カリフォルニア州ストックトン市でベーシックインカム実験の結果発表

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大変お世話になっております。
反逆する武士

uematu tubasaです。
初回投稿日時:2020年1月16日(令和二年1月16日)

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カリフォルニア州ストックトン市は、ユニバーサルベーシックインカム実験を敢行しました

2019年2月、ストックトン市は平均程度(年収約4万6000ドル=約500万円)かそれ以下の収入で暮らす125人の住民を対象に月額500ドル(約5万5000円)の給付を開始した。
これはベーシックインカムの導入実験で、基本的に無条件で給付される。

ストックトン市は10月に初めて、プログラムの進捗についてまとまったデータを公表した
この中間集計で、多くの被験者が給付金を日用品や生活費の支払いに使用したことが明らかになった。

引用元:29歳の市長が推進するベーシックインカム実証実験…「国レベルの格差対策にもなる」

昨年2月からカルフォルニア州ストックトン市において、ユニバーサル・ベーシックインカムの実験が行われました。

その結果、多くの被験者が給付金を日用品や生活費の支払いに使用したことが明らかとなりました。

上記の引用元の記事によると、給付金の大部分(約40%)で食料品と水を購入し、24%をスーパーマーケットや1ドルストア(アメリカの100円ショップ???)での買い物に使用し、残りは公共料金の支払いとガソリンや車の修理に使用したとのことです。

給付金の支給方法は、デビットカードでの支給となり、そこから支出を特定できます。
また、給付金の40%は現金として引き出されており、被験者へのアンケート調査で、給付金をどのように支出したか聞き出しました。

※参考記事:カリフォルニア市は、ユニバーサルベーシックインカムをテストしました。受信者が500ドルを無料で使った方法は次のとおりです。

ユニバーサル・ベーシックインカムの影響で幸福度が増す

他の被験者についても同様のことが言え、この余分な5万4000円によって人々が得た最も価値のあるものは「時間」であることがわかりました。
親となる時間、休む時間、コミュニティの一員になる時間などさまざまですが、ある人は副業として行っていたLyftのドライバー業をやめ、ある人は家族と過ごすために賃貸アパートの頭金を払うことができました。
余分なお金があることで、引っ越しして通勤時間を削減したり、残業時間を減らしたりして、「時間」を買うことができます。シーラという女性は支給を受けたことでストレスが減り、「夜によく眠れるようになった」と語っています。

引用元: 毎月5万4000円を市民に配り続けた結果何が起こったのか?という記録

ユニバーサル・ベーシックインカムによって、人々が得たものは「怠惰」ではなく「時間」でした。

家族との時間を増やし、休む時間を増やし、地域共同体としての活動を増やし、引っ越しして通勤時間を削減し、残業時間を減らすことが可能となりました。

人生にとってより良い時間を増やし、人生にとって苦痛な時間を減らすことができたことにより、人生の幸福度が上昇したことは確実です。
ストレスが無くなれば、人間は良く眠れるようです。

ユニバーサル・ベーシックインカムでキャリアアップ?

「政府が現金を支給すると人々は働かなくなる」という意見はこれまでも見られるところでしたが、SEEDプロジェクトによって示された結果はこれとは真逆のものでした。
例えば、被験者の一人であるトーマスという人物は金銭的な余裕ができたことで次のキャリアについて考える余裕ができ、子どもと過ごす時間を増やしながら、より支払いのいい仕事について調査し、準備し、申し込むことができたとのこと。
現金支給を受けたことで「時間」が生まれ、初めて次のステップに進む余裕が生まれたわけです。

引用元: 毎月5万4000円を市民に配り続けた結果何が起こったのか?という記録

アメリカ人の中にも、私と同じように考えた方がいらっしゃたようです(*‘ω‘ *)
ユニバーサル・ベーシックインカムによって、金銭的余裕が出来たので、転職準備や業界動向調査に充てる時間が増え、キャリアアップへ進む余裕が生まれました。

ユニバーサル・ベーシックインカムによって、働かない人が増えるというのは少なくとも上記の実験においては発生していないようです。

ただ、上記のユニバーサル・ベーシックインカムの実験結果に関しては、所得制限を設け、期限付きの給付金支給にしたことが大きいのではないかと推察します。

永久に支給されるわけではないから、いただいた給付金を有効活用するインセンティブが働いたのではないかと推察します。
そして、給付金支給額があまりにも大きい金額ではなかったのが幸いしたのではないかと。

現代貨幣理論では、貨幣とは負債です。だからこそ配れる!

