負けに不思議の負けなし

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“勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし”

これは、先日お亡くなりになった元プロ野球選手で南海・ヤクルト・阪神・楽天の監督を歴任された昭和の大打者・平成の名監督である野村克也氏の座右の銘として有名な言葉ですよね。

元々は、江戸時代の肥前国第9代平戸藩主 松浦清の言葉だそうで、彼が家督を息子に譲った後に松浦静山の名で執筆した随筆集『甲子夜話』の一節にある

「勝負は時の運と言えるが、偶然に勝つことはあっても、偶然に負けることはない。

失敗の裏には必ず落ち度があるはず。勝ち負けに一喜一憂する必要はないが、結果から何かを学び取らなければならない」

という意味です。

野村監督が好んだ、この含蓄ある言葉を使う財界人や政治家、知識人は数知れぬほどいますが、実践できる人はほとんど見かけません。

『大幅なマイナス成長の日本、生き残りへの選択肢は2つしかない』(Newsweek 加谷珪一/経済評論家)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200306-00010001-newsweek-int&p=1

「2019年10~12月期のGDPが大幅なマイナスとなった。昨年10月に実施された消費増税の影響であることは間違いないが、この期は新型肺炎の感染拡大前なので、次の四半期にはさらに景気が悪化するとの見方も出ている。(略)

 だが経済学的な常識として、消費増税が行われたとしても、徴収された税金は政府支出を通じて国民所得になるので、増税だけでここまで景気が悪くなることはあり得ない。消費増税によって景気が落ち込んだというよりも、消費増税に耐えられないレベルまで日本経済は弱体化していると解釈したほうがよいだろう。(略)

 短期的には社会保障費の大幅カットか、景気を犠牲にした消費増税しか選択肢がない状態であり、私たちは重大な決断を迫られている。最大の懸案事項はこの事実をストレートに国民に伝え、選択を促す覚悟を持ったリーダーが存在しないことである」

ご紹介した加谷氏のコラムを読むと判るとおり、主流派経済学(≒増税緊縮派)的経済思想を支持する連中は、過去の失敗や現実の敗北から一㎜も学ぼうとせず、同じ失敗、もっと手痛い敗北を繰り返そうとします。

彼が言いたいのはこうです。

・2019年10~12月期のGDPが大幅なマイナスとなったのは、昨年10月の消費増税の影響。これに新型コロナウイルスショックが加わり、景気のさらなる悪化が懸念される

・日本経済が増税に耐えられないほど弱体化したのは、社会保障費負担が重すぎるせい

・膨大な社会保障費を賄うには、景気に左右されにくい消費税しかない

・社会保障費の給付を抑制し、消費主導で経済が回るよう産業構造の転換を図るべきだが時間がかかる

・短期的には社会保障費の大幅カットか、景気を犠牲にした消費増税しか選択肢がない

ひとことで言ってアホですね。

経済的大敗北(マイナス成長・不況悪化)という結果を突き付けられた挙句、

①日本は消費主導の国

②消費主導で経済を回す産業構造への転換をはかるべき

と分析しておきながら、肝心の消費に冷や水をぶっかけるだけの社会保障費削減と消費大増税を提言するとは、表現しようのないほどレベルの低いバカとしか言えません。

国民に「年金カット+医療費負担増加+社保料増加+消費増税」を喰らわせておいて、どうやれば、日本経済を“消費主導で経済が回るよう産業構造”とやらに転換できるのか、具体的にお聞きしたいものです。

まちがいなく、冷えたビールに氷を混ぜて火を起こそうというくらい不可能だと思いますよ。

コラムを読むと、加谷氏の論が支離滅裂なことが解ります。

彼は、「消費増税が行われたとしても、徴収された税金は政府支出を通じて国民所得になるので、増税だけでここまで景気が悪くなることはあり得ない」と述べていますが、消費税や消費増税は過去にも日本経済の足枷となった犯罪歴があるのは明白です。

