経済論議には様々なデマが付きものです。
例えば、緊縮派の言う「消費増税は経済の悪影響を与えていない」とか、「国民の需要はもはや飽和した。これ以上の国債発行は次世代へのツケ回しにしかならない」という虚言が最たるものですし、「グローバル化や完全なる市場開放は世界の潮流だ」という構造改悪派や、「大胆な金融政策だけで期待インフレ率が上がり投資や消費を活性化できる」というリフレ派の妄言など、経済論壇はまさにデマが渦巻く魔空間だと言えるでしょう。
ですが、デマに汚染されているのは、なにも緊縮派や構造改悪派の連中ばかりではありません。
残念ながら、積極財政派を称する論者にも、質の悪いデマを自信満々に吹聴する輩がいるから困ったものです。
「貨幣は負債である」
「貨幣の価値を担保するのは税である」
「社会保障制度とベーシックインカム(BI)とは両立できない」
「給付制度はすべからく悪である」
といった幼稚なデマを大真面目に論じる輩を見かけるたびに、「彼らが騙る積極財政論の行先は、いったいどこに向かっているのか?」と首を傾げざるを得ません。
私自身、
・貨幣負債論や租税貨幣論は、矛盾だらけで何の根拠もない妄想に過ぎないこと
・AかBかの政策択一論は、積極財政論の存在意義を否定する暴論でしかないこと
を自ブログや進撃のコラムをお借りして、たびたび指摘してまいりました。
ですが、MMTの純度を高めることにしか興味のない一部の論者は、”貨幣が負債か否か、貨幣価値を担保するのは税か否か”という枝葉末節に異様な執着を見せ、経世済民という大目標をすっかり忘れてしまったようです。
一般国民にとって、
・貨幣を発行する政府(日銀含む)は、貨幣発行に当たり、外部から何ら金銭や物資を借りていませんし、貨幣に対して何かを返済する義務もない(=貨幣負債論は大嘘)
・貨幣価値を担保するのは一国の供給力や遵法力、社会基盤の強靭さであり、税の有無などほとんど無関係。税(金納)が一般化するはるか以前から貨幣が世に流通してきたのが何よりの証拠
という事実はもはや常識です。
自称MMTerが、いくら「貨幣は負債だ~」、「貨幣に価値があるのは税のおかげだ~」と叫んだところで、市井の人々から、「貨幣が負債だって?? ヤバい、世の中の貨幣を回収しないと次世代へのツケが増えちゃうじゃん」、「税のおかげで貨幣価値が上がるなら、もっと税率を上げないとマズいよね」、「積極財政派って、負債を増やしたり、税金を上げることに熱心な連中のことか?」とあらぬ誤解を招いたり、厳しい突っ込みを入れられるだけでしょう。
私から見ると、貨幣負債論や租税貨幣論は、貨幣そのものの意義を卑下し、国家による財源創造力の無限性をも否定する、スペンディングファースト(財源探しよりも社会的課題解決が最優先)の精神を謳うMMTの根本思想とは相容れない悪手中の悪手でしかありません。
私自身、MMTとは一定の距離を置くスタンスですが、貨幣負債論・租税貨幣論という病原菌を抱えたままでは、MMTがこれ以上世に普及することはないと断言できます。
既に述べたとおり、この2つの論は、あまりにも矛盾が多すぎ、現実社会の物差しで測っても間尺に合わないことばかりだからです。
積極財政論者からも強い異論が噴出するような愚論にいつまでも固執していると、MMTは、一部のマニアが外界と隔絶した夢想空間で語らうためのカビだらけの経典で終わるでしょう。
アホなMMTerの中には、緊縮派から、「政府がいくらでもお金を刷れるなら、なぜ税金を全廃すると主張しないのか。いくらでもお金を刷れるなら、税金全廃を主張してみろよ」と揶揄されたのに対して、「MMTは租税貨幣論を信じているんだからね!無税国家なんてあり得ないから!」と見苦しく逆ギレする連中もいます。
彼らは、「MMTを語りながら、MMTが完全否定する無税国家やBIを語る偽MMT論者が後を絶たない」と憤慨していますが、「財源論など無用。財政政策で人々の所得と自信を向上させることが先決」と堂々と語ったS・ケルトン教授に顔向けできるんですかね?
『政府に通貨発行権があれば、政府の意思に基づいて通貨発行による支出が可能となる。政府が通貨発行で支出可能なのだから、財源のために税を集めるという理屈は成り立たない(Wikipedia)』というMMTの源流から流れ出る思想は、財源論に固執して国民に過度な税負担を課し、経済社会の発展を邪魔しようとする緊縮派の矛盾を正面から破壊する絶大なパワーを持っており、その行き着く先には、「無限の貨幣供給により国富を強靭化し、社会に山積する諸問題や課題を一刻も早く解決する」という目的があるはずです。
経済活動の目的は一国の財政収支を美化することではなく、国土で暮らす人々に自信と希望を与え、明日は今日より良い日になるという期待を抱かせ、日本に生まれて良かった、来世も日本人に生まれたいと思わせることにあります。
これこそ、経世済民の思想です。
BI論や無税国家論が広がるとネオリベに付け込まれるなどとあらぬ妄想に駆られ、BIや無税国家にアレルギー反応を示す連中は、現状認識が甘すぎますね。
大規模な個人消費喚起策無くして、消費増税とコロナショックによってGDPが昨年同時期より10%も激減してしまった大惨敗状態を、いったいどうやって取り戻すつもりなんでしょうか?
