MMTほどインフレについて真剣に考えている経済学はない

この記事は約5分で読めます。
スポンサーリンク
スポンサーリンク

MMTに対する典型的な批判に、政府支出を拡大すると「インフレ率が制御不能となる」「ハイパーインフレを誘発する」という批判があります。
こういった批判に対し、ケルトン教授などのMMTの学者は、MMTほどインフレについて真剣に考えている経済学はないと断言しています。言い換えれば、MMTの批判者はインフレ対策に対して不十分な分析しか行っていないということになります。
MMTは政府支出とインフレに対してどのような考え方を持っているのでしょうか?

何が政府支出の制約になっているのか?

主流派経済学の見方では、政府支出には財政制約と実物制約があり、この制約を破るとインフレが起こると考えられています。また、少なくとも長期的には財政均衡しなければならないと考えています。LSTMもこの類の考え方です。

図1.MMTの政府支出の制約の評価(ビル・ミッチェル教授の講演資料より

主流派経済学がこのような結論に行き着くのは、MMTと異なり主権通貨という概念がないからです。
主流派経済学の見方に対して、MMTの見方では主権通貨を発行する国には財政制約はありません。

図2.MMTの政府支出の制約の評価(ビル・ミッチェル教授の講演資料より

日本のような主権通貨を発行している国家においては、完全雇用かそうでないかで、政府支出の制約が異なります。現在の日本のように完全雇用でない場合は、政府支出に制約はありません。政府は完全雇用に達するまで政府支出を行うことができます。完全雇用の場合は実物資源が制約となります。実物資源の制約(つまり経済の生産能力)を超えた政府支出を行った場合には、悪性のインフレが生じます。

MMT流インフレとの戦い方

では、MMTはインフレとどう向き合うべきなのでしょうか?この問いに対してケルトン教授がインタビューで回答しているので、その和訳記事から一部抜粋します。

ステファニー・ケルトン教授、財政赤字神話について、財政とインフレについてhttp://erickqchan.blog.shinobi.jp/theanswer/47
インフレに対する最善の防御は上手に攻めることなのですよ。MMTがやるのは、インフレのリスクに対しては物凄く神経質に考えるようにすることです。 マクロ経済の学派の中で、私たちほどインフレリスクの問題に注意を向けているところがあるとは思えません。私たちや議会が新しい支出法案を検討するときって、その新しい支出が赤字を増やしたり借金を増やしたりするかどうかが考慮されているわけですが、それはやめて、こう考えるべきです。その新たな支出にはインフレを加速させるリスクがどれくらいあるだろうと。そして、やり方を変えるのです。

これまでは議会予算局に行って「この法律をチェックして結果を教えてください。この支出によって債務と赤字が今後どうなりますか?」と聞いたものでした。これからはそうではなく、議会予算局なり他の政府機関なりに行って、こう聞きましょう。「インフラへのこの1兆ドルの投資を通過させることを検討しています。これが明細ですがチェックしていただけますか?この支出は今後5年間に分けて支払う予定ですが、これが実体経済に問題を起こすかどうかを教えてください。つまりインフレのリスクを計算してその結果を教えてください。」

それから、完全雇用に近づくほどに、追加の財政支出には常にインフレのリスクが伴うことになっていきます。政府支出だけではありません。米国で生産される商品やサービスの需要が海外で急増し、そのとき完全雇用であれば、外需にインフレリスクが伴うことになります。あるいは、消費者がとても楽観的になった場合、仮に住宅バブルが発生していて、人々が住居を元手に新たな支出をするとすれば、これもインフレリスクです。つまり、私たちの過剰支出には常にインフレリスクがあります。 MMTがやろうとしているのは、全体の支出水準を、完全雇用と物価の安定と両立する水準に維持しようとすることです。

もしインフレが問題になったら何をすると聞かれますが、その質問はちょっと違います。最初にこう問うべきなはずです。「このインフレをもたらすものは何だろう?このインフレ圧の原因は何だろう?」。なにしろ、政府の総支出が多すぎることで経済が過熱する結果、将来のある時点でインフレが重大な問題になる可能性が高いと考える、そのことが信じられません。

それはこういうことです。米国経済がデマンドプルインフレと呼べるものを経験したことは、この一世紀ほどもうないのです。米国で重要とされてきたインフレの実例は、ほぼぜんぶコスト面の要因から来たものです。これはコストプッシュインフレと呼ばれるものです
ですから、インフレとの戦い方を考える場合に最初に問われるべきことは、そのインフレ圧力の源がいったい何であるかを理解することであり、次に、そのインフレを撃つのにふさわしい政策ツールで対応していくことだと考えています。 エネルギー価格の上昇によってインフレが発生した場合は、FRBに金利を引き上げさせたり、議会に税金を引き上げさせたりしてもおそらくあまり効果はありません。もっと有効な何かをしなければなりません。

MMTはインフレと闘うために税を使うという考えを拒否します。それは私たちが書いてきた内容のほとんどすべてと相容れない誤解なのですが、なぜか皆さんはいつもそうだと言うのですね。 

 

まとめると、MMTの考え方では、政府支出をする場合に、その個々の支出によってどれだけのインフレ圧が生じるかどうか事前に計算することがインフレ対策になります。予想されるインフレ圧が大きければ、その支出内容をインフレ圧が小さくなるように変更すれば良いのです。外部ショックによるインフレの場合も、そのインフレ圧が何かを特定することからインフレ対策を始めます。例えば原油価格の高騰の場合、天然ガスの規制緩和を行うことによりインフレは緩和するでしょう。
またMMTにおいて、税はインフレ対策だと言われることがありますが、このケルトンのインタビューではそれは誤解とされています。インフレ圧力の特定とその特定したインフレ圧力に対する個別対処がMMTのインフレ対策なのです。

コメントを残す

  Subscribe  
更新通知を受け取る »
当ブログは2019年5月に移転しました。旧進撃の庶民