実際に、消費税は消費や投資の重しとなり、経済を悪化させてきました。

・税率10%への引き上げ後、2019年10-12月期GDP▲1.6%(四半期ベース、以下同じ)

・8%への引き上げ後、2014年4-6月期GDP▲1.9%

・5%への引き上げ後、1997年4-6月期GDP▲0.9%

・導入後、1989年4-6月期GDP▲1.3%

いずれも経済をマイナス成長(退行)へと引き摺り下ろしてきた歴史があります。

彼は、国民の懐の苦しさを理解できないゆえ、「税を取られても、財政支出で同額を世の中に還流するんだから、イーブンだよね?」と高を括っていますが、モノやサービスにカネを使うたびに税を課せられる国民の感情には負担や痛みしか残りません。

還流するカネが自分の懐に入ってきた実感などありませんし、同額が戻ってくるとしても、「カネを廻すだけなら、そもそも、税を取る必要ないじゃん?」ってことです。

国民の心象に残るのは、“モノを買うたびに負担が増える、モノが高くなる”という負担だけですから、消費にブレーキが掛かり、経済を退行させるだけの結果に終わります。

消費税は、国民や企業にとって不可避でリアルな消費・投資リスクである一方、税を財源とする財出が自分の懐に還流するか否かは、予測不能なベネフィットに過ぎませんから、現実として目に前に現れるリスクを警戒するのは当然でしょう。

こんなこと、一般人としての“常識”ですよね。

加谷氏のコラムで唯一頷けたのは、「日本は既に輸出立国から消費立国へのシフトが進んでおり、法人税や所得税で財源を確保する国ではなくなっている」の部分だけです。

いまだに、“日本は貿易立国”とか“円安国富論”を説く時代遅れな連中は、国際収支や経常収支の赤字化でハイパーインフレが起き貧困化すると大騒ぎしたかと思えば、同じ口で、円高不況で日本経済終了だ~と矛盾満載の醜態を晒しています。

・5年連続経常収支黒字達成のパプアニューギニアの国民はさぞや金持ちなんでしょうね?

・経常収支万年赤字国の米・英・仏・豪・加・NZは、なぜ後進国入りしないんでしょうかね?

・1$=145円を超える超円安だった1997年から平成不況が始まったのは、なぜなんでしょうかね?

そもそも、貿易で一国の生計を立てようなんて発想自体がリスクでしかありません。

輸出=外需=相手国の内需であり、植民地や属国でもなければ相手国の経済をコントロール不能である以上、一部の外需依存国のように輸出に寄りかかる経済などもってのほかです。

経済政策の基本は内需の育成にあり、内需の活性化が国内の人材や技術養成を促し、労働力や科学技術、企画力、生産力、流通網という国富の強靭化につながります。

加谷氏の主張する「社会保障費の大幅カット」と「景気を犠牲にした消費増税」という“生き残りへの選択肢”とやらは、とんでもない暴論であり、生き残りどころか、“国家・国民を経済的な死へ導くための自殺マニュアル”であるとしか言えません。

日本経済が、生産力や供給力の飛躍的発展により消費主導の経済構造へと変貌を遂げたいま、経済の根幹は消費や投資にあり、それに足枷を嵌める愚論を吐く加谷氏には、「偉そうに経済を騙ってるけど、経済の意味を知っているのか?」と問い詰めたいですね。

増税緊縮思想を支持者たちの醜態を眺めていると、冒頭にご紹介した言葉、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を痛感させられます。

所得低下・需要不足がもたらす長期不況下にある日本で、社会保障削減と消費増税という、さらなる所得抑制策や需要引き締め策を講じるべしと叫ぶバカが放置される様を見ると、やはり“負けに不思議の負けなし”という言葉は真実ですね。

日本経済は、失敗から何も学ぼうとせず敗北をリピートしたがる緊縮バカのせいで、衰退のループを廻り続けようとしています。

そこから抜け出す方法はただ一つ。

バカの口を封じることしかありません。

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