我が国をはじめ多くの国が採用している民主制という政治体制は、一党独裁や絶対君主制などの他の政治体制と比べれば民衆にとってはまだマシという程度の理由で採用されているにすぎない。
多数が判断を誤れば国が滅ぶという民主制の欠陥
民主制は投票によって主権を行使する民衆の多数が正しい判断能力を有していれば、経世済民(国民の豊かで安全な暮らし)が実現でき国家は繁栄していくが、民衆の多数が判断を間違えれば逆に亡国は不可避となるという重大な欠陥を抱えている。
有権者の多数がが賢くならなければ将来世代にツケを残す
しかしながら、だからといって他の政治体制を導入すればもっと害が大きいので、我が国はこれからも民主制を続けるしかないだろう。であるならば亡国を避けるために多数の日本国民が前者であり続けなければならない。しかし残念ながら、現状はそうとはいえないと思う。現在選挙権を有している世代が賢くならなければ将来世代に多大なツケを残してしまうだろう。
台風10号と民主制 国土強靭化をサボった安倍政権とそれを受け継ぐ菅政権
当初、特別警報級の勢力で日本列島に接近、上陸して甚大な被害となることが懸念されていた台風10号は、紙一重で想定されていた最悪の被害は免れたものの、宮崎県椎葉村で土砂崩れが発生し4人が犠牲になったほか、九州各地で暴風による家屋被害や大規模停電が発生し、さらにコロナの影響で避難所の受け入れ制限が必要となったなかで普段より多くの住民が避難して一部の避難所では受け入れを断らざるを得なくなるなど問題も浮き彫りとなった。
これで安心するのは禁物である。今回最悪の事態が回避されたのは単なる幸運であり、今年もしばらくは台風シーズンが続くうえ、気候変動の影響で将来的に特別警報級の「スーパー台風」の発生が頻発して日本各地で未曾有の災害が起こることは十分に考えられる。今回の教訓を将来の台風被害軽減に活かさなければならない。
というよりも、そもそも安倍政権は当初から国土強靭化を公約に掲げていたはずである。しかも在任中になど多くの大きな災害経験してきたのだからやるべきことは常識的感覚があればわかっていたであろう。もし安倍政権が公約を守りこれまでの災害の経験を踏まえ十分な防災・減災への財政出動をしていれば今回の出た被害を防げたはずである。また、このような現状でもし仮に本当に特別警報級の台風となった場合最悪の被害が出たであろう。逆に政府の防災・減災対策が十分ならそのような場合でも被害を最小限にできたはずだ。自然災害大国の我が国において国家の存亡にかかわるほど重要な国土強靭化に安倍政権が7年間真面目に取り組んでいたとは言い難い。
避難所不足はコロナ以前から指摘されていたのに十分な対策をしなかった政府
避難所不足の問題については、コロナ以前から大規模な災害で公共の避難所がキャパオーバーになることは懸念されていたのだから公共の避難施設の増設や既存の避難所の補強などに国が十分な予算措置をしておくべきであった。そうすれば住民が受け入れを断られたり、避難所のガラスが割れて避難者がケガをするなどの今回起きたような事態を防げたはずだ。
今回、避難場所としてホテルや旅館などが活用されたことで公共の避難所の不足を一定程度補えたが、コロナが無くホテルなどで旅行者などの一般客の利用が通常通りある状態で大規模災害が発生した場合には現状では避難者受け入れの能力は限られてしまうだろう。物資の備蓄や非常用電源設置などの防災対策強化、客室増設への補助、避難者受け入れ用に増設した客室が空き室になった場合の損失補填などの宿泊事業者への財政支援やホテル避難をする避難者の料金の全額国費負担などを国は行うべきであろう。また、広域避難を円滑にできるように高速道路などの交通インフラ整備の拡大も必要だ。
安倍政権は離島の国民を見捨てた
今回、特別警報級が予想されていたため、鹿児島県の離島では自衛隊ヘリなどを使った島外への事前避難が行われたが、残念ながら国の公共投資が不十分なため、全国に多数ある有人離島のうちこうした大規模な事前避難に必要な飛行場や港湾、橋梁などのインフラが不十分な島が多いのが現状である。
緊縮財政の結果繰り返される家屋被害と遅れる再建
最悪の想定よりは少なかったものの、九州で暴風による家屋被害も出た。また、昨年の台風15号で多数の住宅が暴風被害を受けた千葉県では損壊した住宅のうちの6割しか修繕工事が完了していないそうだ。これは歴代政権が緊縮財政を続けデフレを長期化させた結果、住宅投資などの建築需要が低迷し建築業の供給能力が大きく削られたせいであるが、一昨年に大阪などに甚大な被害をもたらした台風21号の教訓を踏まえ安倍政権が住宅の暴風対策や耐震化などへの財政支援拡充などの継続的財政出動を決断すれば、建築業界の投資意欲が高まることで大阪や千葉の被災住宅の復旧は早まるだけでなく、今回の九州の被害を未然に防止できた可能性もある。
災害の復旧に必要不可欠な建設業従事者を守らなかった安倍政権
宮崎県の椎葉村では建設会社の事務所兼住宅が土砂崩れに巻き込まれ4人の方が犠牲になったがこれも政府が積極財政をしていれば防げたはずだ。建設会社は災害からの復旧復興に欠かせないのだから事業所の災害の危険の少ない場所への移転に財政支援をするぐらいは最低限やるべきだ。
子ども達を将来災害で苦しめないために日本国民が今すぐ気づかないといけないこと
国土強靭化の推進、つまり国民の生命財産の保護という政府の最重要責務を7年間怠ってきた安倍政権を多くの国民が高く評価し、その政権で官房長官を務め、自らが首相となった場合に国土強靭化のために国債発行を含む大規模長期的財政出動をやるとも言っていない菅義偉氏が次期首相に最も望ましいという回答が最も多いという世論調査結果ははっきり言って異常である。
子ども達の未来のためには、国土強靭化のための積極財政を主張する政治家を多数の有権者が支持するという経世済民という意味において正しい民主制が必要不可欠だということを多くの日本国民が一刻も早く気づかなければならない。