あとがき(原作担当 遠藤万次郎)
今回のエピソードは第7巻の巻末に収録予定ということもあり、普段の経済に関するお話ではなく、久しぶりに歴史認識が絡む内容となりました。構成や舞台設定、「遺書」の選定などは私ですが、今回は脚本(セリフ)を作画の香川ヒロが担当しています。この『アイドル新党なでしこ!』の企画をスタートさせる前から描きたかったエピソードの一つだったので、当初から数年を要しましたが、原作者としてはささやかな達成感を覚えているところです。
「成人式の日に、集まった新成人へ英霊の遺書を読み聞かせる」というのは、杉並区長時代の山田宏氏の活動をモチーフにしています。実際の様子をネットの動画などからは確認できなかったのですが、恐らくこんな感じなのではという想像を働かせて構成しました。私は日頃、映画やドラマを視聴して涙を流すだなんてことはまずないのですが、こうした特攻隊員らの遺書動画、それからアニメ「宇宙よりも遠い場所 第12話」の、お母さんの遺品のPCに未読のメールが受信されて行く演出だけはヤバいです。涙がボロボロこぼれてしまいます。
表題については、「英霊の御心(みこころ)」、三島由紀夫の短編小説より「英霊の聲」、靖国神社の社頭掲示集「英霊の言乃葉」より「英霊の言の葉」という候補もありましたが、分かりやすさを重視して「英霊の遺書」としました。いわゆる「荒れた成人式」のニュースで、地方のヤンキー連中の映像を見るたびに、出撃前にこうした遺書を書いた英霊らとは魂のレベルというか、人間としての格の違いを毎回痛感させられる次第です。
神風特攻隊の立案者として有名な人物に、大西瀧治郎という海軍中将がいます。約4,000人の若者を戦場に送り、特攻隊の父と呼ばれた帝国軍人ですが、敗戦翌日の未明に、自分が戦場へ送った若者の苦しみを味わうため、長刀で介錯なしに切腹し、16時間も苦しんだ末に絶命したことで知られています。以下、大西中将の遺書を掲載させていただきます。
遺書
特攻隊の英霊に曰す。善く戦ひたり、深謝す。最后の勝利を信じつゝ肉弾として散華せり。然れどもその信念は遂に達成し得ざるに至れり。吾、死を以て旧部下の英霊と其の遺族に謝せんとす。
次に一般青壮年に告ぐ。
我が死にして、軽挙は利敵行為なるを思ひ、聖旨に副ひ奉り、自重忍苦する誡とならば幸なり。隠忍するとも日本人たるの矜持を失ふ勿れ。
諸子は、国の宝なり。平時に処し猶ほ克く特攻精神を堅持し、日本民族の福祉と世界人類の和平の為、最善を盡せよ。
さて、今後の予定ですが、4週間後となる10月13日(日)に第7巻リリースの告知エントリー、その2週間後となる10月27日(日)に第52話の配信という日程で考えています。予定どおりに進まなかった場合は済みません。それではまた、次回のあとがきでお会いしましょう。
英霊の「魂のレベル」、おっしゃるとおりです。
過去に一度、靖国神社に立ち寄ったときに、特攻隊の遺書を見ました。……旅行がデートでしたので、恋人には文句を言われましたが(汗)
心に来ました。泣きそうになった、と表現できます。
我々現代日本人の「魂」は、戦後レジームとやらで濁っているように感じます。「死」と「気概」が、現代日本人と「全く異なる」と、衝撃を受けたものです。
久しぶりに、英霊の遺書の文面を読みました。活力が、湧いてきます。「やれることを、やらなあかん」と。
私は未婚で子供もおりませんが、兄弟が多いため、甥っ子や姪っ子が沢山います。仮にそのコミュニティの中で、誰か一人が犠牲になれば他の全員が助かるとなった際、「いや、まあ、ここで犠牲になるのは当然ぼくだよなぁ……」と、強がりの一つでも言いながら自分は犠牲になれるだろうかとか、かつての英霊の行動に対しては、自分と置き換えて考えてしまいますね。
「俺ら新成人、気合入ってるべ!」とかやっている新成人に対しては思うところがあり、英霊との対比として、作中の冒頭にチョロっと、ヤンキー風の男子に登場してもらいました。それは当時はもちろん、同調圧力などあったとは思いますが、本音を押し殺して銃後の同胞や同郷のために犠牲になるという行動について、本当の気合とか気概というのは何かを考えさせられます。