「BIをやると、竹中が飛んできて既存の社会保障制度が全廃される~」
「無税国家を認めると、租税貨幣論が成り立たなくなっちゃうじゃん(´;ω;`)」
などとぐずり、しょーもないプライドに拘っているうちに、個人消費は大停滞し、回復不能なまでに破壊されてしまいます。
どうも、BIや無税国家論を嫌悪する連中を見ていると、現実に超積極財政策が実行され、さんざん批判してきた緊縮派やリフレ派から政策遂行の責任が自分たちに遷る、つまり、言いっ放しで済んだ万年野党の立場から、常に世間からの批判に晒される与党の立場に変わるのを恐れているようにしか思えません。
「通貨発行権があるんだから、税金なんて要らないとはっきり言えよ」
「お前らの言うとおりカネをばら撒いてインフレになっても知らねーぞ」
といった緊縮派からの批判にビビって、「いやいや、MMTerは租税貨幣論を信奉していやすんで、税を廃止しようなんて滅相もありませんぜ、旦那…」と揉み手で媚を売っているだけです。
そんな柔な根性で経世済民を語れるんですかね?
「税金なんて要らねーよ。もしもの高インフレと反社企業への懲罰に備えて法人税と所得税は温存しとくけど、税率ゼロで運用するから」、「お前ら緊縮派こそ、所得不足+需要不足による長期不況時に増税強行って、いったいどんな神経してんの?脳みそ腐ってるんじゃねぇ?」と堂々と言い返せばよいだけです。
BIや無税国家と聞いただけでハイパーインフレを想像する方も多いとは思いますが、飛躍的に発展した供給力や流通力を有する先進国家において、そんなものは起き得ませんし、民間経済へ潤沢に供給された貨幣が消費や投資を通じて新たに生み出す国富(供給力・技術力・流通力・人材)により、一国の供給力は更に強靭化し、インフレ耐性も向上しますから、”莫大な財政支出→ハイパーインフレ”へと一直線に向かうなんてのは、貨幣の威力を知らぬド素人の妄想に過ぎません。
・これまでのようにカネが足りないまま不況を放置し、世界有数の供給力や人材が腐り果てるのをただ傍観するのがよいのか
・思い切った超積極財政策により、カネを潤沢にバラ撒いて国民所得を倍増させ、多少のインフレに悩みながら生産の効率化に勤しむのがよいのか
私なら間違いなく後者を選びます。
インフレ退治よりも不況脱却の方が遥かに難易度が高いことは、現に起きている不況や過去の史実を見れば明らかだからです。
>飛躍的に発展した供給力や流通力を有する先進国家において、そんなものは起き得ません
まさにこれなんですよねえ。
自分もようつべのコメント欄とかでMMTについて説明する時に、MMT論者も見落としている点として説明したことがあります。
今の時代、一人当たりの人間の「消費」する財やサービスよりも、一人当たりの人間の「生産」する財やサービスの方が多いんだから、理論上はいくら金があっても、その金が全て消費に回るわけがない。
つまりほとんど「貯蓄」に回されるからインフレになんてなりようがないはずなんですよねえ。
需要も無い商品を転売目的で買い占める企業も存在しないでしょうし。
租税貨幣論なんて持ち出さなくても市場に流通する貨幣の量は一定以上は増えないと考えるのが自然です。
一定以上は増えないだけで、今は少ない貨幣流通量も、財政支出をすれば人口に倍する貨幣量は増えるでしょうけど。
コメントありがとうございます。
私は機能的財政論に基づく超積極財政金融論を唱える者で、「国民の生活を少しでも良くしたい。明日は今日より良い暮らしができる。誰もが好きなものを躊躇せずに買える世の中であってほしい」という思いがあり、そういう面でMMT論者とは、ほぼ同じベクトルを共有できると期待しています。
MMT論者を見て少々気になるのは、”インフレ”という言葉に敏感過ぎる、ナーバスに反応し過ぎる点です。
ひと口にインフレと言っても、3-4%程度のマイルドなインフレ水準を保たぬと経済自体を成長させることができませんし、四半世紀もの長期デフレに陥った我が国では、積極財政策のアクセルを踏み込む当初の1-2年間は6-8%くらいのやや高めのインフレ率になるのは仕方ないですし、むしろそうあるべきだと思います。
インフレ率が恒常的に二桁に達するのは感心しませんが、「インフレ」と育言葉を使う際に、何%のインフレを許容するのかはっきり明示してモノを語るべきです。
そうでないと、積極財政策に無関心な層から、マイルドインフレも高インフレもハイパーインフレも、すべて同じ意味なのかと誤解されかねません。
MMT論者は、「インフレになったら、財政支出を減らせばよい。税率を上げればよい」と無警戒に言い過ぎです。
インフレの定義って何なのか?
財出抑制や増税という悪手をやる前に生産性向上に取り組まなくてよいのか?
といったツッコミを喰らわぬよう、もっと真剣に考えてもらいたいですね。