『”消費税10%”でハリボテ景気は完全崩壊する~もはや日本銀行は手も足も出ない』(小宮一慶 経営コンサルタント)
「(略)景気を現場で敏感にとらえている人の景況感を表すのが、内閣府の「景気ウォッチャー調査」です。別名「街角景気」とも呼ばれています。小売店の店頭で販売をしている人、ホテルのフロントマン、タクシードライバー、中小企業の経営者たちなどを対象に、毎月、各地域で調査を行っているものです。
この指標は「50」が良いか悪いかの境目ですが、昨年初あたりから「50」をずっと切っており、最近は特にその落ち込みが大きくなっています。(略)
前回2014年、5%から8%へ消費税を増税した時にはその影響で人々はぱたりとモノを消費しなくなりました。GDPの半分強を支えるのが、「家計の支出」。これがガクンと大きく落ち込んだのです。それも4年連続です。(略)
現状の財政状況や高齢化での社会保障の伸びを考えると増税は避けられないでしょう。しかし、景気減速懸念が強い中での消費税増税後の日本経済はかなり厳しい。それが私の結論です。」
元々、小宮氏は、緊縮財政や構造改革的政策への親和性が強く、財政政策や異次元金融緩和政策に消極的な意見の持ち主だ。
コラムでも、前回増税時(5%→8%)にはインバウンド消費が救世主になったかのような表現が見受けられるが、そんなものはくその役にも立たない。
観光庁によると、昨年度のインバウンド消費額は史上最高の4.5兆円に達したが、衰えたとはいえ550兆円にもなる我が国のGDPから見れば、たいして大きな額ではない。
しかも、前回増税時のインバウンド消費額は2兆円ほどでしかなかったから、それが増税によるGDPの落ち込み(302兆円→294兆円へ8兆円も減ったらしい!)をカバーしたなんてのは大げさすぎる。
インバウンドの消費効果を否定するわけじゃないが、昨今の“日本人がカネを使わずとも、外国人に金を使って貰いさえすればよい”、“日本人にカネを渡すのは気に喰わないから、代わりにカネ遣いのよい外国人に使って貰え”といった奴隷根性や同胞への妬み丸出しの浅ましい発想には反吐を吐きたい。
日本人にだけ消費のペナルティ(消費税)を課し、足りない分は外需で補おうなんて、あまりにも主体性が無さすぎるし、初歩的な経済観念が欠落している。
消費の低迷は供給サイドの飢餓に直結し、経済の活力を奪う禁じ手ゆえ、経済政策の手綱を握る者は常に消費力(需要力)の養成に気を配らねばならない。
元来、我が国は世界屈指のインフレ対応力を備え、その実力や実績も申し分ないのだから、少々のインフレなど恐れず、国民の消費力をガンガン引き上げる努力をすべきだ。
公共事業でも直接給付金でも、国民の懐を豊かにする政策なら積極的にやればよい。
外国人の財布に頼ることなく、国内の供給力をフル稼働させるだけの消費力を、まずは政府主導で創る必要がある。
「国は需要創造に本気だ」という姿勢さえ示せば、あとは勝手に民間主導の持続的な経済発展に移行していくものだ。
さて、今回のコラムでは、彼にしては珍しく、増税に否定的な論を張り、好調を伝えられる日本経済をハリボテと揶揄し、消費増税が個人消費の足かせとなり日本経済の失速は免れないと指摘している。
筆者も、この辺りの認識に異論はない。
現況の日本経済は、需要(消費や投資)の卵となる所得の絶対水準と、非高齢者世帯の貯蓄の蓄積が明らかに不足しており、目先の支出もさることながら、将来を見据えた支出増などまったく期待できる状態ではない。
日本経済は明らかに疲弊しきっており、このまま積極財政に舵を切ることがなく、消費税率の引き下げや消費税の廃止も行われないと仮定すれば、10%への増税がなくとも不況の深刻化は免れまい。
ましてや、消費税率10%への引き上げなんてご法度中のご法度。溶鉱炉に自ら身を投げる自殺行為と言え、こうした愚策を支持したり容認したりする大バカ者は万死に値する。
一方の増税否定論や反対論も決して少なくはないが、かなりの温度差や濃淡があり、“将来的に増税は避けられないが、いまは消費増税をやるべきタイミングではない”といったほぼ増税容認論に近いものから、“消費税自体が存在してはならない税であり、即座に廃止せよ”という正真正銘の否定論までさまざまある。
経済の基本は、生産と消費が間断なく漸増し続けることにあり、その発展の過程で生産やサービスの能力や質の向上が促され、国民生活をより豊かなものへと変えていく。
消費税という悪税は、消費という行為に負荷をかけペナルティを課し、生産行為がより多くの価値を獲得するのを阻害する。
端的に言うと、生産サイドがより多くの売上や収益を上げるのを邪魔し、被雇用者に分配される所得を食い散らかすだけの病原菌でしかない。
こんな質の悪い伝染病を経済活動に導入すべきタイミングがあるとは到底思えない。
現状では、税率10%への引き上げが眼前に迫っているが、それどころか、消費税そのものを即座に撤廃し、平成元年の導入以降、国民や企業から無駄に絞り取ってきた累計300兆円以上もの消費税収の還元を行うべきだ。
国民一人当たり月3~4万円の生活向上給付金の創設や、社会保障負担の半減(国庫負担率の引き上げ)など方法はいくらでもある。
国債増発や日銀による国債直受け、貨幣増発など財源捻出にも問題はない。
要はやる気の問題だ。
妙に先回りして、起きもしないハイパーインフレに怯えるのではなく、“消費なくして売上も利益もなし、需要なき経済はシロアリに喰われたハリボテ未満”という危機感をまず認識せねばなるまい。
消費税が許されるタイミングなんて無い | うずらのブログ(2019.9.16)