
 国家が供給するだけで利用されるかどうかは不透明です

 流通して定着するには「何らかのインセンティブ」ないし「強制」が必要です。

 徴税は国家権力の行使であり強制力です。そして国民には、通貨なら手間なく納税できるというインセンティブも働きます。

 徴税は通貨を駆動するための装置であり、政府支出の原資ではないとする考え方がスペンディングファーストと租税貨幣論です。

 詳しくは以下の記事でも解説しています。

現代貨幣理論(MMT)-スペンディングファースト(政府支出が先)
本稿では現代貨幣理論(MMT)のエッセンス、スペンディングファーストを解説します。  スペンディングファーストを理解すれば、経済の見方が180度変わります。なぜなら……一般的に流布されている、財政政策のイメージと「真逆のこと」が事実だからで

 迂遠になりましたがスペンディングファーストに基づけば、税は政府支出の原資ではありません。したがって生活保護の原資を心配して、外国人への生活保護へ反対する理由は消滅します。

 MMT的には外国人への生活保護は許容されます。積極的に反対する理由がありません。日本ならば円という主権通貨を使用する限り、外国人にも生活保護を支給することに問題はなさそうです。

まとめ

 本稿では「財源が限られている。だから生活保護は日本国民に限定するべき」という議論に対して「MMT的には外国人の生活保護もOK」と解説しました。
 なぜなら「財源は限られていないから」です。

 生活保護の議論だけを見ても、いかに日本国民が「限られた財源」「税収以上の支出はダメ」という考え方に縛られているか理解できます。

 なお最後になりましたが筆者は「外国人への生活保護支給」に賛成でも反対でもありません。現実的には生活保護で生活している在日外国人がいますから、停止するというのは不可能だろうと思います。

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