さて、現代貨幣理論の電子書籍『現代貨幣理論の基礎』を出版した人間として、貨幣とは何かと申し上げれば、貨幣とは負債です。

今日、貨幣とは負債の一形式であり、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債である

参考記事:イングランド銀行の季刊誌『現代経済における貨幣創造』より

イングランド銀行においては、このように貨幣とは何かを説明しており、貨幣負債論(信用貨幣論)を展開しています。
貨幣とは、利払いや返済義務が生じない特殊な形式の債務であるというのがその主張です。

私はイングランド銀行と同様に、貨幣とは負債であると考えています。
ということは貨幣を配る際に、物質的な縛りはないということになります。

簡潔に言えば、貨幣が商品や金属の代替物と考えるならば(商品貨幣論)商品や金属は有限であり、いつかは底をつくことになりますが、貨幣を負債と考えるならば、少なくとも物質的な制約があるわけではありません。

例えば、金で考えてみると、地球上に存在する金は確実に有限ですが、負債ならば、お金の貸借関係でいくらでも増やすことが理論上可能です。

私は貨幣負債論を理解しているが故に、ユニバーサル・ベーシックインカムを主張しているのです。
物質的な縛りが無いならば、インフレ率に気を付ければ問題はないと思います。

生活保護の条件緩和で対応できるのか?

筆者は就職氷河期世代や低所得層向けの社会保障に、生活保護の条件緩和で対応するべきではないだろうか? と考えています。
しかしベーシックインカムの議論自体は、否定するつもりはありません。

引用元:就職氷河期世代のNO生活保護!YESベーシックインカム!の不思議

ヤン様(高橋様)は、以前の記事でこのように主張していらっしゃいます。
生活保護制度において、どの条件をどのように緩和すればいいのか明確には提示されていないようにお見受けします。

どの条件をどのように緩和することで、どれほどの効果があり、ユニバーサル・ベーシックインカムの代替案として有望であると主張していただきたかったというのが本音です。

再掲:生活保護の欠点とは

さらに、生活保護について考慮するならば、捕捉率の問題がございます。
捕捉率とは、言い換えるならば利用率のことです。

生活保護を受給できる経済環境(低所得)で、生活保護を利用している世帯割合が少々古いデータですが公表されています。

結論から言えば、平成19年国民生活基礎調査の結果から算出すると、 所得のみで算出した場合は15.3%となり、資産も考慮して判定した場合32.1%となります。

研究者が独自算出した場合においても、生活保護の捕捉率は10%から20%程度なのだそうです。
※参考記事:貧困と生活保護(49) 生活保護の大問題は、低すぎる捕捉率

率直に申し上げれば、あまりにも低いのではないでしょうか。
生活保護を受給することができる低所得者世帯の8割程度が生活保護を受給していないのです。

一つは資産要件の運用の厳しさです。
現金・預貯金が保護基準の1か月分より多いと申請しても通りません。
クルマの保有は求職・通勤・通院などの事情がないと認められず、車がないと日常生活が不便な地域では大きなネックになります。
福祉事務所の対応も問題です。
利用できないと思わせる説明を職員がすることや、冷たい態度を取ることがあります。
生活保護の利用には、原則として本人の申請が必要です。
けれども政府・自治体の広報は不十分で、制度の正しい知識・理解が伝わっていません。
それどころか、恥の意識が社会に広く存在しています。
申請後、親族に対して、申請者を援助する意思があるかどうかを問い合わせるのも、利用しにくくする壁になっています。

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170630-OYTET50005/2/

少々長くなりましたが、生活保護の捕捉率がなぜ低いのかを説明している箇所を一部引用させていただきました。

生活保護を受給しない(または要件が厳しくて受給できない)という方を救うためにも、セーフティネットの穴を塞ぐためにもベーシックインカムは必要であるという考えも成り立つのではないでしょうか。

少なくとも、生活保護を受給することによるスティグマ(恥辱感)を可能な限り減らし、捕捉率を大幅に上昇させ、格差是正に貢献し、労働力減少(ある意味ユニバーサル・ベーシックインカムよりも減少幅は大きいでしょう)への対策を加味した条件緩和をご提示いただきたいです。

総括:社会保障の穴を埋めるためにユニバーサル・ベーシックインカムが必要である

いろいろ議論はあるかと思います。
現実的には、所得制限を設け(高額所得者への支給は止める)地域振興券という形式での給付(地方にお金を落とすため)という条件で、低額からの支給が妥当かと思います。

消費税廃止や国土強靭化のための財政出動に大賛成ですが、どう考えても弱者切り捨てという批判は出てくるため、社会保障の充実は欠かせず、網羅的かつ恥辱感を与えない形式となれば、ユニバーサル・ベーシックインカムが一番効率的かと思います。

以上です。
コメントの削除などは(よっぽど誹謗中傷だったら話は別ですが・・・)致しません。
コメントを頂ければ幸いに存じます。

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黄昏のタロ
4 年 前

お邪魔いたしますです。

>生活保護を受給しない(または要件が厳しくて受給できない)という方を救うためにも、セーフティネットの穴を塞ぐためにもベーシックインカムは必要であるという考えも成り立つのではないでしょうか。

 もしも、日本がMMTを採用して、税収が財源って縛りから解放されたら。
 生活保護の受給資格も緩くなると思うです。やがて、補足率が低いことが恥であると変わるのではないかと思うのです。

 MMTを国が採用しない今は、ユニバーサルベーシックインカムとは言えますが、財源のジレンマがあります。

ーーーーーーーーーー
生活保護に対する私見。
 『ケーキを切れない非行少年たち』で語られる軽度知的障害。ボーダーも含めた発達障害の割合。発達障害バブル。2-6-2の法則。全てが排他的に存在するとは考えにくいです。
 経済の基盤もですが、詰め込みだゆとりだとかで取り残された人々が、なるべくして生活保護を受けるってパターンは少なくないのかもです。

 毒親のパターンなら生活保護は恥であるって認識は有りました。将来を見据えた考えなんてしませんから、切迫してる感覚は薄く『何とかなる』としか思っていません。高校時代は、おいらがアルバイトして支えました。金が無いから大学には行かせられないと洗脳して労働力を搾取した事になります。

 子育てが終わりさえすればってのもあるかもです。一時的なのだと。

 健常者と同じ考えを持っていて生活保護を求めるだろうってのは幻想なのかもです。

黄昏のタロ
Reply to  反逆する武士
4 年 前

論じていただく事へ感謝申し上げます。

>税は財源ではないということから、生活保護の受給資格が緩くなるというのはあり得ると思います。

 財源の縛りから解放されれば、申請と同時に上げちゃっても良いくらいになるかと思うです。不正受給には後々対応ってやり方も考えられるです。

>ただ、どの条件をどれくらい緩くするのかという代替案が無ければ、議論が進まないと思います。

 まずは、家族や親戚の支援です。他の家計を圧迫するわけですから不問で良いのではと思うです。
 財産に関しても、緩和は可能かと思うです。

>恥辱感に関しても、どういった方法で解消していくべきなのか、どうやって捕捉率を高めていくべきなのか、
ご意見伺えればと存じます。

 恥辱感の大部分は、ルサンチマンに対する警戒なのではないかと考えています。
 税は財源。納税した人の血税。その考えから、不公平感をもたれる”のではないのだろうか?”って不安感。
 税は格差を是正して経済を安定させるものと変わるでしょうから、他者の納めた税金をもらうこととはならないです。必要であれば申請するべきと変わるのではないでしょうか。

 マイナンバーカードの普及で、収入がガラス張りに変われば、捕捉率は高くなると考えます(これはBIの敷居値にもなると考えています)

 子育てが終わるまでの一時的なものである(こどもの貧困の原因の一端)、発達障害(軽度)・境界知能などでの『無自覚』。そういった人には、捕捉して手を差し伸べるべきかと思うです。生活保護を誤解してしまっている可能性があるのです。
(発達障害の人で、不正受給で返還をさせられている知人の事を理解できず、『生活保護は借りるだけで返さなければいけない』と思い込んでました。理解させるのは無理でした)

黄昏のタロ
Reply to  黄昏のタロ
4 年 前

続きです。

>さらに付言すれば、生活保護とは働いたら、その分の賃金が手元に入りにくい制度であり、
働くことの負のインセンティブが働いてしまうのです。

賃金+生活保護費(減額後)>生活保護費
となってるはずです。

 この辺は財源に困らないなら、緩和することは可能かと思うです。
 現行でも就労で生活保護から自立できる前提なら、減額分を少なくして手厚くする事くらいは出来るのではないかと考えます。

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>生活保護の要件緩和には賛成しますが、せめてデフレ脱却給付金には賛成してほしいというのが切実な願いです。

 大きく反対している訳では無いことになります。
 貧困対策としてBIと生活保護を比べ排他的に考える事へのアンチテーゼです。

 おいらは現状を目の当たりにして、BIでは貧困を防ぎ切れないと考えます。(毒親・毒親の妹で生活保護受給者などの実態)

 BIでも貧困から抜け出せないなら、境界知能などの原因を持っているでしょう。生活保護は必須です。それを越えた支援が必要かも知れません。BIより重要で真っ先に考えなければならないのではないでしょうか。

 政府は生活能力が足りないかも知れない境界知能を健常者として弱肉強食の世界へ放ちました(詐欺師へ餌を与えているのではないかとも考えてしまいます)
 こども達の発達障害バブル。精神科はこども達の予約でかなり待たされるとのことです。分手付かずの世代は未知数です。
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(。ー_ー。)ノ 書き連ねて着地点を見失ったかもです。
理想では『生活保護よりBI』は理解できなくはないですけど、理想と現実は違ってます。貧困の原因も同じくです。

当ブログは2019年5月に移転しました。旧進撃の庶民
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